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第三十四話 反乱の代償

 王族たちの夕食会は豪勢だったが、雰囲気はその真逆だった。


 テーブルに座っているのは、オイト国王とその息子のデニムとラウスだけだ。王妃はもう随分昔に亡くなっている。

 つまり、三人の血の繋がった肉親が一緒に夕食を食べて共にしているのだが、そこに愛情は感じられない。

 特に兄弟のデニムとラウスは全く話さない。視線さえも合わせないでいた。


 シャスターとエルマはデニムの後ろに立っていた。同様に国王の背後にはウルが国王を守るように立っている。時々シャスターと目が合うが、ウルはすぐに目を逸らして青白い顔をしたまま生気がない。それを見て、エルマは全財産を奪われたウルが可哀想に思えてくる。


 デニムの正面に座っているのはラウスだが、その背後には誰もいなかった。警護は必要ないということなのだろう。

 あとは数人の給仕たちが食事を運んでいるだけだ。



 誰にとってもつまらない時も過ぎ、やっと解放される時がきた。夕食会が終わったのだ。

 本格的な三者会合は明日から始まるため、今夜はこれで終わりだ。何もない。


 エルマはこの後シャスターに全てのことを話そうとしていた。ラウスに従っていること、マルバスの起こす反乱のこと、そしてシャスターにも同志に加わってほしいこと。


 しかし、それは実現できずに終わる。



 夕食会の終わり際にデニムが立ち上がったからだ。


「実は父上に一つご報告があります」


「なんだ?」


 国王は問うたが、デニムは直接答えることはせずに国王の元まで来ると、一枚の手紙を渡す。訝しげに国王はデニムを見たが、とりあえず手紙を読み始める。すると、みるみるうちに国王の表情が変わった。


「デニムよ、これはどういうことだ?」


「書かれているとおりです、父上。ここにいるシャスターが、現在燃えているフェルドの町長の机の中から見つけた物です」


 誇らしげにデニムは胸を張って意気揚々としている。反対に、ただ一人表情が青ざめている人物がいた。


 ラウスだ。



「ラウスよ、これはどういうことだ?」


 国王の怒号はラウスに向けられた。しかし、ラウスは何も答えない。


「弟よ、俺が代わりに答えよう。お前は俺の領内の町、フェルドの町長と内通していたのだ。フェルドで反乱を起こさせ、それに乗じてお前は西領土を奪うつもりだったのだろう?」


 デニムの話を聞いてエルマは呆然とした。当初の反乱計画がデニムにバレていたのだ。


 ラウスたちの当初の反乱計画ではフェルドの反乱を合図として、西領土の各地で反乱を起こす予定だった。そして反乱を平定するために西領土騎士団が領都ノイラから出て行った後に傭兵部隊がノイラを押さえる。

 それと同時にラウス率いる東領土騎士団が西領土に攻め込み、反乱を平定するために各地に分散していた西領土騎士団を各個撃破し壊滅させる。

 それが当初の計画であり、一番重要な役割であるフェルドの町長とラウスは何度も手紙のやりとりをしていたのだ。



 しかし、まさかそんな重要な手紙をフェルドの町長がとっておいたとは。


 それをシャスターが見つけていたとは。


 そして、シャスターが自らの功績のためにデニムにその手紙を渡すとは。


 まさに最悪が重なり過ぎている。



 エルマはシャスターを睨みつけたがもう遅い。ラウスはデニムの制止を無視して逃げ出した。


「あの裏切り者を捕まえろ!」


 勝ち誇ったようにデニムが大声で叫ぶ。


「デニム様、今回のために親衛隊を連れて来たのです。我々に追撃の許可を」


「おぉ、そうであった。シャスターよ、親衛隊と共にあの反逆者を捕まえろ! 無理なら殺しても構わない」


 それを聞いたシャスターは少しだけ微笑むとすぐに部屋から出て行った。



 エルマはこの時、やっと分かった。

 デニムから三者会合が決まったことをシャスターとエルマが伝えられた後、シャスターがデニムに話があると戻った理由が。

 デニムがシャスターの進言どおりに親衛隊を連れていった理由が。

 つまり、あの時デニムが愉快そうに大笑いしていたのは、ラウスを陥れる確たる証拠を手に入れることができたからなのだ。


 エルマの全身から冷たい汗が流れる。これでラウスが殺されてしまったら計画が全て水泡に帰してしまう。いや、それだけではない。もう二度とレーシング王国は地獄から抜け出すことはできなくなってしまう。


 フェルドの町長はエルマがラウスと繋がっていることと傭兵隊が裏切ることまでは知らされていなかった。エルマが裏切っていることはこの場の誰も知らない。身の上は安全だ。

 そこで、エルマもデニムに申し出る。


「デニム様、私もシャスターを手伝うため行きます」


 それだけ言うと、エルマは急いで部屋から出て行った。





 ラウスはすでに王都バウムから逃げ出していた。

 城内の者たちは何も知らないので、ラウスを引き止めることはしなかったからだ。

 厩舎で自分の馬に乗り込むと、そのまま全速力で城下を抜けて王都を脱出した。


 王都を抜けると景色は真っ暗だ。さらに追っ手から逃げるため街道から外れた深い森の中を疾走しなくてはならない。さらに視界が悪く、唯一月の光が少しだけ差し込んでいるので、その明かりを頼りに馬を走らせていた。



 それから数時間後、やっとのことで大河の前に到着した時、ラウスは疲れ切って肩で息をしていた。


(ここを越えれば)


 レーイン川は王領と東領土の境界となっている。川を南に下れば河幅が百メートルにもなるのだが、この辺りでは河幅は三十メートル程度で、水深もそこまで深くはない。ただ、それでも激流には変わりないし、夜で視界も悪い。


 ただし、ラウスにはこの大河を馬で渡るしか東領土に戻る方法はなかった。王領と東領土を繋ぐ橋は一つしかなく、そこには当然ながら既に討伐隊が配備されているからだ。


 なんとか馬で渡るしかない。対岸の領土境には王領に攻め込むために八千人もの騎士が待機している。そこまで行けば助かるのだ。


(行くか!)


 ラウスは覚悟を決めてレーイン川を渡り始めようとする。



 その時だった。


 馬蹄の足音が近づいてくる音が聞こえた。


(しまった! 尾けられていたか?)


 このままではレーイン川を渡ることはできない。

 ラウスは馬を降りると剣を抜いて覚悟を決めた。

 既に馬蹄の音は止まっている。おそらく周辺は多くの敵に囲まれているはずだ。勝てる可能性は低いだろう。しかし、戦う以外助かる方法はない。


「私の首が欲しい者は出てこい!」


 ラウスは恐怖心を隠し大声を上げる。すると、静寂に包まれた闇の中から一人の少年が現れた。



「お前は、西領土の新しい騎士団長……」


「シャスターだ」


 シャスターはゆっくりラウスに近づいた。


「お前ひとりだけか?」


「そうだ」


 ここに辿り着いたのはシャスターだけだ。しかし、だからといって状況が良くなったわけではない。シャスター個人の強さをラウスは聞かされていたからだ。


「お前が私を追って来るのは至極当然だな」


 ラウスとしてはシャスターに当初の計画、数年かけて準備していた反乱計画を台無しにされてしまった。

 しかも、国王の前でラウスが反乱を計画していたことをバラされては、今回の計画も失敗したのと同じだ。


「お前さえいなければ、私の計画は成功していたものを」


 ラウスは憎しみを込めて剣を放った。

 しかし、たった一閃でシャスターはラウスの剣をはじく。手元から剣を離してしまったラウスにもはや勝ち目はない。


「これまでだな。私を殺して功を誇るがいい」


 ラウスは目を閉じた。と同時に腹に激しい痛みが走る。

 おそらくシャスターに剣で刺されたのだろう。激痛に苦しみながら意識が遠のいていく。ラウスは死を覚悟した。



 しかし、その後いくら待っても意識がなくならない。


 それどころか腹の痛みがおさまってきている。


「これは!?」


 ラウスは目を開いた。当然刺されて真っ赤に染まっていると思った腹は何も変わっていない。


「殺しはしない」


 さらにシャスターはラウスの腹に拳を打つ。


「ぐふっ!」


 再び腹に激痛が走る。

 しかし、これでラウスは分かった。先ほどの攻撃も剣で刺されたわけではなく、拳で打たれた痛さだったのだ。


「なるほど、私をなぶり倒して父と兄の元に連れて行くつもりか」


 そうなれば、ラウスは公開処刑をされるだろう。鈍い痛みを我慢しながら立ち上がり、シャスターを睨んだ。


 公開処刑となれば、ラウスを慕う者達が助けようと処刑場に現れるはずだ。それは国王オイトや領主デニムにとって、ラウス派を一網打尽にする絶好の機会となる。つまり、彼の処刑はラウス派を集めるためのエサなのだ。

 目の前の少年はそこまで残忍なことを考えて行動しているのだ



「本当に悪魔のような少年だな」


 エルマの言葉を思い出しながら、ラウスは血が混じった唾を吐いた。しかし、それに憤慨したのがシャスターだった。


「悪魔って何? せっかく助けてあげようとしているのに」


「何だと!?」


 ラウスは意味が分からなくなった。目の前の少年、シャスターは敵のはずだ。だからこそ、自分は攻撃を受けているのだ。それなのに助けるつもりだとは。


 考え込んでいるラウスにもう一発拳が放たれる。再び倒れ込んだラウスにシャスターは冷たい視線を投げる。


「あんたさ、今回も西領土で反乱を起こさせて、その隙に東領土から王都バウムに軍を進めるつもりだったのでしょ?」


「な、なぜそのことを知っている!?」


 一部の者しか知らない極秘の反乱計画を少年が知っていることにラウスは驚く。


「以前の計画もさ、フェルドの町を筆頭に西領土で反乱を起こさせて、その隙に領都ノイラに攻め入るつもりだったわけだし」


 残念ながら、目の前の少年がフェルドの町を炎上させてしまい、計画は破綻したのだ。

 しかも、その計画のやりとりをしていた手紙のせいで、ラウスは逃走する羽目になったのだ。


「お前のせいで全てが台無しだ!」


 ラウスは睨みつけたが、シャスターがさらに一撃を食らわす。彼の目には怒りが灯っていた。


「何をふざけたこと言っているの!」


「な、何だと!?」


 ラウスは正義のために戦おうとしているのだ。それをふざけたこと呼ばわりされていきり立った。


「お前に何が分かる! 私は父と兄の圧政に苦しむ人々を助けるために立ち上がったのだ。反乱を起こすことをよそ者のお前にとやかく言われる筋合いはない」


「それがふざけたことだと言っているんだよ」


 シャスターは声を荒げない。しかし、かなり激怒していることはラウスにも分かった。


「陽動のためにフェルドや他の町で反乱を起こして、その隙に領都ノイラを攻めれば、あんた達は勝てたかも知れない。しかし、反乱を起こした町の人たちはどうなる?」


「……!?」


「多分、皆殺しされるだろうね。そして、その反乱の住民たちは西領土の人間だ。あんたの統治している東領土の住民たちじゃない」


 そこでラウスはハッと気付いた。この少年は西領土の領民を犠牲にすることに憤慨しているのだ。


「あんたは確かにレーシング王国に善政を敷こうとしているのだろう。しかし、そのために犠牲になるのは西領土の領民たちだ」


「し、しかし、それでも圧政に苦しんでいる西領土の領民にとっては仕方がないことだ」


「仕方がない?」


 ラウスの弁明にシャスターは目を細める。


「人の上に立つ者は、人の痛みや苦しみを分からなければならない」


「素晴らしい教えだな。私も同感だ。だからこそ私はこの国を改革するために戦おうとしているのだ」


「違うよ。あんたのはさ、人の痛みや苦しみを分かったフリをしているだけだよ」


 シャスターはラウスの覚悟を一蹴した。ラウスの顔が真っ赤になる。


「そんなことは断じてない!」


「それじゃ聞くけど、西領土で反乱を起こす領民の中にあんたの大切な人はいる?」


「なっ……」


 ラウスは反論しようとしたが、言葉が出ない。


「いるわけないよね。もしもいたら、その人たちを巻き込む反乱なんて起こそうと思わないよね」


「いや……、そうだ、いるぞ! フェルドの町長やその他の町長たちとは固い絆で結ばれた同士だ」


 元々、彼ら町長たちと周到な計画を立てていたのだ。ラウスにとって彼らは重要な存在だった。

 しかし、それでシャスターへの反論とはならなかった。シャスターは今度は哀れみの目でラウスを見つめる。


「でも、町長たちはあんたにとって大切な人ではないでしょ?」


「そ、それは……」


 重要な存在であるが、それは反乱計画を遂行するためのものであって、彼らが死んだところでラウスの心は痛まない。そんな自分の感情に初めて気付いたラウスは言葉を失った。


「フェルドの町長は今の圧政から町を救おうという強い思いからあんたに賭けた。だから彼は反乱を起こしても死ぬ覚悟はできていたのだろう。しかし、反乱の情報は町長しか知らず、町の幹部たちでさえ知らなかった。だからあの反乱がそのまま実行されていたら、何の責任もない大勢の住民たちが犠牲になっていたはずだ」


 シャスターは諭すように言葉を続けた。


「もし、西領土の領民たちが自主的に立ち上がって反乱を起こしたのであれば、それは彼ら自身の責任だ。大勢の人々が犠牲になっても、それは覚悟した上でのことだから当然だし仕方がないことだ。しかし、誰かの扇動によって起きた反乱は扇動した者の責任だ」


 シャスターがフローレに反乱を成功させないと言った理由がこれであった。ラウスの扇動による町の反乱など起こさせる訳にはいかないからだ。


 暫しの沈黙が続いた。



 ラウスはずっと目を閉じていたが、ふと視線をシャスターに戻すとゆっくりと口を開いた。


「お前の……いや、シャスター殿の言うとおりだな。私は正義のための戦いのつもりだったのだが、心の何処かでは西領土の領民はどうなってもいいと思っていたのだろう」


 ラウスは痛んでいる腹を抑えながら立ち上がった。


「シャスター殿に言われるまで、私はそんな大切なことに気付けなかった。しかも、私の浅はかな反乱計画を止めてくれて……危うく私は目的のためなら手段を選ばない残虐な人間になってしまうところだった。申し訳なかった」


 ラウスは深々と頭を下げた。

 王子という高貴な身分の者が得体の知れない小僧に頭を下げるなど普通ではあり得ないことだが、ラウスにとって間違ったことは素直に謝るというのが当たり前だった。だからこそ、エルマをはじめ多くの者たちが彼を慕っているのだ。


「珍しい王子様だね。ところで浅はかな反乱計画を止めてくれてとは?」


「隠さなくてもいい。おそらくフェルドの町長の部屋で私からの手紙を見つけたキミは、町の反乱を阻止すべく、あのような行動に出たのだろう?」


 あのような行動とは、当然ながらシャスターがフェルドの町を大炎上させたことだ。


「フェルドの町が巨大な炎に包まれて燃えていると聞いた時は、そんな非道で残忍ことができる人間がいるのかと思ったが、今なら分かる。キミはそんなことをするような人間じゃない」


「……」


「多くの手紙の中から国王に一枚しか渡さなかったのも、フェルドの反乱と同時に蜂起する予定だった他の町に国王の害が及ばないようにするためだ。敢えてキミはフェルドの町長と私とのやり取りだけが書かれた手紙を選んだ」


「……何が言いたいの?」


「確認したかっただけだ。どのような方法でフェルドが大炎上しているのかは分からないが、少なくともフェルドの人々は皆無事なのだろう?」


 シャスターは答えなかった。しかし、その表情の見たラウスは静かに笑った。


「そうか、それならば良かった。それでは新たな反乱計画は止めることにする。そして今から私は東領土全軍を率いて正々堂々と戦う。無関係な領民に被害が出ないように」


 ラウスは意を決した。再び大河を渡るために馬にまたがるが、シャスターがそれを止める。


「人の話を聞いていた? 助けてあげると言ったはずだけど」


 シャスターは苦笑しながら馬にまたがる。


「夜にこんなに急流の大河を渡ったら死ぬよ。普通に街道の橋から渡ればいいよ」


「しかし、既に橋には追っ手の騎士たちが待ち構えているのでは?」


 だからこそ、一か八かの賭けでこの河を渡るしかない。


「大丈夫。橋にいるのは俺の親衛隊だから、どうにでもなる」


 その一言でラウスは合点がいった。

 シャスターは最初からラウスを逃すために親衛隊を連れて来たのだ。ラウスを追うのが王領騎士団ではなく、シャスターと親衛隊だけならばこの場はシャスターのいかようにもできる。


「キミは最初からこうなることを考えていたのか……敵わんな」


「そんな賞賛なんかどうでもいいから急ぐよ。時間がもったいない」


「ああ、分かった」




 二人は馬を進めようとした。その時、背後から馬蹄が響いて人馬が現れた。


「シャスター、ラウス様に手を出すな!」


 馬上からエルマは剣を抜きながらシャスターに斬り込む。それをシャスターは間一髪馬首を曲げてエルマからの攻撃をかわした。


「ラウス様、ご無事でしたか!」


 安堵の表情でエルマが二人の間に割り込む。しかし、ラウスが落ち着いた声でエルマを制した。


「エルマ、違うのだ。シャスター殿は私を助けてくれたのだ」


 それを聞いて今度はエルマが驚く。


「何ですと!?」


 エルマはラウスの追撃として向かったシェスターを急いで追いかけて来たのだ。

 それなのにシャスターが助けたとは、どういうことか。


「エルマよ、安心しろ。シャスター殿は今回の計画を全て知っている。その上で私を助けてくれるためにこの場に来てくれたのだ」


「なんと……」


 当然ながらエルマは現在の状況に思考が追いついていない。


「再会の挨拶はいいからさ、さっさと行くよ!」


「ああ、そうだったな。エルマよ、当初の予定とは大きく変更になるが、私は東領土騎士団を率いて王領に攻め込む。お前はマルバス殿と合流して西領土騎士団と傭兵隊を率いて西領土から王領へ進撃をしてくれ!」


「ということは……まさか!?」


「ああ、西領土の各町で反乱を起こすことは中止とする。領民を戦いに巻き込むことは絶対にするな。お前たちは王領と西領土の境付近で待機していてくれ。そして、明日の朝十時に東と西から同時に王領に攻め込むぞ。目指すは王都バウムだ!」


 西領土の反乱討伐を利用した東領土軍の王領侵攻が、東西二方面からの王領同時侵攻に変更になったのだ。大幅な戦略転換だ。


 突然のことに慌てて内容把握をしようと頭をフル回転させていたエルマだったが、さらにシャスターから注文が入る。


「あ、そうそう、せっかく西領土から攻め込むのならエルマ隊長に一つ頼みたいことがあるのだけど……」


 シャスターから頼みごとの詳細を聞いたエルマは、怪訝そうな表情で聞き返そうとするがラウスが遮る。


「エルマ、シャスター殿を信じろ。いいな!」


 それだけ言うと、ラウスはシャスターの後を追って森の中に消えて行った。



 一人残されたエルマはあまりにも急な状況に呆然としていたが、自分の頬を強く叩くとすぐに立ち直り、そのまま二人とは反対方向に消えて行った。



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