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第百十九話 新たな前兆

 リクスト将軍の配下であるリーブ副将の指示によって、東大門イースト・グレートゲートの外域一帯の修復が大勢の兵士によって行われていた。


 すでに日付が変わった深夜だ。



「それにしても派手にやってくれたものだな」


 目の前の焦土化した光景を見て、エーレヴィンが苦笑する。


「まあね」


 隣に立つシャスターは全く悪びれていない。


「それよりもさ、報酬」


「ああ、そうだったな」


 エーレヴィンは魔法の鞄(マジック・バッグ)を開けると、シャスターと星華の分の報酬をシャスターに渡した。



「お前が水氷系魔法を使うところを初めて見たが……聖人級どころか、ヴァルレインの考案した聖人級最上位魔法まで使ってしまうとは、なんとも驚きだ」


 エーレヴィンはわざとらしくため息をついた。


「別に大したことじゃない。ヴァルレインだって、きっと火炎系魔法を聖人級まで使えるし、俺の考案した幻炎界の閃熱光ヴィレルナ・ディネース・エクシズンも使えるはずだ」


 シャスターはここにはいない水氷系最高峰、シーリス魔法学院の後継者の名前を出した。


 二人は以前アイヤール王国で戦った時に、互いにそれぞれが編み出した聖人級最上位魔法、幻炎界の閃熱光ヴィレルナ・ディネース・エクシズン幻氷界の閃冷光アシャルナ・ディネース・ヴェガスを放っていた。

 シャスターはその時に見た幻氷界の閃冷光アシャルナ・ディネース・ヴェガスを今回まねたのだ。

 他系統の、しかもたった一度しか見ていない聖人級魔法を使ったことを「大したことじゃない」と一言で片付けてしまうあたりが常軌を逸している。

 しかし、これが「五芒星の後継者」なのだ。



 エーレヴィンがもう一度ため息をついたところで、二人の将軍が現れた。

 アルレート将軍とリクスト将軍だ。


「二人とも亡魔の騎士(フィーンドナイト)の討伐、ご苦労だった」


「はっ!」


 アルレート将軍とリクスト将軍が、エーレヴィンに対して頭を下げた。彼らは三ヶ所に現れた亡魔の騎士(フィーンドナイト)を倒して来たのだ。ちなみに、三体目を倒した星華はすでにシャスターのもとに戻ってきている。


 亡魔の騎士(フィーンドナイト)は帝国の小隊を易々と全滅させてしまうほどのアンデッドの魔物だ。凄まじい強さを持つ勇者級レベルのアンデッドだったが、その亡魔の騎士(フィーンドナイト)でさえも、十輝将の敵ではなかった。

 しかし、そんな彼らでさえ、驚かされた光景があった。


 シャスターと知死者(モルス)の戦いだ。



「馬を駆けながら遠くから見ていましたが、炎と氷のドラゴンや巨大な魔法陣……あれが『五芒星の後継者』様の戦いですか」


 アルレート将軍の感嘆に、リクスト将軍も頷きながら同意する。


「シャスターは聖人級の魔法を使ったのだ」


「聖人級!」


「つまり、知死者(モルス)も聖人級魔法を使ったと?」


「そうだ」


 エーレヴィンの答えに二人は深く頷いて納得した。あのドラゴンや魔法陣は聖人級の魔法だったからだ。



「おかげでこの惨状だ」


 エーレヴィンの目の前の光景……灼熱の炎と極寒の氷によって大地は無惨に変わり果てていた。


「しかしながら、帝都には一切の被害はなかった。シャスター、改めて感謝する」


 「五芒星の後継者」に七大雄国(セフティマ・グラン)のひとつ、エースライン帝国の皇子が深く頭を下げた。

 アルレート将軍とリクスト将軍もエーレヴィンに倣って頭を下げるが、シャスターは彼らの感謝には興味がない。


「報酬さえ、しっかりと貰ったから構わないよ。それよりもさ……」


「ん?」


「明日の……もう今日か。朝の会議の開始時間、遅くしない?」


「……無理だな」


エーレヴィンが苦笑すると、ブスッとした表情を浮かべてシャスターは東大門イースト・グレートゲートの中に早々と戻っていった。少しでも早く寝るためだろう。その後を星華もついて行く。



 そんな二人の後ろ姿を見ながら、エーレヴィンはアルレート将軍とリクスト将軍に視線を向けた。


「私たちも戻ろうとするか」


「はっ!」


 後のことはリーブ副将に任せれば大丈夫だ。三人にも寝る時間は必要だ。




「ところで、アルレート将軍、リクスト将軍」


 東大門イースト・グレートゲートを越えたところで、エーレヴィンは馬の足を止めた。


「何でしょうか?」


 二人も足を止める。


亡魔の騎士(フィーンドナイト)ではなく、知死者(モルス)と戦いたかったか?」


 意外な質問に二人は顔を見合わす。


「そうですね。せっかく戦うのであれば、強い敵の方が良かったです」


 代表してアルレート将軍が口を開いた。


「勝てるか?」


 今度はストレートにエーレヴィンが尋ねてきた。それに対してもまたアルレート将軍が答えた。


「はい。相手が聖人級魔法使い(ウィザード)であれば、なんとか……。なぁ、リクスト将軍」


「はい」


「そうか」


 エーレヴィンは頷くと二人の将軍に、シャスターと死知者(モルス)の最終局面だけを説明した。



「……というわけで、最後にシャスターは世界級魔法を放って知死者(モルス)を倒したのだ」


「ほぉ!!」


「世界級!!」


 驚愕する二人を見たエーレヴィンは、少しだけ笑みを浮かべた。



(さて、魔物の王(モンスター・ロード)だけでなく、死知者(モルス)まで現れたとなると……いよいよ、動き出す前兆なのかもしれないな)


 ひとり夜空を見上げたエーレヴィンは、しばらくして地上に視線を戻すと再び馬を進めた。




皆さま、いつも「五芒星の後継者」を読んで頂き、ありがとうございます!


第四章の本文はこれで完となります。

(ただ、この後知死者(モルス)の外伝を四話載せますね)

皆さま、第四章を読んで頂き、ありがとうございました!

一旦区切って第四章完としますが、第五章も引き続きエースライン帝国から始まりますので、よろしくお願いします!



さて、今年の春から書き始めた「五芒星の後継者」も今話が今年最後となります。

その間にブックマークも300を超えることができました。

読んで頂いている皆さまのお陰です。

本当にありがとうございます!



「五芒星の後継者」は物語全体でいえば、まだまだこれからです。

シャスターの旅する世界はさらに広がっていきます。

新たな場所や七大雄国(セフティマ・グラン)をはじめたとした色々な国々、まだ登場していない他の「五芒星の後継者」やヴァルレインとの絡みも出てくるかと思います。

そして、魂眠(こんみん)に陥っているフローレ……。

これからも彼らの活躍を楽しみにして貰えたら嬉しいです。



今年もありがとうございました。

来年も「五芒星の後継者」をよろしくお願いします。

皆さま、良いお年を。




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