第百十八話 世界級魔法 &(魔法階級レベル等)
「我があと千年修行したとしても、汝には敵わぬな」
「否定はしないけど」
「フッ……」
知死者は笑った。こんな笑い方をしたのは初めてだったかもしれない。
シャスターはあえて火炎系以外の魔法を使い、知死者にとって屈辱的な方法で勝利を決めたのだ。圧倒的な実力差を見せつけるために。
それは勝者の驕りではない。絶対に敵わぬことを見せつけることによって、知死者が帝都を襲うのを諦めさせようとしているのだ。
知死者はシャスターの優しさに感謝した。
しかし、知死者の「縛り」は、それでも解けることはないのだ。
「すまない、イオの後継者。我は帝都を滅ぼしに向かうしかないのだ」
「……そうか」
シャスターは一瞬だけ寂しそうな視線を向けたが、すぐに元の表情に戻った。
「聖炎の天流」
シャスターの詠唱に合わせるかのように、空から無数の黄金の粒子が落ちてきた。最初、光は雨のように静かに降り始めたが、すぐに滝のような膨大な流れとなり降り注いできた。まるで天から流れ落ちてくる光のカーテンのようだ。
「ほぉ、見事な魔法だな」
知死者は、その美しさに見惚れていた。見たことがない魔法だったからだ。
「この魔法も……聖人級なのか?」
「いいや。聖人級の一つ上の階級の魔法さ」
「!?」
知死者は驚愕のあまり、暫し呆気に取られた。
「ま、まさか、聖人級の上ということは……レベル七十台の……魔法なのか?」
「そう。これはレベル七十台の魔法、世界級魔法」
軽く答えるシャスターとは対照的に知死者はその言葉の意味を噛み締めていた。
レベル七十台の魔法…… 知死者でさえ、この千年もの間、一度も見たことがなかった。
無論、知識としては知っていた。しかし、文献で読んだことがある程度だ。本当に実在するかどうかもさえも分からなかった。
実際、知死者も聖人級魔法の更なる上、レベル七十台を目指していて鍛錬を続けていたが、そこに到達するのには少なくともあと数千年は必要であった。
それを目の前の少年は、事もなく容易に詠唱したのだ。
到底、敵うはずがない。
「まさか、この目で世界級魔法を見る日が来ようとは……」
流れ落ちてくる光のカーテンはゆっくりと知死者を包み込んだ。知死者も、これからの自分の身に起こることが分かっているのだろう。抵抗することなく、全てを受け入れた。
それとともに、美しくも無慈悲な光のカーテンが知死者の身体を侵食していく。知死者の身体はまるで粒子の粒のように崩れ始めた。
「これが世界級魔法……」
知死者の表情が穏やかになった。
「このような最高の魔法で逝くことができるとは……千年も生きてきた甲斐があったな」
光の渦の中で、知死者の身体はほとんどが消えかかっている。しかし、知死者は心から満足をしているようだった。
「感謝する、イオの後継者。最後に汝に会えて、我の長い人生も悪くはなかった」
「それは良かった」
「……そろそろ時間のようだな」
光の竜巻が一層激しく光ったかと思うと、次の瞬間知死者の姿が光の中から消えていた。そして、それに合わせるかのように光の竜巻も消え去った。辺り一面は元の静かな夜の世界に戻った。
アンデッドの上位種である知死者、その一人がこの世から消滅した。
「五芒星の後継者」
魔法使い階級とレベル、そして今まで登場した魔法一覧です。(火炎系魔法と水氷系魔法だけを記載しています)
初級(レベル1〜9)
一般的な階級、ほとんどの魔法使いはこの階級
レーシング王国オイト国王(レベル8)など
・火炎球
中級(10〜19)
初級の次に魔法使いが多い階級
アイヤール王国ハルテ国王軍の魔法使いなど
・火炎の竜巻
・火炎の嵐
・火炎針
・火炎の壁
・火炎の剣
・凍氷の剣
・凍氷の壁
・流水の竜巻
上級(20〜29)
ごく少数しかいない上位階級
・火炎の鞭
・透明爆弾
超上級(30〜39)
小さな戦争なら戦況を左右できる程の実力者
水氷系魔法使いヴァルレインの偽者ナザールなど
・火炎の螺旋
・火炎の波
・炎流跳躍
・凍氷の硬壁
・暴れる吹雪
・水気流
勇者級(40〜49)
大陸中に点在する高難易のダンジョンの攻略や、レアクラスの魔物を討伐するほどの実力者
・月光の波動
・地獄の業火
・燃える花びら
・火炎の光線
・炎の流星群
・火圧弾
・吸収浄火
・火炎の円盤
・氷柱の牢獄
・凍氷の結晶
・水圧弾
英雄級(50〜59)
勇者級以上の高難易攻略や討伐ができる実力者
一個人の力が一国の戦力と同等
・火神の恵
・銀炎の剣
・金炎の剣
・冥府の大河
聖人級(60〜69)
人間の域を遥かに超えた階級
・炎地獄
・幻炎の竜
・炎界の閃光
・高位炎界の閃光
・幻炎界の閃熱光
・氷地獄
・冥氷河
・幻氷の竜
・氷界の閃光
・高位氷界の閃光
・幻氷界の閃冷光
世界級(70〜79)
????????
・聖炎の天流




