第百十話 新たなる黒い敵 &(帝都魔物出現MAP)
「それじゃ、遠慮なく」
シャスターが動いた。
「火炎の嵐」
シャスターの両手から巨大な炎が現れた。炎はまるで暴風のように空中を激しく暴れ回りながら死知者に向かって襲いかかる。
しかし、知死者は慌てる様子もなく詠唱する。
「火炎の竜巻」
知死者の前に巨大な炎の竜巻が現れた。
竜巻は激しく回転しながら炎の嵐と衝突し、大爆発が起き、辺り一面に熱風が吹き荒れる。
それなのに、両者とも一歩もその場を動くことはない。激しい炎の熱風は、まるで二人を避けるかのように流れていく。
「火炎の波」
続けて知死者が叫んだ。
巨大な炎の波が現れると、炎の波は幾重にも重なりながらシャスターに襲い掛かっていく。
しかし、今度はシャスターが慌てる様子もなく詠唱する。
「火炎の螺旋」
すると、シャスターの全身を包むように炎の渦が現れ、螺旋状に高速で回転し始めた。
うねりを上げてシャスターに襲い掛かってきた火炎の波は、火炎の螺旋に当たると消え去ってしまった。
当然ながら、シャスターは無傷だ。
「汝はレベル三十台の超上級の魔法も使えるのか?」
知死者は少しだけ驚いた様子を見せたが、それもすぐに収まる。
「我の相手として、この場にひとりで現れるほどの魔法使いだ。それも当然か」
知死者は独り言のように呟く。すると、周囲の地面が突然崩れ始めた。
「!?」
シャスターの足元まで地面が裂けてきたので、咄嗟に後ろに跳び退けたが、地割れは収まることなく、辺り一帯を砂埃が舞う。
視界が遮られてしまったシャスターだったが、知死者も攻撃は仕掛けてこない。
しばらくすると、砂埃も収まり視界も元に戻ってきたが、それと同時に、割れた地面の中から異様な者たちが姿を現した。
シャスターの身長の倍はある、目だけが赤く光った黒い人型の魔物。
「亡魔の騎士!」
思わず、シャスターは叫んでしまった。
アルレート将軍やリクスト将軍が戦っている亡魔の騎士が、ここにも現れたのだ。しかも、一体ではなく五体もだ。
「まずは十輝将以上の汝の実力を見せてもらおうか」
当然ながら、五体の亡魔の騎士を召喚したのは知死者だ。
「これはこれは……」
シャスターはため息をついた。知死者と戦うためには、五体の亡魔の騎士を先に倒さなくてはならないからだ。
亡魔の騎士は戦士系だ。いくらシャスターが剣技の腕前が凄いといっても、五体の亡魔の騎士との接近戦では分が悪い。
「火炎の剣」
シャスターが詠唱すると、目の前に無数の炎の剣が現れ、五体の亡魔の騎士に襲い掛かる。
しかし、亡魔の騎士は自らの剣で炎の剣を叩き落としていく。
「亡魔の騎士は勇者級の魔物だ。レベル三十台、超上級の火炎の剣は効かぬ」
知死者が命じると、今度は亡魔の騎士がシャスターに襲い掛かった。
シャスターは火炎の螺旋によって守られている。しかし、亡魔の騎士の攻撃は、火炎の螺旋を易々と破壊してしまった。
炎が剣圧で吹き飛ばされてしまい、さらにその衝撃でシャスターも後方に吹き飛ぶ。
「痛た、た、た……」
思いっきり地面に叩きつけられたシャスターは背中を摩った。火炎の螺旋も火炎の剣と同じく、超上級の魔法だ。
勇者級の亡魔の騎士には効かないのは当然だった。
さらに、亡魔の騎士はシャスターに襲い掛かる。
慌てて起き上がったシャスターは攻撃をなんとか避け続けてはいるが、敵は五体もいる。この状況では魔法を唱える暇もない。
このままでは、致命的な攻撃を受けてしまうのは間違いない。
「このまま終わりか。勇者級以上の魔法使いかと思ったのだが。あっけない最後だな」
少し残念そうに呟いた知死者は、この場を亡魔の騎士に任せると、帝都に向かい歩き始めた。
♦♢♦♢♦ 帝都エースヒル魔物出現 MAP ♦♢♦♢♦




