表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

315/811

第百六話 不死の魔法使い

 リーブ副将から知死者(モルス)という言葉を聞いて、士官たちがざわめく。

 彼らは知識として知死者(モルス)の存在は知っていたが、見るのは初めてだからだ。

 発言をしたリーブ副将自身も初めて見る。亡魔の騎士(フィーンドナイト)も珍しい魔物だが、知死者(モルス)はそれ以上に珍しい。



知死者(モルス)か……少し厄介だな」


 エーレヴィンが腕を組んで画面を見つめた。

 その横顔を見てリーブ副将は改めて驚いた。皇子殿下の真剣な表情を見るのは久方ぶりだからだ。


 知死者(モルス)とは高位の魔法使い(ウィザード)がアンデッド化した存在だ。

 スケルトンやゾンビのように自然的、偶発的にアンデッド化したり、誰かの手によってアンデッド化されたのではない。また、知死者(モルス)には生前の自我や記憶がそのまま残っている。


 高位の魔法使い(ウィザード)がアンデッド化し、何百年、何千年もの長い時間、魔法の研鑽を重ねて、さらに巨大な魔法使い(ウィザード)になった存在、それが知死者(モルス)なのだ。



「俺も初めて見るよ」


 シャスターがつぶやく。


「広大なアスト大陸でも、知死者(モルス)は数えるほどしかいないだろう」


 そもそも高位の魔法使い(ウィザード)なら、誰でも知死者(モルス)になれる訳ではない。

 自らのアンデッド化は禁術魔法である為、普通ではなることはできない。何かしらの大きな感情の起伏によって、死ぬ間際に強い生への執着心を持った者だけが、知死者(モルス)になれるという話だ。



「アスト大陸の歴史書には、知死者(モルス)によって滅ぼされた国が幾つも記載されている」


「たった一人の知死者(モルス)に……ですか?」


「そうだ」


 エーレヴィンの説明にリーブ副将は息を飲んだ。

 桁違いのとんでもない化け物だということだ。このまま帝都に侵入した場合、多大な犠牲が出ることは避けられないだろう。

 多くの兵士だけではなく、住民にまで被害が出てしまう可能性がある。リーブ副将の顔から血の気が引いた。


「安心しろ。ここにも一国を滅ぼす力を持っている化け物がいるからな」


 リーブ副将を安心させようとして、エーレヴィンはシャスターを見ながら苦笑した。



 その時だった。

 知死者(モルス)を包囲するかのように大勢の兵士たちが現れた。


「あれは?」


「近くにいた三個小隊のようです」


 リーブ副将に仕官が答える。おそらくは中隊の緊急要請を受けて駆けつけたのだろう。


「馬鹿な、中隊が一瞬で全滅したのだぞ! すぐに撤退……」


「もう遅い」


 シャスターは画面を見つめている。

 知死者(モルス)の身体を囲うようにして円盤状の炎が現れたかと思うと、その炎の輪が急速に大きく拡大していき、知死者(モルス)を包囲していた兵士たちの胴体を鋭利な刃物で斬ったかのように一瞬で切断してしまった。

 三個小隊約百五十名の兵士たちは自分たちに何が起きたのか理解できぬまま、上半身と下半身を真っ二つにされて絶命してしまった。



「やはり魔法か」


火炎の円盤(ファイア・サークル)、カッター状の薄い炎のリングが相手を切断する、勇者級の火炎系魔法だ」


 その威力の凄まじさは画面越しでもこの場にいる全員に伝わる。


 圧倒的な強さを誇る知死者(モルス)


 帝都防衛司令室に沈黙が広がった。




皆さま、いつも「五芒星の後継者」を読んで頂き、ありがとうございます!


新たな強敵、知死者(モルス)が登場しました。

亡魔の騎士(フィーンドナイト)同様、オリジナルの魔物です。

まぁ、読んで頂くと分かりますが、リッチとほぼ一緒です笑

世界観を出したくて創作してみました。


今後も既存、新規含めて、色々な魔物が登場していくと思いますので、楽しみにして貰えたら嬉しいです。


これからも「五芒星の後継者」をよろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ