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第百話 漆黒の者  &(十輝将の解説)

 亡魔の騎士(フィーンドナイト)は黒い瘴気を放ちながら歩いていた。


 周囲は地割れが起き地面が隆起しているが、全く気にすることもなく平然と歩き続けている。それはそうだろう、この大地震を起こしたのは亡魔の騎士(フィーンドナイト)自身だからだ。


 いや、正確にいえば、地震を起こしたわけではない。亡魔の騎士(フィーンドナイト)は地中深くで眠っていたのだ。それが叩き起こされた為、仕方なく地中から出てきた。その時に大地震が起きただけであった。

 眠っていたのに起こされたのだ、瘴気の集合体である亡魔の騎士(フィーンドナイト)といえども機嫌は良くなかった。しかし、命令主には逆らえない。


 命令は「エースライン帝国の帝都エースヒルを破壊せよ」だった。


 仕方なく、亡魔の騎士(フィーンドナイト)は歩き続けるが、途中で良い獲物に出会った。

 人間だ。甲冑を着ているから帝国の兵士であろう。その数、およそ五十。

 人間を殺せるのだ。不機嫌だった亡魔の騎士(フィーンドナイト)の機嫌が良くなる。

 人間たちは逃げることもなく、襲い掛かってくる。

「馬鹿な奴ら」だと思った。しかし、亡魔の騎士(フィーンドナイト)にとっては楽しい。一人、またひとりと人間を剣と盾で八つ裂きにしていった。

 すると、いつの間にか人間たちは全て死んでしまっていた。もったいないことをしたと思った。

 しかし、たった五十人程度だから仕方がない。帝都に行けば、もっと多くの人間たちを好きなだけ殺すことができる。


 亡魔の騎士(フィーンドナイト)は楽しみを求めて帝都に急いだ。



 すると、道中で再び人間に出会った。

 しかし、たったひとりだ。亡魔の騎士(フィーンドナイト)にとってはつまらない獲物だ。無視しようとしたが、ちょうど歩いている道に立っている。

 まぁ、良いか。剣を一振りして、さっさと片付けよう。

 そう思った亡魔の騎士(フィーンドナイト)は人間の目の前まで来ると、剣を振り落とした。

 それで終わりだ。

 ひとりでは物足りないが仕方がない。早く帝都に向かおう。


 しかし、目の前の人間は表情一つ変えずに、亡魔の騎士(フィーンドナイト)の剣を素早い動きで避けた。



「ホウ! 人間ニシテハ、ヤルナ。シカシ、ココマデダ」


 亡魔の騎士(フィーンドナイト)は笑った。

 亡魔の騎士(フィーンドナイト)の剣は斬撃となって、辺り一面も破壊する。避けたところで、無事なはずがないのだ。先ほどの五十人もそれで殺したのだ。


「!?」


 しかし、斬撃の先には人間の姿がない。どこにいったのだろう。

 亡魔の騎士(フィーンドナイト)が辺りを見渡した時、突然左腕に激痛が走った。


「ナ、ナンダ、コレハ……」


 痛みに耐えながらも亡魔の騎士(フィーンドナイト)は驚いた。

 信じられないことに、左腕が斬られているからだ。自分の身体は瘴気でできている。斬られるはずがないのだ。

 しかし、現実には左腕が斬られて、肘から先が地面に落ちている。


「ドウ言ウ コトダ……」


 考える間もなかった。次の瞬間、今度は右腕に激痛が走る。右腕が斬られたのだ。


「シャー!」


 訳が分からない状況の中、亡魔の騎士(フィーンドナイト)は逃げ出した。

 何が起きているのか理解できない。しかし、自分が攻撃を受けているのは確かだったからだ。


 逃げ出した亡魔の騎士(フィーンドナイト)だったが、急に転んで激しく地面に激突する。

 今度は両脚の膝から下が斬られたからだ。


 亡魔の騎士(フィーンドナイト)はもう腕を上げることも立ち上がることもできない。今の状況を知らない者が見れば、真っ黒な鎧と兜が地面に置かれていると思うだろう。

 斬られた腕や脚からは黒い瘴気がまるで血のように溢れて出ている。


 この時、亡魔の騎士(フィーンドナイト)は初めて気が付いた。

 目の前に立っている人間が女であること。しかも、自分と同じように漆黒に包まれていることを。



「オ、オマエハ、何者……」


 亡魔の騎士(フィーンドナイト)は最後まで話すことができなった。頭と身体が一閃で斬り離されたからだ。

 亡魔の騎士(フィーンドナイト)の頭が地面に転がる。

 赤い目は光を失い、黒い瘴気もまた全て消え去ってしまった。残った黒い鎧も原型を留めずに消え始める。


 しかし、それを見届けることなく、漆黒の少女星華はその場を後にした。



十輝将の解説です。


十輝将とは

エースライン帝国に十人しかいない将軍の総称。

将軍とは常人とは桁違いの個人の強さと傑出した大軍の指揮能力を兼ね備えた人物のみに与えられる称号。

エースライン帝国では畏怖と敬意を込めて十輝将と呼ばれている。


各将軍とも個々に数万の兵を持つ軍のトップであり、それぞれが帝国領の東、西、南、北、北東、北西、南東、南西の国境、そして帝都を守護している。

(エルシーネだけは機動力の高いペガサス騎士団として遊撃扱い)



十輝将になる条件

戦士の総合戦闘系スキルの全てが、レベル三十台である超上級以上が最低条件。

総合戦闘系スキルとは、無数にある戦士系スキルのうち主だったスキルのこと。具体的には、腕力スキル、脚力スキル、体力スキルなど、六つの総合戦闘系スキルがある。

通常は、一つのスキルだけでもレベル三十台の超上級になる者はほとんどいない。



登場した十輝将


ザン将軍

帝国の南東部を守護している。国境都市シャイドラの統治者。

巨体であり見た目は厳ついが、カリンにも優しく接してくれる偉丈夫。

ゴブリン軍の別動隊を殲滅させた。


アルレート将軍

帝国の東部(ザール平原など)を守護している。

戦術の天才と呼ばれていて、五万ものゴブリンの大軍を殲滅させたのも彼の手腕。

彼自身は剣と盾を扱い、ゴブリン・ロードを圧倒的な力の差で倒した。

帝都付近に現れた亡魔の騎士(フィーンドナイト)を倒した。


エルーミ将軍

帝国の西部(ベルナ湿地帯など)を守護している。

容姿や振る舞いは華麗な貴婦人にしか見えないが、槍の使い手として帝国内に彼女の右に出る者はいない。

ロード化した三匹の魔物の一匹、コボルト・ロードを倒した。


ヒューズ将軍

帝国の南部(ゲンマーク山脈一帯)を守護している。

見た目は大人しそうな青年だが、得意とする細長い長刀はその長身と相まって凄まじい威力を繰り出す。

ロード化した三匹の魔物の一匹、オーク・ロードを倒した。


リクスト将軍

帝都エースヒル防衛の最高責任者。

弱冠十四歳にて将軍になった天才。現在十五歳。歳に似合わず、思慮深さを持つ少年。

将軍になる前はアルレート将軍下で副将を務めていた。

帝都付近に現れた亡魔の騎士(フィーンドナイト)を倒した。


エルシーネ

エースライン帝国の第二皇女でありながら、将軍としての実力を持つ少女。

彼女だけは他の十輝将とは違い、守護する地域を持たない。また、将軍でありながら、数万の軍隊も持たずに千名程度のペガサス騎士団の騎士団長を務めている。

これはペガサス騎士団がペガサスの騎士だけで編成されている一騎当千の騎士団であり、さらに高機動力が特徴の特殊な騎士団のため、各将軍の軍隊と同等の戦闘力を有するとみなされているからである。

シャスターとは仲(?)が良い。


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