第八十八話 勝負の行方
アルレート将軍が放っていた七色の刃が消えて、元の長剣に戻った。
さらに背中に背負った盾を左手に持つ。
「それでは、俺も最大奥義の武法で勝負を掛けます」
英雄級の武法を見せた後なのに、まだその上の武法があるというのだ。普通ならそれだけでも相手は緊張し身構えるのだが。
「いつでもいいよ」
シャスターには全く緊張感がない。
そんな少年を見て、アルレート将軍は笑うしかなかった。
しかし、表情とは対照的にアルレート将軍の周囲の空気が変わった。まるでビリビリと空気が振動しているかのようだ。
「それでは、いきます!」
アルレート将軍の全身が白銀色に輝き始める。まるで、彼自身が光になったかのような眩しい輝きだ。
そのままアルレート将軍は腰を落として剣を構えると、低い攻撃体勢になった。
「幻霞の……」
その時だった。
「おやめなさい!」
まさにアルレート将軍の攻撃が始まる直前、闘技場に大きな声が響き渡る。
その声に反応して、アルレート将軍の動きが止まった。そして、声がした方向に視線を向ける。
「今、いいところなんだよ。見逃してくれないか?」
「駄目です」
声の主は、アルレート将軍の懇願にも耳を傾けようとしない。一刀両断だ。
「いや、しかし……」
「アルレート将軍といえども、ここでは私の指示に従ってもらいます」
アルレート将軍はさらに食い下がろうとしたが、声の主には無駄だと悟ったようだ。大きく頭を横に振って諦めた表情をすると、ゆっくりと剣を降ろした。すると、それに合わせたかのようにアルレート将軍の輝きも収まる。
「そうだな。帝都はお前の管理下だ。分かったよ、リクスト将軍」
アルレート将軍が見上げた先、そこには毅然とした態度でアルレート将軍を睨みつける十五歳の将軍が立っていた。




