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第七十一話 兄と妹の団欒?1

 十輝将たちが談話している頃、皇宮奥の宰相執務室ではエーレヴィンとシャスターが重要な話し合いをしていた。

 ……わけではなかった。



「兄上は身勝手過ぎます!」


 怒号の勢いでエルシーネがエーレヴィンに詰め寄っていた。彼女としては作戦が内密にされていたことに関して、まだ納得がいっていなかったのだ。


「妹である私には予め作戦を知らせておいてもよかったのではないですか?」


「それは公私混同だ。私はおまえを皇族だからという理由で他の将軍たちと区別するつもりはない」


「ぐぬぬっ」


 痛いところを突かれた。

 エルシーネ自身、実力がないのに皇族というだけで出世したと思われることがとても嫌だった。

 だから人一倍努力をして、実力のみで将軍職を手に入れたのだ。そして今ではエルシーネは他の将軍たち全員が認めるほどの実力の持ち主となった。

 しかし、だからこそより一層公私混同はあってはならないと思っていた。



「だが、お前が今、突っかかってきていることはそういうことだ」


「しかし、私は……」


「くどいぞ、エルシーネ! これ以上、皇族の品位を落とすな」


「……」


 エルシーネは何も言い返せなかった。

 エーレヴィンが言っていることは正しい。論理的だし、筋が通っている。

 しかし、だからこそエルシーネは兄が大嫌いだった。



 そんな二人の会話をハラハラしながら聞いていた少女がいた。


 カリンだ。


 執務室で話し合いが行われるということで、自分には関係ないと思ったカリンは自室で休んでいようと思っていたのだが、エーレヴィンから「シャスターとご一緒に」と呼び出されてしまったのだ。



「カリンさん。短い道中でしたが、妹はかなりワガママだったのではないですか?」


 エーレヴィンが突然声を掛けてきた。

 エースライン帝国の宰相が名指しで、しかも丁寧な言葉で話し掛けてきたのだ。カリンとしてはハラハラどころではない、心臓が飛び出してしまうほどの緊張だ。

 さらに質問も答えづらい内容だ。


「い、いえ、そんなことはございませんでした」


 やっと声を絞り出したカリンにエーレヴィンは優しく微笑む。


「妹のことだ、『私の部下になって』などと自分勝手なことを言って、貴女を困らせていたのではないですか?」


「あ……、そ、それは……」


「やはり、そうでしたか」


 カリンの反応を見て、エーレヴィンは大きくため息をつく。


「妹は小さい頃から欲しいものは何でも手に入れたがる性格でね。それが他人のものでも関係なく。兄である私の躾がなっていなかったのだと後悔しています。許してください」


「い、いえ、そんな……」


「話を逸らさないで!」


 大爆発したエルシーネが怒った顔で、エーレヴィンに向かって叫んだ。



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