第六十九話 十輝将たちの団欒2
リクスト将軍は他の将軍たちに軽く頭を下げた。
「申し訳ありません、話を戻します。もしかしたら、その黒幕は三匹の魔物の王が倒させることを分かっていた上で帝国に侵攻してきたのではないでしょうか?」
「何のために?」
ザン将軍が質問で返すと、リクスト将軍は少しだけ考えて答えた。
「王化した中の一匹、ゴブリン・ロードはザン将軍たちに陽動作戦を仕掛けてきましたが、同じように黒幕にとって三匹の魔物の王の侵攻自体が陽動であったとすれば……」
「ふむ」
「と言っても、私が考えついたくらいです。皆さんもとっくにその可能性にたどり着いていたのでしょう?」
リクスト将軍が少年らしくない表情で苦笑した。
「そう卑下することはない、リクスト将軍。それにお前の言葉を借りれば、俺たちが考えついたくらいだ。エーレヴィン皇子殿下なら、さらにその先まで考えているだろうさ」
他の将軍たちもザン将軍の意見に賛同する。
それだけエーレヴィン皇子は戦略の天才だと、将軍たちから絶対的な信頼を得ているのだ。
「そうでした。すいません、つい先走ってしまって」
「いや、最初にこの話を振ったのは俺だ。リクスト将軍が謝ることはない。それに、ここにいる誰もが気になる事件には違いないからな」
「それに、そんなに考え込むことはないさ。早ければ明日にでもエーレヴィン皇子殿下から何かしらの話があると思うぞ」
「どうしてそのように思われるのでしょうか?」
リクスト将軍はアルレート将軍に半ば義務的に尋ねた。
前上司は考えもなしに話していることが多々あった。だから、今回も何も根拠なしに話していると思ったのだ。
しかし、意外にも他からも賛同があった。
「イオ魔法学院の後継者様が来たからでしょう?」
「そのとおりだ、エルーミ」
アルレート将軍は軽く笑うとワインを一気に飲み干しリクスト将軍を見つめた。
「いいか、リクスト。全てにおいて物事には意味がある。今回、イオの後継者様はエースライン帝国に何をしに来た?」
「それは、レーシング王国で出会った少女を助けるためと聞いています」
リクスト将軍はシャスターに会う前から情報を得ていた。
「そうだ。では、なぜゴブリン・ロードの討伐に参加したのだ?」
「それはエルシーネ皇女殿下が要請したと聞いています」
ザン将軍も頷く。それは間違いない事実だった。
さらにアルレート将軍の質問は続く。
「しかし、考えてもみろ。ゴブリン・ロードなど……まぁ今回は陽動だったが、そもそもエルシーネ皇女殿下おひとりでも楽に倒せるはずだ。それなのに、なぜイオの後継者様に同行を願い出たのだと思う?」
「それは……」
暫しの間考えたが、リクスト将軍は答えを出すことが出来なかった。




