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第六十四話 兄と妹

 宰相であるエーレヴィン皇子がエルシーネを軽く視線を合わせた。


「ゴブリン軍の陽動部隊がアイヤール王国とシャイドラに侵攻していること。そしてゴブリン軍の本隊がエースライン帝国を目指していることは、私の斥候部隊からの報告で分かっていた。だからこそ、それを逆手に取っただけだ」



 ザン将軍とエルシーネ、二人の将軍がゴブリン・ロードの策に騙されたまま、陽動部隊に攻撃を仕掛けたのだ。

 ゴブリン・ロードとしては大成功と思っていたに違いない。


「気が緩んでいたからこそ、ゴブリン・ロードはろくに調べもせずに揚々とザール平原に攻めこんで来たのだ。つまり、それはお前の手柄だ。卑下することもあるまい」


「卑下などしておりません! ただ作戦を教えておいて欲しかっただけです」


 エルシーネとして全貌を知らされないままに戦っていたことが気に食わないのだ。



「作戦を教えたら、お前のことだ。ペガサスに乗ってゴブリン・ロードの元に向かっただろう。そんなお前の姿を地上から見たゴブリンたちは、罠にはまっていることに気付いてしまうかもしれない。そんな賭けには出られないのは分かっていよう?」


 以前、ザン将軍は同じことをエルシーネに告げていた。

 そんな自分の予想が当たったザン将軍は表情を隠したまま笑ったが、そんなことに気付く余裕もなくエルシーネはもう一歩エーレヴィンに詰め寄る。


「私はそんな軽率な行為はしません! 陽動なら陽動の仕事をしっかりとします」


「だと良いのだが」


 エーレヴィンは苦笑したが、それを見たエルシーネが爆発した。


「兄上は秘密裏に事を進め過ぎます! もっと我々を信用してください!」


「信用している。そうだな、アルレート将軍」


「はい」


 突然の声に驚いたエルシーネが背後を振り向くと、謁見の間の入口に均整が整った細身の男が立っていた。



「アルレート将軍、なぜここに……」


 いるの、と言いかけて、エルシーネは迂闊にもやっと気付いた。


 そもそも、ゴブリン・ロードの本隊をザール平原にて全滅させたのはアルレート将軍なのだ。

 しかも、アルレート将軍自身がゴブリン・ロードを倒している。今回の功績の第一位はエルシーネやザン将軍ではない、当然ながらアルレート将軍なのだ。

 今回の作戦についてエルシーネが不服を言った後に、わざわざアルレート将軍を登場させるとは、これではエルシーネがまるで道化師だ。


(チッ。こうなることを予想して、アルレート将軍を後から呼んだのね……ほんと性格の悪い)


 エルシーネは皇女にはあるまじき行為である舌打ちをして、エーレヴィンを睨みつけたが、妹の怒りなど兄は全く気にもしていない。



「分かってくれたか? エルシーネ」


「……はい」


 ここは大人しく引き下がるしかない。

 エルシーネはその場から一歩下がったが、その時にアルレート将軍の後ろに二人の人物がいることに気付いた。


 一人は長身の青年、もう一人は女性だ。

 その二人もエルシーネがよく知る人物だった。



「ヒューズ将軍に、エルーミ将軍……」



 謁見の間に現れた彼らにエルシーネだけでなく、その場にいる誰もが驚いた。




皆さま、いつも読んで頂き、ありがとうございます!


新しいキャラクターが登場しました。

エーレヴィンです。

エースライン帝国、シャード皇帝の皇子であり、エルシーネのお兄さんです。

帝国宰相でもあり、かなりの切れ者です。見ての通り、エルシーネでは全く歯が立ちません。


エーレヴィンの活躍もこれから楽しみにしていてくださいね。


あっ、最後に出てきた十輝将の面々はまた後でお話ししますね。


それではこれからも「五芒星の後継者」をよろしくお願いします!



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