第五十九話 帝都エースヒル &(帝都MAP)
「リクスト将軍もここに家があるのですか?」
貴族や高官が住む特区だ。
当然ながら十輝将の家もあるに違いないと思ってカリンは尋ねたが、案の定リクスト将軍は頷いた。
「はい、ちょうど見えてきました。あれが私の家です」
指差した先には大きな屋敷があった。
三階建ての本館と花に囲まれた広い庭園がある立派な屋敷だ。少年といえども十輝将の一人だ、家も一際立派なものだった。
近づくにつれ、さらに家の良さが見えてくる。
「わぁ、とても綺麗な庭園! きちんと手入れがされて花々が生き生きと咲いています」
カリンはリクスト将軍の家の庭園を見て感嘆したのだ。
もちろん庭師を雇っているのだろうが、庭園のきめ細やかさを見れば頻繁に手入れをしているのが分かる。そして、それは持ち主の性格にも反映されるのだ。
「リクスト将軍のお人柄が出ているようですね」
「あはは、お恥ずかしい」
「それに比べて、あの家を見てください」
カリンが指差した家は、リクストの家よりもさらに先に見えた。
「リクスト将軍と同じくらい大きな家ですが、庭園の植物が伸び放題になっています。失礼かもしれませんが、リクスト将軍とは正反対な家主なのでしょうね」
いくら貴族の豪邸でも、あんなに伸び放題だと家がかわいそうだ、とカリンは憤る。
「リクスト将軍が忠告してあげたらいかがですか?」
「リクスト将軍を通さなくても、忠告は受け付けた」
「えっ!?」
突然のザン将軍の声にカリンは驚く。
「あれは俺の家だ」
「えええっー!?」
驚いているカリンの前でエルシーネが大笑いしている。
「あっはははは! よく言ってくれました。カリンちゃん、最高!」
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい! まさかザン将軍の家とは知らずに……」
ひたすら謝るカリンを見て、エルシーネはようやく笑いを収めた。
「いいのよ。これこそ忖度なしの本音だから。ねっ、ザン将軍?」
「カリン嬢が言うのならその通りだろうな。シャイドラに常駐していて滅多に帝都には帰らぬ、とは理由にならないな」
「当たり前でしょ。そんなこと言ったら、ほとんどの将軍の家が荒れ放題になってしまうわ」
「そうですな。これからは気をつけることにしましょう」
やや憮然としているザン将軍を横目に、エルシーネはカリンにウインクを送った。面白いものを見せて貰えたお礼だった。
「エルシーネ皇女殿下のお家も近くにあるのですか?」
「残念、カリンちゃん。私の家はないのよ」
リクスト将軍とザン将軍の家があるということは、同じ将軍であるエルシーネもあるに違いないと思ったカリンだったが、当てが外れてしまった。
「エルシーネ皇女殿下のお住まいは皇宮ですから、特区にはないのです。特区のさらに中心、皇区の中にある皇宮となります」
リクストに説明されて、確かにその通りだとカリンは赤面した。
同じ将軍でもエルシーネだけは皇族であり別格なのだ。
「そして、あれが皇宮です」
進んでいる道の先に、大きく長い壁が見える。
市民区の中にある特区と同じように、特区の中に皇区があるのだ。
そして皇区の中には壁の数倍も高い建物が天高く建っていた。
「この建物が皇宮だったのですね……」
そう、カリンは帝都エースヒルに着く前から皇宮が見えていたのだ。
そしてカリンだけではなく、帝都に来た者や住んでいる者、全てに見えているのだ。
帝都中心にそびえ立つ巨大な建物群が。
皇区の中にある皇宮、それは帝都の中でも一際高くて大きい。そのため帝都内はもちろんのこと、帝都から遥かに離れている場所からも見ることができた。
「こんな近くから見るとさらに圧倒されますね」
間近から見ると、まるで天にまで延びているかのような錯覚に襲われる皇宮だ。
改めて、アスト大陸に百数十もある国々の頂点にたつ七大雄国の一角、エースライン帝国の凄さを実感したカリンだった。
♦♢♦♢♦♢♦ 帝都エースヒル MAP ♦♢♦♢♦♢♦
皆さま、いつも読んで頂き、ありがとうございます!
今回、エースライン帝国の帝都、エースヒルの簡単な地図を載せました。
これからしばらくの間、帝都エースヒルが舞台となっていきますので、もし宜しければ参考にして頂ければと思います。
これからも「五芒星の後継者」、よろしくお願いします!




