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第五十六話 唯一の少女

 宿屋に戻ってきたシャスターたちは、ザン将軍にカリンの契約について手短に話した。


 話を聞きザン将軍は驚いたが、それも一瞬であった。大きな声で笑うと、カリンの肩を叩いた。


「カリン嬢はこの広い大陸にたった一人しかいないファルス十二神全ての契約者か! そうなると、我々よりも重要人物ですな」


 そう感想を述べたザン将軍をエルシーネは目を丸くしてまじまじと見つめた。

 デーメルン神と契約ができてしまったことで、カリンの大神官長になれる可能性が閉ざされてしまったかもしれない。そんなマイナスのことしかエルシーネは考えていなかったが、プラスに考えれば、ザン将軍の言うとおり、十二神全てと契約できたカリンはアスト大陸で唯一無二の存在といえるのだ。



「うかつだったわ。確かにカリンちゃんは私たちの中で一番重要人物となるわね。さすがザン将軍、筋肉だけで将軍になったわけではないようね」


 これは馬鹿にしているわけではない。エルシーネなりに賞賛しているのだ。

 そのことを分かっているザン将軍はもう一度笑った。


「カリン嬢、もっと自分に自信を持つといいぞ。十二神全てから気に入られるなんて、とんでもなく凄いことだからな」


「ありがとうございます!」


 カリンは笑顔で頭を下げた。ダーヴィス将軍の気持ちが嬉しかったからだ。



「それでは、カリン嬢のためにも早急に帝都に向かいましょう」


「それがいいわね」


 ザン将軍はすぐ出発できる準備をしていたため、護衛の騎士百名と共にそのままベックスを出て帝都に向かって走り出した。




 ベックスを出発してから十日後、ついに一行は帝都付近まで来た。


「あれが帝都エースヒルよ」


 小高い丘から遠くに見える帝都にカリンは絶句した。帝都は高い防壁に囲まれていた。カリンが今まで見たことがないほどに高い壁だ。シャイドラの倍以上の高さだろう。

 しかし、カリンが驚いたのは帝都の防壁の高さではなかった。


「大きすぎる……」


 帝都近くに来たとはいえ、ここから帝都まではまだ十数キロ以上はあるだろう。それなのに、すでに帝都の全体が視界に収まりきれない。

 一体どれほどの広さなのか。



「帝都エースヒルは丸い円形をしているの。一周はだいたい五十キロぐらいかな」


「そんなにもですか!?」


 カリンは驚いたが、そもそもここまでくると広さの感覚が分からない。


「アスト大陸有数の大都市だからね。人口も百五十万人以上いるし」


「百五十万人!!」


 カリンが住んでいたレーシング王国の人口が、確か約百三十万人だ。

 それ以上の人口を帝都とはいえ、たった一都市だけで人々が暮らしているとは。

 シャイドラをはじめエースライン帝国の都市の大きさに驚き続けてきたカリンだったが、帝都は桁違いの大きさだった。シャスターが「シャイドラの十倍」と言ったが、あながち冗談ではなかったのだ。


「すごすぎです……」


「都市の大きさで驚くのはこれで最後になるわね」


 道中、毎回都市を見るたびに驚いていたカリンを思い出してエルシーネが笑った。

 帝都エースヒル以上の巨大な都市はエースライン帝国内にはないからだ。


「それでは、向かいましょう」


 ザン将軍が片手を上げると騎士たちの隊列が変わる。縦列に長くなったのだ。


「もう我々の身分を隠す必要はありませんし、凱旋なので堂々と行きましょう」


「当然よ」


 一行は帝都に向かって悠然と進み始めた。




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