表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

239/810

第三十話 三人の戦闘力

 突然現れた人間に警備していたゴブリンたちは驚くが、それも一瞬のことだった。


「グキギギ!」


「グギ!」


 ゴブリンたちが何を話しているのか分からない。しかし、四人を見つめる残虐な笑みで、大方の予想はつく。


「たった四人しかいないぞ。皆殺しだ! って、そんなこと話しているでしょうね」


 エルシーネが軽くため息をつく。

 その直後、影が動いた。

 星華だ。

 門を警護している二十匹ほどのゴブリンを一瞬で倒すと、そのまま柵の外側を時計方向に走り出した。



 それから二、三分ほど経った頃、柵の反対側から星華が戻ってきた。


「警備のゴブリン全て倒してきました」


 周囲五百メートル以上の柵を二、三分ほどで戻ってくるだけでも凄いのに、柵の周囲を警備していた百匹ものゴブリンを倒し、さらに息も切らせていない。

 相変わらずの凄まじさに、カリンはまじまじと星華を見つめた。


「私の顔に何かついているのでしょうか?」


「あ、いや、何でもないです。ははは……」


 シャスターもエルシーネも星華の凄さに驚くこともない。彼らにとっては当たり前なのだ。

 本来であれば、千人単位の軍隊が攻め込むような状況だ。それをたった四人で攻め込むことなど普通に考えれば到底不可能だ。

 しかし、不可能を可能にしてしまうのが彼らなのだ。



「星華さん、ありがとう。それじゃ、突入しますか」


 エルシーネは剣を抜くと、自身の身長の倍はある城門を一刀両断した。

 すると城門は音を立てて崩れていく。


「わぁ、ゴブリンがいっぱいいるね」


 緊張感が一欠片もなくエルシーネが叫ぶ。

 城門の先は大きな広場になっていた。その広場では見渡しただけでも、数えきれないほどのゴブリンが戦いの訓練をしていた。


「千匹位はいる?」


「もうちょっと多いと思うわよ」


 シャスターとエルシーネは呑気に辺りを見渡しているが、城門の崩れる大きな音で、ゴブリンたちの視線がこちらに向いてしまった。



「グギギギッー!」


 突然のことで何が起きたのか、ゴブリンたちは理解できなかった。

 しかし、それもほんの少しの間だった。

 一際大きな体格をした隊長格であるゴブリン・キャプテンが声を上げると、ゴブリンたちが四人に襲いかかってきた。

 しかし、シャスターもエルシーネも星華も全く動じていない。


「カリンちゃん、防御壁プロテクション・バリアをお願い」


「あ、はい!」


 カリンが防御壁プロテクション・バリアを張る。

 バリアはドーム状に広がり、拠点地全体を覆った。これでゴブリンたちに逃げ道はない。

 エルシーネ、シャスター、星華の三人はゴブリンに向かって走り始めた。



流水剣舞(りゅうすいけんぶ)


 エルシーネはまるで流れる水のような動きで、ゴブリンたちの群れの間に入り込んでいくと、そのまま優雅な動きでゴブリンたちを斬り伏せていく。

 ゴブリンたちは自分たちが斬られたことを分からないまま、倒されているのだ。


 シャスターもゴブリンたちを大量に倒していた。


火炎の鞭(ファイア・ウィップ)


 シャスターの両手には炎のムチが握られていた。

 そのムチが襲いかかってくるゴブリンたちを炎に包ませながら縦横無尽に薙ぎ倒していく。魔法使い(ウィザード)は接近戦が苦手だという常識は、シャスターには関係がないようだ。


 星華はまるで重力が無いかのように、ゴブリンたちの頭を踏み台にして飛び跳ねながら剣を振るっていた。その後ろには首が落とされたゴブリンの死体がいくつも重なり倒れていく。



 そんな三人の戦いをカリンは後方で見つめていた。

 ずば抜けた戦闘力を持っている三人だから、一方的な戦闘になることは分かりきっていた。

 しかし、それでもやはりカリンは圧倒されてしまう。


「すごい……」


 この三人だけ世界征服ができてしまうのではないかとカリンは思ってしまったほどだ。

 そんなカリンが感嘆している間にも、ゴブリンたちは急速に数を減らしていた。


 千匹以上いたゴブリンは、すでに十数匹までに激減していた。



「マ、マ、マサカ……」


 隊長格のゴブリン・キャプテンが顔に大量の汗をかきながら呆然としている。

 信じられないことが起きているのだ、仕方がない。

 それでも逃げずに剣を抜きながら突進してきたことは立派だったが、エルシーネは無慈悲に剣を一閃する。


 それと同時に、隊長の胴体は腹の上と下で永遠に別れてしまった。




「カリンちゃん、大丈夫だった?」


 剣を収めるとエルシーネは、まるで何事もなかったかのようにカリンに微笑んだ。


「あ、はい! 大丈夫です。一応自分にも防御壁プロテクション・バリアを張っておきましたし」


 しかし、そんなバリアも無用なほどの三人の活躍だった。


「それは良かったわ」


 もう一度エルシーネは微笑みながら、広場を見渡した。


 隊長が倒されてしまったからだろうか、広場に点在している十数匹の残党は一目散に逃げ出していた。

 しかし、エルシーネはあえて追うことをしない。なぜなら、逃げていく先にゴブリン・ロードがいる可能性が高いからだ。


 とはいえ、逃げていく場所は一箇所しかなかった。


 残党たちは広場の奥に建っている城のような建物に逃げていった。

 広場にはその建物しかないからだ。そしておそらく、その建物の中にゴブリン・ロードがいる。



「いきましょうか」


 エルシーネが先頭を切って歩き出す。


「星華」


 シャスターが星華に声を掛ける。

 何も言わなくてもシャスターの意図を了解した星華は、軽く頭を下げるとその場から忽然と消えた。


「星華さんを城の裏手に配備したのね?」


「一応、万が一のためにね」


「ありがとう。でも逃すことなく倒すわよ」


「当たり前さ」


 シャスターとエルシーネは建物の中に入っていく。

 慌ててその後ろからカリンも二人を追っていった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ