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第二十九話 本拠地へ

 シャスター、エルシーネ、そしてカリンの視線が星華の指す方向に向かう。

 それはまだまだ遠くに小さく見えるだけだが、確かに人工物だ。直後、星華はこの場から消えた。建物を偵察しに向かったのだろう。


 怒りが空回りした格好となったエルシーネだったが、すでに平常心に戻っている。怒っている場合ではないからだ。



「あれが、ゴブリン・ロードの本拠地かな?」


「その可能性は高いだろうね」


 二人の歩くスピードが速くなる。その後ろからカリンも必死についていく。


 そこに星華が現れた。


「やはり、建物はゴブリンの住処でした。簡素な城のような造りの建物です。建物の周囲は五百メートル程で柵で囲まれており、柵の外を百匹ほどのゴブリンが警護しています」


「やはり本拠地のようね」


 エルシーネは腕を組んだ。


「攻撃をするにあたって、二つの選択肢があるわ。一つは警護のゴブリンたちに見つからないように隠れながら中に侵入する方法。もう一つは派手に強行突破する方法。カリンちゃんならどちらがいい?」


「私ですか!?」


 急に振られてカリンは驚いたが、少しだけ考えると自分の意見を披露した。


「隠れながら侵入する方法が良いと思います。せっかくここまで見つからないように来たのですから、ゴブリン・ロードを見つけるまで隠れて進みたいです。それに強行突破すれば、ゴブリン・ロードは必ず気付きます。それで逃げられてしまったら、元も子もないと思います」


「うん。状況把握がしっかりとできていて、的確な回答ね!」


 エルシーネがカリンを褒めちぎる。

 しかし、褒められながらもカリンは釈然としていなかった。


「でも、エルシーネ皇女殿下の選択は強行突破ですよね?」


 エルシーネが自分の方法とは違うことをカリンは言葉の隅から感じていた。


「さすが、カリンちゃん! 私の気持ちを感じ取るなんて」


 エルシーネは笑った。

 しかし、今度の笑いは大笑いではない。カリンの洞察力を驚嘆する静かな笑みだった。



「シャスターくん、私やっぱりカリンちゃんが欲しいわ」


「馬鹿なことを言ってないで、さっさと作戦を説明して」


 軽くあしらわれたエルシーネは、口を尖らせながら説明を始めた。


「ゴブリン・ロードというターゲットだけを倒すのなら隠密行動が良いでしょうけど、今回ここにいる全てのゴブリンを倒すのなら、最初から派手に暴れて片っ端から倒していく方法の方が効率的なの」


「でも、ゴブリン・ロードに逃げられる可能性が高くなるのでは?」


「そのとおり! そこでカリンちゃんの出番よ」


「なるほど!」


 カリンは理解した。

 ゴブリンの一軍と戦った時と同様に、逃げられないための防御壁プロテクション・バリアを張るのだ。


「本拠地を守っている柵に合わせて周囲をドーム状に防御壁プロテクション・バリアを張ったら、敵は逃げられないわ」


 これほど大きなバリアなど当然試したことはないが、カリンには長壁の防御壁プロテクション・バリアを張った経験がある。

 多分できるだろうとカリンは思ったが、それよりも心配なことがある。


「私の防御壁プロテクション・バリアでゴブリンの逃亡は防げても、シャスターの魔法の威力には到底敵いません」


 カリンが心配しているのは、防御壁プロテクション・バリアの内部でシャスターが魔法を放った場合、その凄まじい威力でバリアが破壊されてしまうことだった。

 しかし、エルシーネは軽く笑う。


「大丈夫。シャスターくんも馬鹿じゃないから、そのへんの力加減はしてくれるわよ、ね?」


「馬鹿とはなんだ? 馬鹿とは!」


 シャスターは憤慨していたが、相変わらずエルシーネは笑っている。まぁこの二人なら自分が心配することはないか、カリンは覚悟を決めた。



「わかりました!」


「よし、それじゃいきましょうか」


 四人は悠然とゴブリンの城に向かって歩き出した。


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