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第二十話 カリンの信力レベル  &(登場人物紹介)

 ユーゲン神官上長が頭を下げている。

 まわりの従者たちは突然の上神官長の行動に訳が分からず、戸惑いながらも同様にシャスターに深く頭を下げる。


「エルシーネ、あまり神官上長をいじめるな。悪趣味だよ」


「ごめん、ごめん、そんなつもりはなかったけど。ユーゲン神官上長、頭を上げて」


 エルシーネの言葉で、ユーゲン神官上長は落ち着きを取り戻した。


「イオ魔法学院の後継者、シャスター・イオ様、お会いできて光栄でございます。私はシャイドラで神官上長を勤めておりますユーゲン・オノザと申します」


「シャスター・イオです。エルシーネが驚かしてしまい申し訳ない。混乱を招くから、俺の身分は伏せたままにしていたけど」



 シャイドラの神官上長ともなれば、シャイドラでの身分はザン将軍に次ぐ高さであるし、エースライン帝国の神官の中で上位の立場だ。

 それにカリンにも優しく接してくれた神官上長を驚かせてしまったことにシャスターは謝罪する。


「いえいえ、シャスター様は悪くございません。問題なのは、私を驚かせようとしたエルシーネ皇女殿下のほうです」


 ユーゲン神官上長はきっぱりと言い放った。


「それにエルシーネ皇女殿下のこのような行為は、今に始まったことではございません。幼少の頃から困った性格でございました」


「おっ! ユーゲン神官上長はよく分かっている。ほんと、この性悪な性格はどうにもならないよね」


「今さら性格は変えられるものではありません。もう仕方がないと諦めるしかございません」


 二人が笑っている横で顔を歪めている少女がいる。

 もちろんエルシーネだ。

 しかし、自分に非があることは確かなので何も言い返せないのだ。



「二人とも、そろそろ本題に戻ってもらってもいいかしら?」


 怒りを抑えた声のエルシーネに、ユーゲン神官上長はハッと気がつく。


「おぉ、そうでした。この少女の信力レベルがあまりにも高いので驚いてしまいましたが、シャスター・イオ様の同行者であれば納得も致しましょう」


「それで、カリンちゃんのレベルはいくつなの?」


「三十五レベルです」


「三十五!!」


 驚きの声を上げたのは、今度はエルシーネの番だった。ユーゲン神官上長の従者も皆一様に驚いている。

 しかし、誰より一番呆気に取られているのが、当の本人だ。



「はは、ははは……、何かの間違いですよね? ついこの間まで私の神官レベルはたった三だったのですよ」


 悪い冗談に違いない、カリンはそう思った。

 この間フォーゲンに教えてもらった職業レベルに照らせば、レベル三十五は超上級にあたる。小国の最高位である神官長クラスよりも高い。

 事実、レーシング王国の神官長のレベルは二十六だった。三十五はそれを超えているレベルだ。

 有り得るはずがない。



「三十台のレベルは、生まれながらに才能に恵まれた人が長い年月を修行して初めて到達する領域のはずよ。それをたった一ヶ月程度で到達するなんて……」


「普通ではあり得ません。しかし、球は事実のみを映し出します。信力レベル三十五は本当です」


 ユーゲン神官上長の言葉に嘘偽りはないのだ。



「シャスターくん、どういうことか説明してくれる?」


 エルシーネがシャスターに強い口調で問いかけた。


 エルシーネはエースライン帝国の高度な情報網を使って、レーシング王国にいた頃のカリンのことも調べ上げていた。そして、神官レベルが三であることも分かっていた。

 カリンはその後、シャスターと共に死者の森とアイヤール王国を旅してきたのだ。死者の森では度重なる戦闘も経験してきた。

 元々、才能が高かったカリンなら信力レベルが上がっていても当然だと確信していた。


 しかし、そんなエルシーネも、カリンのレベルを十台半ばと見ていた。レベル十でも並の人間なら何十年も掛かってやっと到達するレベルだ。

 それをたったひと月余りで到達すること自体、カリンの才能をエルシーネはかなり高く評価していたのだが。

 実際にはそれを凌駕する脅威的な速さでレベルが上がったということだ。



「死者の森で何があったの?」


 シャスターへのエルシーネの問い詰めはさらに激しくなった。絶対にシャスターが絡んでいると確信していたからだ。

 顔がギリギリまで付くほどに近づき声を上げる。シャスターとしてはたまったものではない。


「信力の核を受け取った」


「信力の核を?」


「そう。アークスという人物から」


 シャスターはアークスの名を伝えた。

 元々隠す必要もないことだし、無用な疑いも晴らさなくてはならないからだ。

 帝国の高度な情報収集力でもさすがに限界はある。エルシーネも、シャスターたちとアークスの詳細なやり取りまでは把握できていないのだ。

 そんな思いがけない話に、エルシーネよりも先に反応したのはカリンだった。


「そうだった! 私、アークスさんから信力の核を受け取ったんだ。だからこんなにもレベルが上がったんだ……」


「ちょっと、まちなさい! アークスとは、あのシュトラ王国にいた神官長アークスのことですか?」


 ユーゲン神官上長が驚く。


「はい、そのアークスさんです。彼が死ぬ間際、私に信力をくれたのです」


「まさか……」


 ユーゲン神官上長は唖然としている。

 エルシーネもまだ理解出来ていない。


 そこで、カリンは死者の森で起きたことを二人に詳細に話し始めた。




第四章「魔物の王」編

これまでの主要な登場人物


シャスター

伝説の魔法学院、火炎系魔法の最高峰であるイオ魔法学院の後継者。

魂眠(こんみん)に陥ってしまったフローレを治す可能性があるエースライン帝国に向かう。

アイヤール王国との国境付近にあるエースライン帝国の国境都市シャイドラにてザン将軍とエルシーネの二人に会うが、二人の策略(?)によってゴブリン・ロードの本拠地に攻め込むことになってしまった。


カリン

神聖魔法の使い手(ホーリーユーザー)であり神官見習い。

魂眠(こんみん)に陥ったフローレを治す方法を探す為、シャスターと共に旅に出た。

「死者の森」で神聖魔法を使った活躍、そしてアークスから信力の核を受け取ったことにより、国境都市シャイドラでカリンの信力レベルを調べたところ、レベル三の神官見習いからレベル三十五の神官長以上のクラスへと一気に上がっていた。

あり得ない状況に、カリン自身が一番驚いている。



星華

シャスターの守護者(ガーディアン)

稀有な職業「忍者」、その中でも上忍しか名乗ることが許されない「くノ一」の称号を持つ。



エルシーネ

七大雄国(セフティマ・グラン)の一角、エースライン帝国の第二皇女であり、帝国の有するペガサス騎士団の騎士団長、そしてエースライン帝国が誇る十輝将(じゅうきしょう)のひとり。

シャスターとは以前からの知り合い。

国境都市シャイドラで、シャスターとの剣での勝負をするが、シャスターを一瞬で倒してしまうほどの実力者。

シャスターと共に、ゴブリン・ロードの本拠地に向かう。



ザン将軍

エースライン帝国、南東部の国境都市シャイドラの統治者であり、辺り一帯を守護している。

帝国が誇る十輝将(じゅうきしょう)のひとり。

シャスターとの剣での試合では、剛腕と素早さで、シャスターを圧巻した。

十五年前と同様にアイヤール王国にゴブリン軍が進軍していることを知ると、軍を率いてアイヤール王国へと向かった。



ゴブリン・ロード

ゴブリンの突然変異種。

通常のゴブリンより数倍大きく、また戦闘力も桁違いに高い。知能も高く、同種族の大軍を率いて戦う。まさにゴブリンの王。

魔物の王化(ロード)は、ゴブリンに限らず他の魔物でも行われる。

しかし、魔物の(ロード)化は、偶発的な環境要因が重なった場合に自然発生するため、起こるのは非常に珍しい。

その確率は低く、百年に一度程度といわれている。

十五年前に現れたゴブリン・ロードは、大軍を率いてアイヤール王国を壊滅する一歩手前まで進軍した。

しかし、今回の出現は十五年しか経っておらず、しかも前回と同じ場所に現れたゴブリン・ロード。

そしてゴブリン・ロード以外にも、帝国の他の場所で二体の魔物の王化(ロード)が同時に現れたことに、シャスターたちは違和感を持っている。




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