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第九話 スキル特性の違い

 シャスターを簡単に倒してしまう、エルシーネ皇女とは一体……。


「まさか、エルシーネ皇女殿下は、ザン将軍よりも強いのですか?」


 カリンは星華に掴み掛かる勢いで尋ねた。

 シャスターは本気を出したザン将軍に負けた。しかし、本気を出していないエルシーネには一瞬で負けたのだ。

 シャスターが皇女だという理由でわざと負けるとは思えない。つまり、ザン将軍よりもエルシーネの方が強いということだ。

 筋肉隆々の偉丈夫よりも、その半分もないほど身体つきが細い少女が強いなんて。

 カリンは信じられない。



「そうではありません。スキルの特性の違いです」


「スキル!?」


「エルシーネ様は速さのスキルのレベルが非常に高いのです。一方、ザン将軍は腕力のスキルが非常に高い。その違いです」


「でも、ザン将軍も巨体とは思えないほど、素早い動きでした」


 確かにザン将軍もシャスターを圧巻するほどの速い動きだった。

 カリンは一番最初にシャスターと出会った時を思い出す。あの時、三人の騎士を目にも止まらぬ速さで倒したシャスターに驚いたが、そのシャスターでさえ、ザン将軍の動きについていくのがやっとだったのだ。



「帝国の将軍は、総合戦闘系スキル……腕力、脚力、防御力、魔法抵抗力などの全てが最低でも超上級以上、そして自分の得意とするスキルは当然それ以上となります」


「超上級!!」


 カリンは驚きを隠せない。

 アイヤール王国での戦いの際、フォーゲンがレベルや階級の説明をしてくれたのを思い出したからだ。

 超上級とはレベル三十台のことだ。大陸でも数少ない実力者、それが超上級なのだ。

 そんな超上級のスキルが一つあるだけでも、とんでもない強さなのに、帝国の将軍とは基本の総合戦闘系のスキル全てが超上級以上だというのか。


「ザン将軍はバケモノですか……」


 決して馬鹿にしているわけではない。

 カリンとしては表現の言葉を持ち合わせていなかっただけで、「バケモノ」は人間の常識を遥かに超えているザン将軍への最大限級の畏怖と賞賛だった。



 そんなザン将軍がいるエースライン帝国、七大雄国(セフティマ・グラン)の凄さが改めて、いや今まで以上に分かったカリンはエルシーネを見つめた。


「でも、エルシーネ皇女殿下はペガサス騎士団の団長ですよね? 将軍ではなく……」


 騎士団長は階級でいえば将軍よりも格下のはずだ。

 それなのに、シャスターを一撃で負かすあの強さは……。


 すると、星華から意外な答えが返ってきた。


「エルシーネ様は将軍です」


「!?」


「ペガサス騎士団に愛着があるようで騎士団長を名乗っていますが、エースライン帝国が誇る十輝将(じゅうきしょう)のおひとりです」


「し、しょうぐん!?」


 驚きの連続で、ついにカリンはオーバーヒートし、固まってしまった。




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