表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

209/810

第六十二話 北へ  &(登場人物紹介、MAP)

 翌朝、シャスターたちはアイヤール王国第二の都市ロストンを出発しようとしていた。


 ひっそりとロストンを出て行こうと思っていたのだが、そんなことはマイトラが許さない。

 シャスターたちがロストンから外に出ると、大勢の騎士がすでに街道に並んでいて盛大な見送りとなっていた。


「シャスター様、本当にありがとうございました!」


 近付いてきたマイトラが頭を下げて感謝の意を伝える。

 シャスターとカリンは馬を止めた。星華は大勢の騎士がいるので、すでにシャスターの影の中に潜って身を隠している。



「いいよ、いいよ、気にしないで」


 つまらなさそうにシャスターは軽く手を振った。

 アイヤール王国に来てからの出来事が全てエルシーネの手の平で踊らされていたようで、釈然としていないのだ。


 そんなシャスターの顔に突然笑みが浮かんだ。マイトラが重そうな皮袋を差し出したからだ。


「この度のシャスター様のご活躍に対して、あまりにも些少ではございますが、受け取って頂ければ幸いでございます」


「マイトラ大隊長は気がきくね。それじゃ、遠慮なく……」


「駄目よ!」


 カリンの怒声が響いた。驚いたシャスターが皮袋をつま先に落としてしまう。


「痛っ!」


 そんなシャスターを無視して、カリンはマイトラに目を向けた。


「とてもありがたい申し出ですが、これからアイヤール王国は復興しなくてはなりません。金貨はそのためにお使いください」


「しかし、これは私自身の財です。私の感謝の気持ちですので、ぜひ受け取って頂きたいのです」


「そうだぞ、カリン。マイトラ大隊長の好意を無にするのはよくないぞ」


 シャスターはマイトラを応援したが、カリンに睨まれてそれ以上何も言えなくなってしまった。


「マイトラ大隊長の財産なら尚更受け取ることはできません。このお金は苦しんでいる人々のために使ってください」


 カリンの言葉は、正論すぎるほど正論だった。



「分かりました。カリン様」


 マイトラはカリンの言葉に感銘を受けた。さすがエルシーネ皇女殿下がお認めになるだけの人物だと、大きく頷きながら納得している。

 その横でシャスターはふてくされた表情をしている。

 それを見てカリンは笑った。


「さあ、エースライン帝国に向かいましょ!」


「……はいはい」


 元気が良い少女と落ち込んでいる少年は馬に乗ると、エースライン帝国に延びる街道を進み始めた。

 このまましばらく東に進んだ後、北へ進むことになる。


「皆さま、お元気で!」



 何も遮るものがない街道では、徐々に小さくなっていく二人の姿が長い間消えない。

 その後ろ姿をマイトラはいつまでも見送っていた。


 面白いほどにお似合いのコンビだと、心の中で苦笑しながら。





♦♢♦♢♦♢♦ アイヤール王国 MAP ♦♢♦♢♦♢♦

 

挿絵(By みてみん)


第三章 主要登場人物


シャスター

主人公。

圧倒的な魔力を持つ魔法使い(ウィザード)

火炎系魔法の最高峰、伝説のイオ魔法学院の後継者であり、「五芒星の後継者」の一人。

金色の髪と真紅の瞳を持つ容姿端麗な少年だが、性格に少々難(?)あり。



カリン

レーシング王国西領土にあったフェルド町の町長の孫娘。

真っ直ぐな性格で、責任感が強い。

フローレの魂眠(こんみん)を治す方法を探す為、シャスターと共に旅をしている。

神官見習いの経験があり、神聖魔法の使い手(ホーリー・ユーザー)でもある。

死者の森で、神官長アークスから「信力の核」を貰い受ける。



星華

シャスターと旅を続けている少女。

稀有な職業クラスである忍者、さらにその中でも「くノ一」の称号を持つ実力者であり、最上位マスター。

シャスターとは強い絆で結ばれた主従関係。基本、無口。



レーテル姫

アイヤール王国の王女。十二歳の若さだが、類稀な才能と年齢以上の思慮深さ持っている。

父王の死後、兄たちに疎まれ、辺境地に追いやられる。

その後、自ら国王になる決心をし、シャスターの援助もありアイヤール王国の新国王となる。



フォーゲン

レーテル姫の執事。元々は宰相だったが、ハルテ、ブレガに陥れられ、レーテル姫共々辺境地に追いやられる。

レーテル姫を国王にする為、シャスターたちと共に参戦する。



ハルテ国王

レーテル姫の母違いの長兄。父王の死後に国王を名乗ったが、それを認めない母違いの弟ブレガと内戦状態になる。



ブレガ

レーテル姫の母違いの次兄。長兄ハルテの国王を認めず、内戦を起こす。ナザールとは互いに利用し合う関係。



ナザール

ブレガ陣営の魔法使い(ウィザード)

超上級クラスの実力者であるが、自らを伝説のシーリス魔法学院の後継者と偽って名乗っていた為、本物の後継者ヴァルレインによって殺されてしまう。



ヴァルレイン

水氷系魔法の最高峰、伝説のシーリス魔法学院の本物の後継者。シャスターと同じく「五芒星の後継者」の一人。

自分の偽物が現れている噂を聞いて、アイヤール王国周辺を旅していた。

その道中で、レーシング王国に寄った際、魂眠(こんみん)に陥ってしまったフローレを氷の棺に閉じ込めて助けた。

また、困っているレーテル姫の為に、旱魃の土地に雨を降らせた。



エルシーネ

七大雄国(セフティマ・グラン)の一角、エースライン帝国の第二皇女。ペガサス騎士団の騎士団長。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


皆さま、いつも読んで頂き、ありがとうございます!


第三章「水と氷の旅人」編、これで終わりです。

読んで頂き、ありがとうございました。


第三章では「五芒星の後継者」のひとり、シーリス魔法学院の後継者ヴァルレインや、七大雄国(セフティマ・グラン)のエースライン帝国、その皇女でペガサス騎士団長のエルシーネなど、これから主要になってくるキャラクターを出してみました。


また、魔法・スキルレベルの仕組みや、強さを表す階級制など、この物語の基本的となる考え方もお話しさせて貰いました。


章の最終話なので、アイヤール王国の地図も掲載しますね。


それでは、次回から第四章が始まります!

もし良ければ、これからも読んでくださいね。

よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ