表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

189/810

第四十二話 勝利の確信

 炎と氷はぶつかり合いながらも、激しい勢で互いに押し合っている。


 互いのドラゴンと魔法陣の真下ではシャスターとヴァルレインは片手を天に向けていた。魔力を放出しているのだ。


 炎と氷は拮抗しているが、もしもどちらかの魔力が弱まった途端、一気にもう片方に押されてしまうだろう。



「なかなかやるじゃないか」


「褒められても嬉しくないね」


「そういうな。せっかくだ、最後にとっておきを見せてあげよう」


「別に見たくないけど」


 本気で嫌そうな顔をしているシャスターにヴァルレインは苦笑した。


「これから高位氷界の閃光ディネース・ハイ・ヴェガスの魔法陣の中に、幻氷の竜(アシャルナ・ドラゴン)を投入する。どういうことか分かるか?」


「どういうこと?」


 質問を質問で返したシャスターに、ヴァルレインは説明を始めた。


幻氷の竜(アシャルナ・ドラゴン)のエネルギーを使い、高位氷界の閃光ディネース・ハイ・ヴェガスを幻氷界に繋げる。すると、何倍にも威力を増した高位氷界の閃光ディネース・ハイ・ヴェガスを撃つことができる」


 そもそも幻氷の竜(アシャルナ・ドラゴン)高位氷界の閃光ディネース・ハイ・ヴェガスも聖人級の最上位魔法だ。

 そんなとてつもない魔法同士を掛け合わせることが、いかに難しいことであるのかは容易に想像がつく。



「その魔法、ヴァルレインが考えたの?」


「そうだ。この魔法は聖人級の水氷系最上位の魔法を掛け合わせた魔法だ。その分、威力は桁違いに凄まじい。直撃を受ければ、お前でも無事では済まないだろう。だから避けろ」


「いやだね」


「なんだと!?」


 ヴァルレインはシャスターを殺したいわけではない。だから忠告したのだが、本人が「いやだ」と言うのなら仕方がない。


「まぁ、お前なら大怪我をする程度で死ぬことはないか。幻氷界の閃冷光アシャルナ・ディネース・ヴェガス!」


 ヴァルレインが叫ぶと、幻氷の竜(アシャルナ・ドラゴン)が巨大な魔法陣に入っていき、消えた。



 直後、巨大魔法陣にさらに複雑な幾何学模様が何層も現れ、強烈な光を発して輝き始めた。


 そして、魔法陣からは細い一条の青白い光線が、地上にいるシャスターに向けて放たれた。

 見た目だけでいえば、ただの細い光線だ。今までの魔法に比べたら、派手さもないし迫力もない。

 しかし、その威力は今までの魔法攻撃の比ではなかった。


 危険を察知したシャスターは、間一髪で十数メートル後方に跳び避けたが、光線が当たった地面は瞬時に凍りついた。

 しかも、地面だけではない。空気までもが凍りついた。周辺一帯が巨大な氷の塊と化する。遥か上空まで空気が凍っている光景は、まるで天高くそびえる氷の塔のようだ。



「……さすがに直撃を受けたら危ないな」


 高密度の氷のエネルギーだ。シャスターといえども、この光に当たればただでは済まない。


 しかし、青白い光線はシャスターにさらに攻撃を続ける。

 体技にも優れているシャスターは避けてはいるが、このままだといつかは体力がなくなり直撃を受けてしまうだろう。


「避けるだけで精一杯のようだな。そろそろ負けを認める気になったか?」


「いやだね」


「まぁ、そうだろうな」


 光線が三本に増えた。ヴァルレインとしては一気に勝敗を決めるつもりだ。それを避けているシャスターの表情にも疲れが出始めてきた。



「最後だ」


 光線がさらに十本に増えた。

 これではシャスターといえども避けきれない。


 ヴァルレインは勝利を確信し、冷たく微笑んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ