表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

186/810

第三十九話 魔法使いの本分

 シャスターとヴァルレインは二人ともマグマの中に立っていた。


 唯一、ヴァルレインがシャスターと違うところは、ヴァルレインの周囲だけ青白く輝いていることだ。

 カリンの場所からは到底見えないが、青白い光の正体は氷の結晶だった。無数の氷の結晶が身体を守っているのだ。

 魔法の氷の結晶によって、ヴァルレインはマグマの中でも立っていられる。



炎地獄(プレゲトン)……なるほど、氷地獄(コキュートス)のお返しという訳か」


 高熱のマグマの中でも、ヴァルレインは汗一つ流すことなく冷静に分析をした。

 しかし、その後もマグマの勢いはさらに増していく。溢れ出したマグマが大きなうねりとなり、マグマの海が荒れ始めた。


 そして、ついにマグマの流れが大きな波となって、ヴァルレインに襲いかかってきた。

 巨大なマグマの波に飲み込まれれば、いくらヴァルレインでも無傷ではいられないはずだ。

 しかし、ヴァルレインは表情を変えることなく、ゆっくりと口を開いた。


冥氷河(アケロン)



 ヴァルレインの手から八面体の氷の塊が現れた。

 直径十センチ程の小さな塊は、手から離れて静かにマグマの中に落ちていく。


 そして、マグマの中に消えた瞬間、状況が一変した。


 氷の塊が落ちた場所から、急速にマグマが固まり始めたのだ。真っ赤に燃えながらドロドロと流れていたマグマは、黒く色を変えて岩の塊になっていく。

 それから瞬く間に、数百メートルに及んでいたマグマの海全てが固まった。

 二人の周囲は、溶岩の大地に変わってしまったのだ。



「さすがにマグマを固まらせるのが限界か。凍らせるまでは無理のようだな。あるいは、もう少し密度を高くすれば……」


 まるで実証実験でもしていたヴァルレインに対して、シャスターは苦笑した。


「相変わらず、魔法の研究がお好きのようで」


「それが魔法使い(ウィザード)としての本分だろう? お前のように剣技までも身に付けようとすると、このように魔法がいいかげんになる」


 ヴァルレインは固まったマグマを足で突きながら、嫌味を放つ。


「そもそも本来の炎地獄(プレゲトン)はもっと熱度が高く、俺の放った冥氷河(アケロン)では、固まらせることまでは困難のはずだ。お前が魔法に対して手を抜いてきた証拠だ」


「手厳しいな」


「事実だろう?」


 ヴァルレインは苦笑すると、改めてシャスターの前に対峙した。


「お前の実力はだいたい分かった。二年間修行を怠っていたこともだ」


「勝手に決めると後悔するよ」


「確かにそうだな。それでは、そろそろ終わりにしようか」



 すると、お互いの遥か上空に巨大な魔法陣が現れた。

 シャスターの真上には赤く輝く魔法陣、ヴァルレインの真上には青く輝く魔法陣が浮かぶ。不思議なことに、二つの魔法陣はとても似ている紋様だった。


「奇遇だな」


「まぁ、この魔法が六十台最強魔法だからね」



幻氷の竜(アシャルナ・ドラゴン)


幻炎の竜(ヴィレルナ・ドラゴン)


 二人が同時に叫ぶ。


 互いの魔法陣から、それぞれ異形の怪物が現れた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ