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第三十七話 英雄級の上

 カリンは視線を二人からフォーゲンに戻した。


「……説明を続けましょう。一系統しか魔法が覚えられないということは、魔法使い(ウィザード)の場合は、魔法使い(ウィザード)レベルと魔法レベルがイコールということです」


 魔法をスキルと考えれば、一系統しかスキルを持っていないということだから、スキルレベルと魔法使い(ウィザード)レベルは同じになるということだ。



「そして、もう一つ、魔法使い(ウィザード)の最も大切な要素、魔力の説明も致しましょう。魔法使い(ウィザード)は魔法を使うと、魔力を消費します。これは神聖魔法の使い手(ホーリー・ユーザー)である神官のカリン様にも分かりやすいと思います。神官は神聖魔法を使うと、信力を消費しますよね? 魔力と信力は同じ考え方なのです」


「なるほど」


 カリンは自身に当てはめて考えると理解ができた。


 信力とは、自身を媒体にして神々の能力を使う力だ。信力レベルが高ければ高いほど、神々の能力を多く、そして強く使うことができる。

 それが、神官が扱える神聖魔法なのだ。


「同様に、魔力とは魔法使い(ウィザード)の魔法を行使するための力のことです。そもそも、魔力がなければ、魔法を使うこともできません。つまり、魔力レベルは……」


「魔法レベルとイコールですね!」


 とっさに答えてしまったカリンに、フォーゲンは微笑んだ。


「そのとおりです。魔法使い(ウィザード)と魔法と魔力、この三つは同じレベルになるということです。これも神官と同じ考え方なので、カリンさんには分かりやすいと思います」


 フォーゲンの説明にカリンは大きく頷く。


 神官レベルも信力レベルとイコールなのだ。

 例えば、カリンはレーシング王国にいた時、神官レベル三がだったが、信力レベルも同じレベル三だった。


 魔力も信力もレベルが、職業レベルと同じという点では、魔法使い(ウィザード)も神官も共通しているようだ。



「魔法レベルに話を戻しますと、系統ごとに分かれている魔法は、十レベルごとに階級が上がっていきます。レベル一桁台が下級魔法、十台が中級魔法と呼びます。魔法レベルを上げることはとても難しく、ほとんどの魔法使い(ウィザード)は下級から中級までの魔法しか使えません。すなわち、多くの魔法使い(ウィザード)が、魔法使い(ウィザード)レベル一から十九までの者たちなのです」


 それで、一桁台の下級魔法を使う者を下級クラスの魔法使い(ウィザード)、十台の中級魔法を使う者を中級クラスの魔法使い(ウィザード)と分けて呼ぶのか。

 カリンはやっと理解できた。


 それにしても、とカリンは思う。

 レーシング王国で絶対的な魔法の力を誇示していたオイト国王でさえも、魔法使い(ウィザード)レベルでいえば下級クラスの魔法使い(ウィザード)なのだ。



 さらにフォーゲンの話を続ける。


「中級クラス以上についてもお話ししましょう。絶対数が少ない魔法使い(ウィザード)の中にあって、さらにごく少数しかいない二十台以上の上位の階級も存在します。魔法レベル二十台が上級、レベル三十台になると超上級と呼ばれ、この階級の魔法使い(ウィザード)が一人いるだけで、小さな戦争程度なら戦況を左右すると言われています」


 先ほどのナザールは偽者だったが、確かにシャスターが現れるまで、この戦いの戦況を支配していた。

 シャスターがいなければ、ハルテ国王陣営は容易に敗北していただろう。

 シャスターとヴァルレインにあっけなく敗北したナザールだったが、一般的には稀有な実力を持った強力な魔法使い(ウィザード)だったということだ。



「そして、さらにその上をいくのがレベル四十台の魔法を扱える勇者級、レベル五十台の魔法を扱える英雄級なのです。勇者級、英雄級はそれこそ、大陸中に点在する高難易のダンジョンの攻略や、レアクラスの魔物を討伐するほどの実力者、一個人の力が一国の戦力と同等であると聞いています」


 つまり、桁違いの破壊力を持つ魔法を扱えるのが勇者級、英雄級ということなのだ。


「残念ながら、私も勇者級や英雄級についてはそれ以上詳しくは知りません。なぜなら勇者級以上のクラスが書かれた魔法についての書物はほとんど存在しないからです」


 レベル三十台の超上級までなら、一般に発行されている魔法に関する書物に、魔法の種類や効果などが書かれている。

 しかし、それ以上のクラスになると、そもそも勇者級に到達する者が殆どいない為、一般的な書物には載っていない。

 だからこそ、レーテル姫が領地の城で、雨を降らせた魔法を書物でいくら調べても見つからなかったのだ。



「それほど、勇者級以上の魔法使い(ウィザード)は特別なのです」


 カリンは知らぬ間に、額から汗を流していた。

 シャスターが伝説のイオ魔法学院の後継者ということは何度も聞いていたし、実際にシャスターの魔法を何度も目の当たりにしてきたが、魔法レベルを知ったことでより、鮮明にシャスターの凄さを実感したからであった。


 カリンはもう一度、戦っている二人に視線を向けた。

 今の二人はレベル四十台、つまり勇者級の魔法を撃ち合っている。先ほどのフォーゲンの解説に当てはめれば、一国の戦力と同等の魔法、それほどの高魔法を互いに撃ち合えば、普通に考えて無事であるはずがない。


 しかし、シャスターとヴァルレインが無傷であることは、誰の目にも明らかだった。


 そこでようやく、カリンはレーテル姫の表情が青ざめている理由が分かった。常識を超えている戦いにレーテル姫の表情が青ざめているのは当然だった。



「あの……その、勇者級や英雄級の上……五十台以上の魔法ってあるのですか?」


 カリンがおそるおそるフォーゲンに尋ねる。

 先ほどのヴァルレインの言葉が、引っかかっていたからだ。「これでは五十台でも同じだろうな」と。


 それが意味することは、それ以上のレベルの魔法を扱えるということではないのだろうか。


 しかし、それ以上の魔法とはいったい……。



「六十台の魔法が存在する噂はあります。しかし、本当かどうか分かりません。なぜなら、四十台の勇者級、五十台の英雄級でさえ、人間の領域を超えているのです。さらにその上のレベルとなると……」


 フォーゲンは一旦言葉を止めて、頭を横に振った。


「人間の領域を超えた、さらにそれ以上先の領域……そんな魔法が存在するとすれば、それはもう神の領域なのかもしれません」



 しかし、それから数分後、カリンたちは神の領域の魔法を見ることになるのだった。


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