第七十四話 眩しい森 &(登場人物紹介、MAP)
「これで良かったのかな?」
森の中の街道を馬で進みながら、カリンはシャスターに尋ねた。王都エアトを去ってから三日が経っている。
森の中はすでに禍々しい雰囲気が消えていた。
魔女が死んだことで、全てのアンデッドは消えさっていた。それに魔力の木を媒介に増えていた木々は全て枯れてしまい、本来の木々だけが森を形成していた。
森の中を歩いていても太陽の光が眩しい。
「良かったのかどうかは分からない。でも、みんながそれぞれできることを精一杯した結果だ。それで充分じゃないかな」
「うん、そうだね」
カリンは納得した。
確かにエミリナ女王もガイムもアークスも、そして魔女ディネスも、全員が大満足できることなどないのだ。
それぞれが正しいと思っていたこと、考えていたこと、やらなければならないと思っていたことは違っていたし、違っていて当然だったからだ。
だからこそ、その中で少しでもより良いと思う方向にそれぞれが互いに進むことができたのなら、それで充分なのだろう。
それに、少なくとも森は生き返った。
これからは生命に満ち溢れる森になっていくはずだ。
五百年前のように。
「魂眠についても情報を得ることができたしね」
アークスが魂の研究に参考にしていた古い文献は、エースライン帝国からのものだった。
つまり、エースライン帝国に行けば、何かしら情報が得られる可能性が高い。
エースライン帝国はこの森の北にそびえるゲンマーク山脈の向こう側だ。
シャスターは森を抜けた先にあるアイヤール王国から、エースライン帝国に向かうことにした。
「そろそろ森を抜けるようね」
先の方を見ると森が大きく開けている。そこで森は終わりなのだろう。
カリンは馬を駆け出し、森の外に出た。
一段と太陽の光が眩しい。
それからカリンは馬の方向を反転させて、森に向けて大きく手を振った。
「エミリア女王ー! ガイムさーん! それにアークス! みんなに会えて本当に良かった。ありがとうー!」
カリンの声は森の奥まで響いた。
空はどこまでも青く澄んでいる。
三人は再び街道を歩み始めた。
♦♢♦♢♦♢♦ 死者の森 MAP ♦♢♦♢♦♢♦
第二章 主要登場人物
シャスター
主人公。
圧倒的な魔力を持つ魔法使い。
火炎系魔法の最高峰、伝説のイオ魔法学院の後継者であり、「五芒星の後継者」の一人。
金色の髪と真紅の瞳を持つ容姿端麗な少年だが、性格に少々難(?)あり。
カリン
レーシング王国西領土にあったフェルド町の町長の孫娘。
真っ直ぐな性格で、責任感が強い。
フローレの魂眠を治す方法を探す為、シャスターと共に旅をしている。
神官見習いの経験があり、神聖魔法の使い手でもある。
死者の森で、神官長アークスから「信力の核」を貰い受ける。
星華
シャスターと旅を続けている少女。
稀有な職業クラスである忍者、さらにその中でも「くノ一」の称号を持つ実力者であり、最上位マスター。
シャスターとは強い絆で結ばれた主従関係。基本、無口。
ガイム
シュトラ王国騎士団の団長。ゴースト。
シャスターたちにエミリナ女王を助けてもらう為、二人を王都に連れて行くが、途中の秘密の洞窟の中で、裏切り者のルク、ムントたちの騙し討ちにあい消滅。
エミリナ女王
シュトラ王国の最後の女王。
百年前、魔女ディネスによって身体を奪われてしまう。
アークス
シュトラ王国の神官長。若くして神官長になった天才。
百年前、エミリナ女王を助ける為、裏切り者の汚名を受けることになる。
その後、魔女ディネスに乗っ取られたエミリナ女王に忠誠を誓いながらも、死者の森の拡大を防いでいた。
魔女ディネス
シュトラ王国建国時、森に住んでいた魔女。死霊使い。
シュトラ王国、初代国王ジギスの側近ホラトの騙し討ちによって家族を殺されてから、シュトラ王国と戦争を続ける。
敗北後、処刑され頭部を封印されるが、エミリナ女王を使って封印を解き、エミリナ女王の身体を乗っ取ってしまう。
ルク、ムント
シュトラ王国騎士団の分団長たち。ゴーストになった後、ガイムたちを裏切り、アークスの部下となる。
●百年前
レアス
シュトラ王国騎士団の副団長。ガイムの忠実な部下。
ゴーストとなり、ガイムたちと行動を共にするが、ルク、ムントたちの裏切りにあい消滅。
フート
シュトラ騎士団の分団長の一人。
ゴーストとなるが、レアスと同様、裏切りにあい消滅。
ナバス
シュトラ王国宮廷魔術師。ゴーストとなり、ガイムたちと行動を共にするが、裏切りにあい消滅。
●五百年前
ジギス王
シュトラ王国の初代国王。
シュトラの部族を一つにまとめた部族王。
魔女の住んでいる森を友好的に譲り受けようとしていたが、重臣ホラトの非道な策略により、魔女と戦うことになる。
テオス
ジギス王の側近。親衛隊長からシュトラ騎士団の騎士団長になる。
魔女との真実を代々の騎士団長に口伝することになる。
ホラト
いくつものシュトラ部族を束ねてきた旧体制の実力者。
ジギス王の重臣になってからも度々異論を唱えて、ジギス王の施策に反対をしてきた。
魔女との友好関係についても大反対をし、勝手に魔女の家族を殺してしまう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
皆さま、いつも読んで頂き、ありがとうございます!
第二章「死者の森」が終わりました。
第二章は、全体的に暗く悲しいお話でした。
(最後も決してハッピーエンドではなかったですし)
でも、皆さまに楽しんでもらえたら嬉しいです。
さて、いよいよ第三章が始まります。
第三章は暗くはならないと思いますので(多分……)、これからも良かったら読んでくださいね。
第二章、読んで頂き、ありがとうございました!




