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第六十六話 再び廃墟へ  &(登場人物紹介)

「大丈夫か? カリン」


 遠くの方から自分を呼ぶ声がする。


 意識が戻ったカリンは、その声の方に向かって意識を集中すると、突然視界が開けた。



「やっと目覚めた」


 目の前にはシャスターがいた。



「……ここはどこ?」


 まだ記憶がぼんやりしているカリンは、ゆっくり起き上がると辺りを見渡した。



「……シュトラ王国……じゃないのね」


「シュトラ王国の廃墟跡さ」


 シャスターの答えに、カリンはやっと状況が飲み込めてきた。



「私は意識を失っていたの?」


「うん。突然倒れてね」


「どのくらいの時間?」


「二、三分ぐらいかな」


 思っていたよりもかなり短い時間だった。

 エミリナ女王の八歳、十八歳、二十歳の時間を見てきたのだ。カリンの感覚では十数時間は過ごしてきたと思っていたのだが、夢ならば時間の流れが違っても不思議ではない。


 いや、夢ではない。


 夢のような出来事であったが、決して夢ではないとカリンは断言できた。


「あのね、私、エミリナ女王の過去を見てきたの」


「そうか」


 意外な返答にカリンは驚いた。

 普通なら、それこそ「夢でも見たのだろう」と一蹴されて当然だからだ。


「馬鹿にしないの?」


「何で?」


「だって、突拍子もないことを話していると自分でも思うから」


「でも、カリンはエミリナ女王の過去を見てきたのだろう?」


「うん」


「それなら、そういうことだろう」


 この少年は自分の言葉を信じてくれているのだ。


「それで、過去に行ってみてどうだった?」


 シャスターは興味津々の様子だった。

 星華も表情は変わらずのままだが、シャスターの後ろで聞く姿勢をとっている。それだけでカリンは嬉しかった。


「それじゃ、話すね」


 カリンはエミリナ女王の過去について話し始めた。




「なるほど、そういうことだったのか」


 カリンの話を聞き終えたシャスターは、納得した様子で大きく頷いた。


「本当に私の話を信じるの?」


 自分で話しておきながら、カリンは少し不安になった。シャスターが全く疑うこともなく、全面的にカリンの話を信じているからだ。

 しかし、それに対してのシャスターの反応は意外過ぎるほど簡単なものだった。


「うん、信じる」


「なぜ、そこまで言い切れるの?」


 自分の話を信じて欲しいことと矛盾した質問しているのを承知の上で、カリンはシャスターに尋ねたが、シャスターに促されて代わりに星華が答えた。


「カリンさんの経験と似たような話は、古今東西多くあります」


「えっ、そうなの!?」


 驚くカリンに星華は頷いた。


「特殊な魔法や術、あるいはマジックアイテムを使って他人に過去を見せることはできます。おそらくカリンさんもその類の方法で、エミリナ女王の過去を見せられたのだと思います。カリンさんが本当に過去に行ったわけではありません」


「でも、八歳のエミリナ女王の時は、私は自分の意思で話したり動いたりできたのよ」


 過去を見るだけなら、そんなことはできないはずだ。


「それはエミリナ女王の過去の記憶の中で、カリンが行動していたということさ」


「そんなことが?」


「できるのさ。たまに、そのような特殊な能力を持つ者も存在する」


「……そうなんだ」


 カリンは、シャスターと星華の言葉を信じることにした。

 二人の方がカリンよりも比べ物にならない程知識量が多い。その二人が断言するのだ、それが事実なのだろう。

 ただ、そうなるとカリンに過去を見せた人物は、一人しか思い当たらない。


「それじゃ、私に過去を見せたのは……」



「エミリナ女王自身さ」


 シャスターは笑いながら断言した。


第二章

これまでの主要な登場人物


シャスター

伝説の魔法学院、火炎系魔法の最高峰であるイオ魔法学院の後継者。

魂眠(こんみん)に陥ってしまったフローレを治す方法を探すため、カリンと一緒に「死者の森」に赴いた。

ガイムを失った後、カリンと二人で王都エアトに向かい、王宮でアークス、エミリナ女王と対峙する。

その後ボーンドラゴンを倒し、アークスからエミリナ女王の真実を聞き、女王のもとへと向かう。



カリン

神聖魔法の使い手(ホーリーユーザー)であり、簡単な神聖魔法を使うことができる。

魂眠(こんみん)に陥ったフローレを治す方法を探す為、シャスターと共に旅に出た。

シュトラ王国の王都エアトで、死に際のアークスから「信力の核」を受け取ったカリンだったが、その後意識を失ってしまい、百年前のシュトラ王国の真実を体験する。

エミリナ女王、ガイム、アークスそれぞれの強い絆を知ったカリンは、シャスターに真実を話し女王のもとへと向かう。



星華

シャスターの守護者(ガーディアン)

稀有な職業「忍者」、その中でも上忍しか名乗ることが許されない「くノ一」の称号を持つ。

「死者の森」が急速に拡大する原因となったマジックアイテム「魔力の木」を全て切り倒し、シャスターたちと合流した。



ガイム

「死者の森」に以前あったシュトラ王国の騎士団長。

百年前、神官長アークスが反逆を起こし、エミリナ女王を監禁したが、その時アークスが王国全土にばら撒いた「アンデッドになる薬」により、ゴーストになってしまった。

百年もの間、エミリナ女王を助けるべく模索していた。

シャスターと共に女王を助けるべく王都へ向かう途中、エミリナ女王とガイムしか知らないはずの秘密の洞窟通路で、裏切り者のルク、ムントたちの襲撃に会い、志半ばで消滅してしまった。



アークス

シュトラ王国神官長。若くして神官長になった天才。

百年前、単独で反乱を起こしてエミリナ女王を監禁し、王国全土をアンデッドの徘徊する「死者の森」へと変貌させた張本人だと思われていたが、実際には命が尽きようとしていたエミリナ女王を自由にさせるためであった。

また国民をアンデッドにして、「死者の森」に変えたのは、女王の身体を乗っ取った魔女であった。

シャスターに敗れた後、女王の正体が魔女ディネスであると話した為、呪いにより殺されてしまう。

死ぬ間際、カリンに「信力の核」を渡した。



エミリナ女王

シュトラ王国の若き女王。

百年前、魔女の呪いによって自分が早死にすることを知る。

同じくエミリナが早死にすることを知ったアークスは裏切り者の汚名を着て孤軍奮闘をするが、それも虚しくエミリナは魔女によって身体を奪われてしまう。



魔女

名はディネス。

シュトラ王国建国時、初代国王ジギスと森の覇権を争い戦争をしていた。

戦いは国王軍の勝利となり、魔女は殺されてしまう。

殺された後も魔女の呪詛が強かったため、国王は魔女の頭だけを壺に封印し王宮奥に隠していた。

しかし、封印の効力が弱まってきた百年前、魔女はエミリナ女王を使って封印を解かせてしまう。

その後は、エミリナ女王の身体を乗っ取り、百年もの間、「死者の森」を支配している。




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