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第三十三話 廃墟の王都

 案内役はスケルトンの騎士たちがしてくれる。

 二人はただついて行くだけで良かった。


 途中アンデッドが現れることもなく、順調に進んでいたシャスターたちは、すぐに王都にたどり着いた。



「これがシュトラ王国の王都エアトね」


 王都は森が切り開けた場所に建っていた。見上げるほど高い壁で囲まれており、唯一の入口は街道に繋がっているこの門だけのようだった。

 ただ、門は開かれたままの状態なので中に入ることができる。


「スケルトンの騎士さんたち、ここまでありがとう!」


 カリンは道案内をしてくれたスケルトンの騎士たちに丁寧に頭を下げた。

 彼らが案内をしてくれたからこそ、王都エアトにたどり着いたのだ。

 カリンの言葉の意味が通じているのかどうかは分からないが、スケルトンの騎士たちはそのまま元の道へ戻っていった。



「それじゃ、入ろうか」


「う、うん」


 カリンは少しだけ躊躇したが、入らなければエミリナ女王を助け出すことはできない。怖い気持ちを押しのけて門をくぐる。

 すると、そこには広大な城下町が広がっており、その奥には一際高くそびえる城が見えた。


「なんとなく、レーシング王国の王都バウムに似ている感じがするわ」


「近隣国だから、王都の造りが似ているのさ」


 二人は感想を述べあったが、ひとつ大きく違う点があった。


 それは、長い年月放置してきたせいか、あるいはこの森の繁殖力のせいか、王都の至るところで巨大な木々が生茂っているのだ。

 つるに巻かれた建物を眺めながら二人は馬を進める。


 この死者の森で見てきた町や村と同様に、建物は廃墟化していて半壊や全壊しているものも多い。

 廃墟化した広大な王都……それだけでも不気味なのに、静まり返った森がさらに拍車を掛ける。


「これも魔力の木のせいなの?」


「おそらくはね」


 廃墟になった都市とはいえ、普通なら百年ほどでここまで森に覆われることはない。

 二人は通りまで伸びている巨大なツルを避けながら王都の中へと進んでいく。すると、しばらくして一際広い場所に出た。


「ここは中央広場!」


 カリンには見覚えがあった。無論、直接見たわけではない。ガイムが見せてくれた映像の中の光景で見たのだ。

 確かレアス副騎士団長が守備していた場所だ。広場は石畳みが崩れていて、各所から木々が生えている。

 映像で見た美しい光景とは程遠いが、それでもここが中央広場だと分かったのは、広場の真ん中に時計台がそびえ建っていたからだ。


 石造りの時計台は四角形の塔の形だ。天辺付近の壁に丸く大きな時計が付けられていた。もちろん時計の針は止まっている。



 二人は時計台の前まで来ると、少し休憩するために近くのベンチに座った。

 シャスターはぐるっと辺りを見渡す。

 この広場を中心に東西南北に大きな通りが延びている。二人が来たのは後方の道だ。つまり前方の道を進めば王城にたどり着く。実際二人の目の前の先には王城が見えていた。


「このまま真っ直ぐに進めば、着くのね」


「そうだね」


 ただ、シャスターは気を抜いてはいなかった。

 中央広場は木々が生い茂ってはいるが、大きな広場だけあって視界が悪くない。しかし、逆に考えれば周りからも二人の姿は丸見えだからだ。


「なんかさー、そろそろ出てきそうな雰囲気だよね」


「ばかなこと言わないでよ!」


 ブルっと震えたカリンを見て、シャスターが笑う。


「この森で多くのアンデッドを見てきたから、今さら怖がることないでしょ? エミリナ姫を見た時も驚いていなかったし」


「それでも、こんな薄気味悪い場所からたくさんのアンデッドが急に現れたら怖いでしょ」


 確か王都には十万の民がいたはずだ。その十万が全てアンデッドになっていると想像しただけで、おぞましい。



「十万のアンデッドの大群か……見てみたいものだよね」


「見たくない!」


 カリンがとっさに叫ぶ。

 すると、思いのほか声が大きかったようで、カリンの叫び声が静寂な王都に響き渡る。


「あっ……」


 カリンは口を塞いだが、すでに遅かった。


「あぁー、大声を出すなんて。何が起こるか分からないよ」


「だって、シャスターが……」


「ひとのせいにする?」


 意地悪く笑ったシャスターだが、本気で嫌味を言っているわけではない。困っているカリンを見て笑いを収めた。


「まぁ、あの程度じゃ大丈……」


 言い終わらないうちに二人の前方から激しい物音が聞こえてきた。


 その音はどんどん大きくなっていく。



「な、な、何かな?」


「さぁ」


 と応えながらも、シャスターにはおおよその予想はついていた。

 ただし、最悪な予想だ。


 そして、それはすぐに現実のものとなった。


 目の前に白い大群が現れたのだ



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