第二十八 信頼の仲間
秘密の通路を戻ってランゲンに戻った二人は、洞窟の大広間でスケルトンの騎士たちに出会った。彼らはここでガイムの帰りを待っていたのだ。
「ガイムさんを守れなくてごめんなさい」
カリンは彼らに謝ったが、そもそもカリンの話を理解できているのか分からない。
しかし、彼らが二人の前から離れていく姿を見る限り、ガイムがいなくなったことは分かったのだろう。
彼らはいつの間にか、洞窟内からいなくなっていた。
「俺たちも早くここから出よう」
シャスターとカリンは、そのまま王都エアトに向かうことにした。
もう夕暮れ時だ。ランゲンで一泊しても良かったのだが、アークスは二人がランゲンにいることを知っている。
追手を差し向けている可能性もある以上、早くランゲンを出た方が良いと判断したのだ。
二人は馬に乗り込むと、森の小道を北に向かって進むことにした。
王都から南下したところにランゲンはある。つまり、北上すれば王都にたどり着くはずだ。
しかし、北に進む道は狭く、木々が生い茂っている。さらに道が正しいのかさえも分からない状況だ。
それでも、進まないわけにはいかない。
先頭をシャスター、後方をカリンで道なき道を二人は進んでいた。
「シャスター、後ろを見て!」
ランゲンを出発してしばらくして、カリンが驚きの声を上げる。後ろを振り向いたシャスターも意外な光景に驚いた。
スケルトンの騎士たちが後をつけていたのだ。
「彼らもガイムさんの敵討ちをしたいのかな?」
「そうかもしれないね」
騎士たちはガイムと強い信頼関係で結ばれていた。
だからこそ、たとえ自我がなくとも、自分たちの上官であったガイムの意思を引き継ごうとしているのかもしれない。
「ガイムさん、良い仲間に恵まれていたんだね」
カリンは微笑みながら立ち止まる。
「騎士の皆さん、私たちがガイムさんの意思を引き継ぐわ! アークスを倒して必ずエミリナ女王を救い出すから、安心して」
カリンは大声で騎士たちに向けて叫んだ。
もちろん、自我のないスケルトンたちが理解できているとは思わない。しかし、カリンは伝えずにはいられなかったのだ。
すると、二人に追いついたスケルトンの騎士のひとりが、シャスターの前に出てそのまま進み出す。
「もしかして……ついてこい、と言っているのかな?」
驚くカリンにシャスターはうなずく。
スケルトンが自ら先導するなど、あり得ないことだった。
しかし、目の前では現実にスケルトンが進み始めている。
「ついて行こうか」
騎士たちは二人を王都まで道案内してくれるようだった。
他の騎士たちも二人の後ろをついて来る。護衛してくれているのだ。
「みなさん、ありがとう!」
カリンは頭を下げた。
スケルトンの騎士たちには自我がないとはいえ、確かにガイムは独りぼっちではなかったのだ。
二人はそのことを改めて確信した。
「それじゃ行こうか」
二人は温かい気持ちで、暗闇に覆われていく森の中をスケルトンの騎士たちと共に進み始めた。




