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5. 心の中ではいつまでもお姉様ですわ


「ヴィオレット、お久しぶりね。」

「フォスティーヌ夫人、ご無沙汰しております。本日はお招きいただき、ありがどうございます。」


 ラングレー会長と別れ、ホウッと息を吐いた時、このサロンを開かれたフォスティーヌ公爵夫人がお声をかけてくださいました。


 フォスティーヌ夫人、私の母マリーズと私の婚約者であるフェルナンド様のお父君レオナール辺境伯様の三人は幼馴染なのです。


 一番年長のレオナール様、母より少しばかり年上のフォスティーヌ様、そして母マリーズはまるで兄弟姉妹のように過ごされていたと伺っております。


 私が産まれてからも、母が亡くなるまではフォスティーヌ夫人のご実家の邸に度々皆で集まっておりました。


「嫌だわ。昔のようにフォスティーヌ姉様と呼んでくれないの?」

「フォスティーヌ夫人は今やモンジュ公爵夫人ですもの。伯爵令嬢の私がそのような呼び方をしていては、夫人が周りに侮られてしまいますわ。」

「ヴィオレットは昔から本当に良い子ちゃんなんだから。そういうところマリーズにそっくりね。」


 フォスティーヌ夫人は美しい形の眉を下げ、少し寂しそうなお顔をされましたけれど、いくら昔からの知り合いとは言え、自分の立場は弁えなくてはなりませんもの。


「ヴィオレット、噂は予々聞いているわ。フェルナンド・ブルレック辺境伯令息との関係はどうなの?婚約者であるはずの貴女が冷遇されていると聞いて、心配していたのよ。」


 いつまでも若々しく社交会の華と言われる美貌のフォスティーヌ夫人は、私の方をじっと見つめてお口を開かれました。


「私のことでフォスティーヌ夫人にまでご心配をおかけしてしまっていたなんて。痛み入ります。」

「二人の婚約が、貴女の母マリーズが生きていた頃にブルレック辺境伯との約束であることも、貴女が辺境伯家に()()()()()()()()()()()()も私は知っているから。私だってこの婚約の重要さは理解できるけれど、貴女自身を犠牲にしてまで守らないといけない約束なのかしら?」

「フォスティーヌ夫人のお気持ちはとても嬉しく思いますわ。でも、今は亡きお母様と幼馴染である辺境伯様との約束ですし。それにこの婚約は我が国の為でもあります。私の勝手で破るわけにはいけませんもの。」


 お優しいフォスティーヌ夫人に微笑みを返してから、私は努めて明るい声で返事をいたしました。


「分かったわ。ヴィオレットは本当に真面目で優しいから、私が言葉で何を言っても無駄ね。何か本当に困ったことがあったら私に相談するのよ?いいわね?」


 亡くなったお母様とまるで姉妹のように仲が良かったというフォスティーヌ夫人は、母を亡くした私にとって母のようであり、本当にお姉様のような方ですわ。


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