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アンスール・カデンツィア  作者: 借屍還魂
幼少期編
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21.宝物の行方

 鎧の金属音を響かせてダンスホールに入ってきた騎士たちは、鉱石カラスが飛び立っていくのを見かけて急いで向かってくれたらしい。

「誰か怪我はしていませんか」

 代表して声をかけてきたのはロバートだった。怪我人がいないことを確認すると、ロバートは次々に指示を出し、騎士たちが走っていった。

「……どこに伝令を行かせたんですか?」

 既に騎士たちが駆け付け、怪我人もおらず魔物もいないというのに、騎士団は引き上げるでもなく更に伝令に走っていったように見える。

 この場には王子も今はいない。ある程度地位があるとはいえ、あくまで候補の子供たち相手に人員を割くものだろうか。

「フタバ殿は、察しがいいですね。伝令先は、国王、宰相、騎士団長、魔導士長の所です」

「えっと、それって」

「この国の最高権力者たちのところ、ですね」

 ランシー侯爵令嬢が補足説明してくれたが、つまり、何か大事になっているということである。だって、誰か一人が出てくるだけでもその事件は大問題だろうが、全員が事態の収束にあたっているのである。

 ロバートの指示に従い、全員この場で待機することになった。周りを騎士団に囲まれているので正直落ち着かない。


「すまない、私達がいない間に…」

 王子とアイリーン嬢が走って戻ってきた。王子は少し息を切らしているだけだが、必死でついてきたであろうアイリーン嬢は息も絶え絶えになっていた。

「大丈夫です、殿下」

「誰も怪我をしていないので、安心してください」

 年長者二人が口々に言うと、王子は少し安心したようでふう、と息を吐いた。自身の用事の所為で監督役がいなかった結果怪我人が出たりしたら。責任感があまり強くない俺でも流石に凹む。王子だったらなおさらだろう。

「それで、用事は終わりました?」

 サティが尋ねると、王子は難しい顔をし、アイリーン嬢は顔を青くした。

「それが、殿下のペンダントが、盗まれたのです…」

「ペンダント?」

「今日は部屋に置いてきたのだけど、どうやら盗まれたようで…」

 王子たちが呼び出された理由は、ペンダントを持ち出したかどうかの確認だったらしい。ただの装飾品ならば盗人を捕まえて罰したら終わりだが、そのペンダントは珍しい水晶でできているそうだ。

「母上から頂いたものだから、私にとっても大切なものなんだ」

「今、かなりの人数が犯人を捜しているのですけれど、一向に見つからないのです」

 この場から指示を受けて離れていった騎士だけでも十人は超えているはずだ。最初からホールに来ていない騎士も当然いるだろうから、捜索に参加している人数は相当多い。

 人数が多ければ多いほど、誰かに見つかる可能性も上がるが、王子たちが呼び出されてからシャンデリアの落下までダンスを5曲は踊ったし、鉱石カラスが飛び立ってからもそれなりの時間が経っている。

 王子たちが呼び出されたときには、捜索は始まっていただろうからこの時間まで見つからないとなると、よほど見つけられないような何かがあるんじゃないだろうか。

「カドガン侯爵は領地にいるから、呼び出しても三日はかかる」

 それを聞いてユーリスは頭を抱えた。というか、なんでいま父上の名前が出てくるのだろうか。

「何故社交シーズンに領地に戻っているんですか…?」

「一週間程大雨が降って、住民からの要請で地盤の確認に向かったそうだ」

 そういえば、昨日の夜貰った家からの手紙にもそんなことが書いてあった気がする。しばらく王都から離れるから、何かあったらホーソーン伯爵を頼れと指示があった。

「それは困ったね」

「侯爵がいないと犯人見つからないかもな」

 サティとマーカスも口々に言う。だから、なんで父上と見つからない窃盗犯が関係あるのか教えてほしい。

「いや、フタバがいれば何とかなるかもしれない」

 挙句の果てにはニールは訳が分からないことを言い始めた。さっきから一体何なんだろうか。完全に置いてけぼりを食らっているので腹が立ってくる。

「さっきから、何の話してんの?」

「……フタバ、隠密魔法使えるだろう」

「へ?」

「だから、姿を消したりする魔法」

「いや、魔法一個も覚えてないよ」

「さっき、鉱石カラスから意識を逸らした時も使ってただろ」

「あれ、魔法だったの?気配を消す技術だと思ってたんだけど」

 旭は納得したような顔をし、ミフネ嬢とサナエ嬢は不思議そうな顔をし、ニールは呆れた顔をし、王子とユーリスは真剣に考え込むような顔、マーカスは期待に満ち溢れた目をした。

「カドガン侯爵家は隠密魔法を得意としているんだ」

「だから、相手が姿を消している時、同じ魔法で打ち消せるカドガン侯爵は見つけられる」

「なるほど、つまり、俺なら犯人が見つけられるってこと?」

「そうだ」

 隠れるだけではなく、隠れている人も見えるようになるのはすごい。逆に、俺が隠れていても父上には見つかるということか。

「もしかして、父上がいない時期を見計らって盗んだ…」

「その可能性はあるね」

 つい口から出た言葉だったが、その場の殆どが頷いた。まずい、とても嫌な予感がしてきた。

「犯人にばれる前に、私達で捕まえようか」

「悪は倒す!」

「フタバのことは想定外だろうしね」

 王子はにっこりと宣言した。


 みんな、王子の意見に賛成するのは良いけれど、一番大変な役割の俺の意見を聞かずに決定するのは、どうかと思う。


次回更新は6月26日17時予定です。

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