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大人への階段


 しばらくおかしかったヴィサだけど、数日すると元に戻っていた。


「今日から中級の魔法を教える」


 魔法には六つあって、炎を操る火系、水を操る水系、土を操る土系、風を操る風系、光を生み出したり回復させたりする光系、記憶を奪ったり眠らせたりする闇系の5種類ある。

普通の人は全種類の魔法を使えることができないらしいんだけど、私は才能があったらしく、全種類の魔法が使えるみたい。

 今までは初級の魔法、例えば火を起こすとか、水を生み出すとか、小さいことしか教えてもらえなかったんだけど、どうやら今日からその上の中級を教えてくれるみたい。

嬉しい反面、その分破壊力が増す……ヴィサを殺す手段が増えるということで複雑だ。


「まずは火な」


 ヴィサくらいの魔法使いになると、詠唱どころか杖さえ必要ないみたいで、彼は簡単に炎を生み出した。


「これを対象に向かって放つ」


 ヴィサは手のひらを大きな岩に向ける。すると炎はまっすぐ飛んで行って、岩にぶつかるとはじけた。


「ほら、やってみな。岩を俺だと思え」

「思ったら攻撃できないよ」


 ヴィサは本当に私の気持ちがわからないみたいで、頭にくる。


「アンネはそうだろうな」


 だけど今日の切り返しはいつもと違って、ヴィサを見てしまった。


「どういう意味?」

「なんでもない。じゃあ、岩のことをうーん、あのくそ院長だと思え。ならいいだろう?」

「それならやれそう!」


 あの院長は私がいなくなった後も懲りずに手を出してみたいだから、焼き殺してもいい存在。すでに捕まってるからこれ以上のことはしないけど。


「フレイア!」


 杖を右手に持ち、呪文を唱える。

 現れた炎に意識を向けて、杖の先を岩に向けた。


「やった!」


 小さな炎は岩へ一直進して、そのままぶつかって岩を焦がす。

 岩じゃなくて他の対象なら着火して燃やしてしまっただろう。

 ふと、ヴィサを攻撃するイメージを浮かべ、胸が苦しくなった。

 炎はだめ、絶対。痛いに決まってる。

 ……何考えているの?私はヴィサを殺すつもりなの?


「アンネ?」


 黙ってしまった私にヴィサが声をかける。

 長い黒髪、黒い瞳、日に焼けていない白い肌。

 とても美しい顔。

 初めて見た時、私と同じ肌の色だと思ったけど、そんなことはなかった。

 ヴィサは私と違って美しい。

 

「どうかしたか?」

「なんでも、火の魔法の中級ってこんなもの?もっとあるんだよね?」

「ああ。さっきのは初級の応用編だ。でもお前ならすぐ中級覚えて上級まで行きそうだな」

「あったり前だもん。私はヴィサの一番弟子なんだから」

「一番弟子か。面白い事言うな」

「私もマスターって呼ぼうかな。ゴブちゃんみたいに」

「好きにしろ」

「やめた。私はやっぱり名前を呼びたい」

「俺はどっちも構わないぞ」


 ヴィサは本当のどうでもいいみたいに投げやりに答える。

 それから、彼は私に中級の火の魔法を教えてくれた。


 


 翌朝まだ日が昇る前、気持ち悪さに目覚めるとベッドの寝具が真っ赤に染まっていた。

 どこにも傷がなくて、ただ下半身がだるくて、私は生理がきたことを知った。孤児院にいた頃、私より少し上の女の子たちが部屋から出てこないことがあって、聞いてみたら教えてくれた。

女の子にしか起きない、将来子供を産むための準備だって言っていた。

匂いとかとても気持ち悪くて、私は古着を探して下半身を巻き付けると、気づかれないように家の外に出た。そうして汚れた寝具を洗い流す。

 下半身は鈍い痛みを訴えていて、吐き気と頭痛がした。

 血がだらだらと流れるし、体調も悪かったので、今日はお休みを貰う。

 ゴブちゃんが心配そうに部屋に入ってきて、水やスープを持ってきてくれた。だけど、ヴィサは部屋にすら入ってこなかった。

 どうやら、外に出かけたみたいだった。

 酷く気持ち悪くて、あの嫌な臭いが体に巻き付いているみたいで、ヴィサが姿を見せないことにほっとした。でも反面、私がこんなに辛い思いをしているのに、放っておかれることが少し悲しかった。



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