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アンネ



 目を覚ますとベッドの上にいて、昨日のことが朧げだった。

 不機嫌そうなヴィサと、ゴブちゃんと食事をしたのは覚えている。


「アンネ。おはよう!」


 スケルトンは寝ないはずなのだが、ゴブちゃんは違うらしい。

 それでも誰よりも早起きのゴブちゃんは、こうして毎朝起しにきてくれる。


「おはよう。ゴブちゃん」


 ベッドから体を起こして、身支度を整えると朝食の準備にかかる。

 かかると言っても、私は食器を並べたり、ゴブちゃんに言われたように鍋をかき混ぜたりするだけなんだけど。


「アンネ。マスターを起こしてきて~」


 ゴブちゃんはヴィサのことをマスターと呼ぶ。

 私もマスターって呼ぼうかなあと思ったり。でもヴィサって名前で呼ぶ方がなにか親しい感じがするのでいいや。


「大丈夫だよ。アンネ。マスターは怒ってないから」


 私が黙っているので、そう思ったらしい。

 そう言えば、昨日も怒らせていたっけ。

 最近いつもヴィサを怒らせているみたいだから、忘れっぽくなっているけど、昨日も崖から二回落ちようとして怒らせたんだっけ。

 だって、ヴィサが悪いんだ。

 私と離れようとするから。私にヴィサを殺させようとするから。

 それでもやっぱりヴィサに怒られるのはいやだ。嫌われたくない。だから、やっぱり彼の嫌がることはしないほうがいいだろう。

 でもヴィサを殺すなんてしたくないけれど。


「早く、早く」


 動かない私をゴブちゃんが急かして、私は仕方なく、ヴィサの部屋まで来た。

 扉を叩いて、開ける。

 そしたら珍しくヴィサが起きていた。


「ヴィサ?」


 窓をぼんやりながめていた彼はぎこちなく振り向く。


「どうしたの?朝早いね」

「……たまにはな」


 昨日の不機嫌さは嘘のように彼は笑った。



「ちょっと出かけてくる。馬鹿なことはするなよ」


 ゴブちゃんが作ってくれたスープと昨日の残りのパンを食べてから、ヴィサは出かけてしまった。

 さすがに昨日の今日、私も馬鹿なというか、早まった真似はしない。

 だけど、あと三年で私は十六歳、そうしたらヴィサを殺さないといけない。

 どうやったらそれをしなくてするのか、今のところ、私が死ぬことしか名案は浮かばないのだ。


「アンネ!暇だったらパン作りしよう。ほら、焦がさないようにボクが見ていてあげるから」

「え~?パン作りなんてつまんないよ」

「だったらパンケーキは?」

「パンケーキ?!」

「そう、おいしい蜂蜜を手に入れたんだ」


 ゴブちゃんの誘いに負けて、私はパンケーキを作ることにした。まずは卵の白身を泡立てて……。


「アンネ。まだまだ、もっと混ぜて!」

「だって疲れたもん」

「仕方ないなあ」


 手がしびれてしまった私に代わって、ゴブちゃんが白身を混ぜてくれた。これがすっごいの。みるみるうちに泡立ててふわふわになった。これに砂糖をいれてさらにかき混ぜて、黄身を入れて、最後に粉を入れた。


「あ、私がやる!」


 最後は私がやりたい。


「あ、混ぜすぎ。混ぜすぎだって」


 ふわふわだった生地はなんだか、私が混ぜたらちょっとへこんだ気がした。

 でも焼いて蜂蜜かけたらやっぱりおいしくて、たくさん食べてしまった。

 ゴブちゃんは食べないので、私一人で食べて、二枚分をヴィサのために残した。


「食べすぎちゃったよ。二枚って少ないよね」

「マスターはあまりパンケーキが好きじゃないから大丈夫だよ」

「え?好きじゃないの?だったら……」

「でもアンネは好きでしょう?」

「うん」


 なんだかかなりゴブちゃんに気を遣わせてしまったみたいだ。

 ゴブちゃんは所謂モンスターなのに、物凄い優しい。

 多分ヴィサよりも優しいかもしれない。


 その日、ヴィサが戻ってきたのは結局夕方で、パンケーキはいらないって言われたので、私が食べた。

 ヴィサの様子はやっぱりおかしかった。

 どうしたんだろう?


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