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特別なあの子に祝福を  作者: ゆずこ
6/13

ララと夏の妖精祭

区切りの都合で短めです。



 そして、夏の妖精祭当日になる。学院のホールでユリアと待ち合わせて一緒に行こうと思っていたのだが、当のユリアが見当たらない。すると、マーナが慌てた様子でララのもとへ。


「あら、マーナ。ユリアがいないの」

「お嬢様、こちらをご覧ください」


 マーナが手渡してきたのは、上質な真っ白い封筒。封蝋は、どこかで見た覚えがある…

一度寮の自室へ戻って開封すると、手紙と上質な布で縫われた巾着が一つ。

 ララは不審に思いつつも手紙を開いた。



──妖精の君をエスコートしに参ります。



その一文だけであったが、封筒と便箋からほのかに香る、ルクリアの香り。


 どうしよう、急にわくわくしてきた…ララはそっと、同封されていた巾着をほどいてみる。そこには、シンプルなチェーンに黒と赤の綺麗な宝石があしらわれている華奢なブレスレットがあった。


 マーナはほほ笑んで、それをララの左腕に通してくれた。光をうけてきらめくそれは、どんなアクセサリーよりも美しく思えた。

 マーナにはユリアにエスコートの件を急ぎで伝えてもらうことにして、ララは会場へ向かおうと寮を出た。周りはエスコートのために迎えに来ている友人や婚約者の男女であふれている。


 そのなかで、ひときわ目立つ黒曜石のような髪。




「ヒューリお兄さま!」

「やあララ」


 見たことある顔に嬉しくなって、小走りでヒューリの元へ。淑女らしからぬ!とマーナに言われそうだが、そこは回避したい。だってまさかこんな学院でヒューリに会えるとは思わなかったのだから。



「ララ、とても美しいね。ゴードンはもちろんだけど、カルナやキースにも見せてあげたいよ」

「ふふ。わたし、行事とは言えこういった夜会は初めてなんです。だからドレスを着てエスコートしてもらうことに憧れていたのです…」


 えへへ、とヒューリを見上げれば、ヒューリはとても嬉しそうにほほ笑んでいた。


「そうか。この国ではデビュタントは16歳だったね。ララの誕生日は夏の終わり…じゃあ、初めてのエスコート、わたしが申し込んでもよいだろうか」

「ええ!もちろんです。よろしくお願いします。あ、そしてこのブレスレット、ありがとうございます。こんなに素敵な品をいただいて…」



 ララは、腕を小さく上げると、ブレスレットはシャララと揺れた。


「いいんだ。ゴードンにも伝えてある。カルナとわたしから、誕生日の品として受け取ってほしい。記念すべき16歳ももうすぐだ。誕生日付近は来られないだろうから、直接つけている姿を見られて嬉しいよ」


 ヒューリのエスコートで、ララはゆっくり会場を目指す。学院行事なので会場の広間は徒歩数分だ。いかんせん規模が大きいので、歩く距離も地味に長い。


 道行く人たちが、ララとヒューリに目を奪われる。



 学院内でのララは、辺境伯令嬢としてずっと領地にいたので、ミステリアスなイメージを持たれているらしい。シルバーブロンドにアメジストの瞳。一見落ち着いた印象ではあるが、ララが王都にいるだけでたくさん声をかけてくる妖精たちに思わず反応しないように、気を張っているだけなのだ。それを知っているのはクラスの仲良くしている令嬢や従妹のユリア、アレックスだけだ。


 そんなララが、見たこともない美丈夫を伴って歩いていれば、誰もが目を奪われる。



「そういえば、ヒューリお兄さまはどうして王都に?」

「ああ、ちょっと仕事で王都へ使いに来ていたんだ。そしたら学院で夏の妖精祭があるって聞くじゃないか。せっかくだから、ララの晴れ姿でも、って」


 今日のララは、薄いラベンダーカラーのドレスを着ている。シルバーブロンドの髪はゆったり編み込んでアップヘアーにしていた。

アクセサリーはシンプルにネックレスのみで、腕にはヒューリとカルナからプレゼントされたブレスレットが光る。


「うん。今日来てよかった」



 ヒューリはララを見て、改めて実感した。




 会場に入ると、随分な人であふれていた。むしろララたちは後半だったようだ。その場で少しヒューリと談笑していると、会場がざわついた。入口の方を見れば、どうやらアレックスが会場に入ったようだ。

 人の波の隙間から正装したアレックスと、まさかのマリオット男爵令嬢を発見してしまう。



「…ララ?あれはアレックス殿下と…」

「あ、はい。先日学院に転入してきたジュナ・マリオット男爵令嬢です」

「マリオット…」


 ヒューリは少し考えるそぶりをしたが、すぐにいつもの笑顔に戻る。



「さあ、そろそろ始まるだろう。いこうか」

「そうですね」



 ララがヒューリから視線を外して、顔を上げると、マリオット男爵令嬢と視線がぶつかる。悪意のこもった視線が突き刺さったがそれも一瞬。すぐに人懐こい可愛らしい笑顔に戻っていた。




ユリアへ結局婚約者がいない友人たちと一緒に会場入りしたのでした

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