秘密の泉
俺たちはオーガのコアを拾ってギルドに戻ることにした。どうやら、このコアというやつが武具作りなど用途がたくさんあるらしく、魔族のコアが欲しい人がギルドに討伐依頼をするらしい。
「パールさんって、武器はまだギルドで貰った物を使っているのですか?」
「あぁ、今日、冒険に出たばっかりだしな」
そう言うと、アリスは驚きの目を向けてきた。
「あの、本当に今日、冒険に出たばっかりなのですか? それにしてはめっちゃくちゃ強いし、だれも知らないオーガの弱点を知ってるし」
「はは、オーガの弱点は昔、じいちゃんから聞いたんだ」
と、咄嗟にごまかす。
「あの、失礼ですが、レベルとか能力のランクはどのくらいなのですか?」
「能力のランクはすばやさがB以外、全部Sらしい。どうせならすばやさもSにしろよな。あと、レベルってなんだ?」
「すばやさ以外全部S!? そんなにSがある人なんて聞いたことありませんよ。レベルはギルドで最初に貰ったギルドカードで見れます。ついでにステータスも見れますよ」
そういえば、ギルドで登録終わった後、カード貰ったな。依頼申請してるうちにすっかり忘れてたぜ。
「レベルは3だな。ステータスは
体力 180
防御力 176
魔力 192
物理攻撃 183
すばやさ 96
みたいだな」
「えっ……私、レベル7なのに全ステータス負けてる……唯一Sランクの魔力すら負けてる……」
相当ショックだったようで、アリスは街に戻るまでずっと俯いていた。
そうこうするうちに街に戻った。街に戻った頃にはすでに夕方になっていた。街では野菜を売る人、パンを売る人、そして劇場などがある。劇場の看板に女性は半額! と大きく書かれていた。なるほど、つまりは、男は倍の金額踏んだくられるのか。そんなことを考えて歩いていると酒場を見つけた。
「なあ、酒場に行かないか?」
魔王軍にいた時、人間は酒場に集まる習性があると聞いていた。酒場に行けばアリスの機嫌も治るだろう。
「酒場……行ったことがありませんでした。行きたいです!」
「そうか、じゃあ入るか!」
人間なのに酒場行ったことないのかと不思議に思いながら酒場に入った。
席に案内されるとアリスが俺にむかって話し始めた。
「パールさん、武器が初期のままだと不便だと思いますので、明日からは武器を作って貰えるためのお金を集め行きませんか?」
「そうだな。武器っていうのは高いのか?」
「はい、私が今、使っている杖は50万ルピしました。」
「50万!?」
「はい、武器は安くても10万ルピ以上して、ちゃんとした性能が欲しかったら軽く50万くらいはします」
「なるほど、じゃあ資金回収が必要だな……」
そう話していると、横にいた冒険者らしき人に話しかけられた。
「おい、兄ちゃんたち、新入りか? それにしても、兄ちゃん、可愛い嬢ちゃんを連れてていいねぇ」
確かに、アリスは金髪で目が青く、わりと可愛らしい顔である。お互い自己紹介を交わした。この人の名前はジョンと言って、この人も最近冒険を始めたばかりらしい。
それからジョンとは意気投合して、かなり夜遅くまで酒を飲んだ。そして、すっかり今日稼いだルピを使いきってしまった。
「やべ……宿に泊まるルピねぇ……」
アリスと共に酒場を出て俺はそう言った。
「ルピないなら貸してあげようか?」
「いや、流石に悪いよ。今日は野宿でもする」
「私たちチームなんだし、別にいいわよ。それにお金には今、困ってないし」
わざわざこれ以上断る必要もないなと思い、アリスからお金を借りて宿に泊まることが出来た。
俺たちは昨日行った彷徨いの森で、オーガを倒してお金を集めることにした。オーガ何体か倒して帰るといことを2週間くらい続けた日のことだった。
「なんだこれは……?」
オーガが倒れた衝撃で洞窟の入り口のようなものが現れたのだ。どのくらい洞窟を進んだであろうか。1時間くらい経った時の事だった。アリスが急にきゃーっと叫んだ。
「蛇よ! とても大きい蛇がいる!」
そう言われてると、前に小さな蛇がいることに気づいた。こんな蛇くらい一瞬で殺せると思い剣を振った。しかし、何回振っても蛇には当たらない。苛立ちを覚えるとともに、なぜか蛇が少し大きくなってることに気がついた。
「なっ。蛇が大きくなってる……!」
そういうと同時にまた、蛇が大きくなった。ここからはがむしゃらに攻撃し、蛇には当たらず、蛇が大きくなるの繰り返しだった。
何かカラクリがあるはずと思いながら、自分にこの蛇を倒せるかどうかどんどん不安になっていく。
え、この俺様が不安? 魔王軍の四天王だった俺が? そう、疑問に思ったとき、アリスが最初に言った言葉を思いだした。アリスは蛇を最初から大蛇と言っていた。
まさか、これは、自らの恐怖心によって蛇がどんどん大きくなっているのではないか。冷静になれば、蛇は何一つ攻撃していない。ただ、自分の攻撃が通じないことで蛇を強敵とみなし始めたのである。
「俺は、もう騙されないぞ」
そう叫んだとたん、蛇の姿は消えた。そして、そこにあったのは蛇の形によく似た岩だった。
その後の洞窟探検はお互い恥ずかしさのあまり気まずい雰囲気だった。泉に着くまでは。
「あの泉何かしら」
最初に沈黙を破ったのはアリスだった。俺も好奇心にかられ、泉を調べた。すると泉の中に卵のようなものがあった。
「幻獣の卵! これって、幻獣の卵じゃない!?」
いつも大人しいアリスが急な子供のようにはしゃいだ。
「幻獣の卵って何だ?」
「そのままよ。普段滅多に会えないような動物や精霊の卵よ」
「で、どうするつもりなのだ?」
「もーちーろーん、持って帰るわよ」
アリスの普段とのギャップに押され、無言でいると、無言を承諾と思ったのか、スタスタ帰り始めた。
行きは3.4時間くらいでここまで来たのに、帰りは卵を守りながら帰ったので、倍くらいの時間がかかった。まじで勘弁して〜……