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モバイル版が終わるんだって

作者: セルロイド

 紫色のリンク。グレーバックのチープな背景。右から左に流れる黒い文字。

 なんて古臭いレイアウトだろう。

 jQueryやらPHPやらをふんだんに使った、アトラクションのような今どきのWebサイトと比較すると、そのあまりの乖離ぶりに笑ってしまう。■や▼などの記号を使ってどうにか体裁を保とうとしている姿なんて、笑うを通り越して泣けてくる。

 ラベルのカタカナはなぜか半角になっているし、メニュー欄の左側にはなぜか連番が振られているし、小説はちょっとでも長くなると別々のページに区切られてしまって、最後まで一気に読めなくなるし。

 小説家になろうのモバイル版サイトの、なんて使い辛いこと。


 ああ、だが、しかし。

 このチープなレイアウトこそ、私が初めて足を踏み入れた「小説家になろう」なのだ。

 中学生だった私が、携帯電話のボタンをポチポチいじって、ソファに寝転がりながら書いたり読んだりを楽しんでいた場所なのだ。


 皆さまは2000年代半ばの携帯電話を覚えているだろうか? 「インターネット」ではなく、「EzWeb」や「iモード」を使ってブラウジングをしていた時代を覚えているだろうか?

 私はまだまだ若造だが、このサイトのブラウザ版みたいなレイアウトを見ると強い郷愁に駆られてしまう。そうして、当時のインターネットの社会を懐かしみながら思い出してゆく。


 

 うわあ。本当に懐かしい。ちょっと懐古させろ。文体はもうどうでもいい。

 あの頃、携帯電話で小説を書くのはなかなか骨が折れた。まず長文が保存できない。大抵の携帯はメモ機能なんて持っていないので、メールの本文をメモ代わりに使用していた。次に文章のコピーが出来ない。いや出来るのは出来るんだが確か2、30文字程度しかコピーできなかった。これじゃメールに保存した文章を投稿フォームに移せない。

 そこで活躍したのがメール投稿。件名にタイトルを入れて受信用アドレスに投げ入れる。するとメールの本文が執筆中小説に保存される。これならメールの文章をちまちまコピーせずに済む。すごい。


 ああそう。あとモバイル版は文章が長くなると勝手にページが分割されてしまう。物語が中途半端に区切られちゃって、続きを読むには次のページに行かなくちゃいけないの。

 でも、これは携帯電話のスペックとかが理由だと思うし、あの頃はブログとかもだいたい同じような作りだったから、別になんとも思わなかった。というか自分はこれを逆に面白いと思って、ページが変わるごとに別の話が始まる小説を書いた気がする。どんな話だったっけ。忘れた。

 当時はほんとスペックが酷くてねー。携帯電話でパソコンと同じサイトを開くなんて夢のまた夢みたいな話だったよ。


 そういえばJ研とかあったよね。着メロのやつ。着うたとかもあったっけ。あと無料でMP3落せるサイトとか。いやあ、過去のネットはつくづく無法地帯だったなぁ。

 でも、当時のモバイルサイトはそういうのも含めて全体的に「秘密基地」感があって好きだったな。携帯電話を使って自分の領域をポチポチ育てていくの。RGBで背景の色とか変えてさ。壁紙をどっかから落としてきたりしてさ。手作り感っていうのかな。なんかそんな感じがして好きだった。


 それで、ええと、結局何が言いたかったんだっけ。

 モバイル版いままでありがとう? お疲れさま?

 それもあるけれど、ちょっと違う。自分はたぶん、「モバイル文化」そのものに対して「ありがとう、お疲れさま」と言いたかったんだろう。

 アナログテレビが終わった時もそうだったけど、時代を築いた文化が消えていくのはやっぱり寂しい。渦中で楽しんでいた人として何か残しておきたい。


 当時の執筆についてはもう書いたし、モバイル文化についても書いた。あとなんか残ってる?

 ……もう無い? あれ。案外少ないな。

 このままパッと終わるのも味気ないし、最後に墓でも残して終わるか。



 墓は遺された者のために作ると誰かが言っていた。ならば、私はこの投稿でもって私の「モバイル文化」の墓標としよう。

 今はVtuberが大盛況だ。そして、動画越しに笑いかける彼女らの背後ではVRの未知なる世界が私たちを手招いている。ひょっとすると、2018年は新しい文化の幕開けの年となるかもしれない。

 墓を建てるには良い頃合いだ。「今」を無邪気に楽しむためにも、「昔」はここに埋めておこう。

 さらば、モバイル。思い出をありがとう。


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