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第一話 出会い

僕と達也はいつもの様にアイスケースの前でアイスを選んでいる演技をしながら涼んでいる。店員も暑くてだるいのか鋭い目線は送ってくるものの、いつもたいして何もいってこない。



「アイスってもんはだた冷やせばいいってもんじゃないんだよ。」

「そんなもん待ってれば丁度良くなるだろ。」

「健一、だからお前はいつまで経っても彼女が出来ないんだ。」

「そう言うお前も彼女がいないじゃないか。」

「あはは、悲しい事言わないでくれよ。

「それにアイスと彼女がどう関係あるんだ?」

「想像に任せるよ。」

「お前の口は減らないな。」



僕はアイスケースからいつも食べるかき氷の様なアイスを取り出す。

文句を言っていた達也も結局二つ程アイスを買って二人はコンビニの外に出る。



「あ〜、暑い。」

「ほんと、ほんと。」



二人はアイスにかぶりつく。暑い時のアイスはこの冷たさがたまらない。蝉の音を聞きながら他愛のない話をするのもなかなか悪くない。



僕が住んでいる高知は夏が暑い。暖流がなんだとか聞いたことがあるが、僕は高校受験もたいして頑張った訳ではないので、二年になった今はもう覚えていない。



「カラオケでも行かないか?」

「お前から提案してくるとは珍しいな。申し訳ねぇが、今は金欠なんだ。」

「そうか。あと一つ反論するとすると、いつも俺が言う前に、お前が提案してくるからってところだな。」

「俺は積極的だからな。」

「それはどうも。」



二人はそれぞれの家路に着いた。僕の家は学校から20分程歩くと着く程度の距離である。電車を使う人もいるから、この暑い中歩いてすぐなのはなかなか恵まれているのだろう。



「ただいまー。」

「ちょっと静かに、今お客さんが来てるから。」



確かにそんなことを言っていた気がする。確か、庭の木の剪定だったか。今年は思ったより木が成長し過ぎたらしく急遽来てもらったらしい。



僕は自分の部屋に入って制服を着替えて、スマホを開く。メールが来てるが、どうやら達也からのようだ、どうせ大して重要な話でもないだろうから、僕はスマホを閉じ、ベッドに倒れこむ。



達也の本名は玉谷達也。彼とは小学校の頃からの友達で、今も同じクラスである。どんな奴かというと、まあさっき一緒にコンビニに行ってたのに、すぐメールで話をしようとする奴だから、まあ、説明するまでもないだろう。



そういう僕の名前は成宮健一。たいして話す事もないので、必要になった時にでも話したいと思う。



ベッドに倒れこんだものの、今日は午前中の終業式だけだっだので、たいして疲れていない。

僕は今日学校で配られた夏休みの宿題を取り出す。夏休みの宿題は貯める派でも、早めに終わらせる派でもなく、少しずつやる派である。だが今年は何か忙しくなる気がしたので、始めてみる。さっきの話をぶり返す様だが、彼女が出来た訳でもないし、まあ忙しくなるなんてことはないだろうけど。



「健ちゃーん、ちょっと来てもらえる?」



その名前では呼ばないでくれといつも言っているはずだが、もう直す気もないのかもしれない。特にやる事も無かったので僕は母の元へと向かう。



「今、一条さんが帰ったんだけど、荷物が重そうだったから、店まで手伝ってあげてくれない?」



一条という名前は初めて聞くのだが、多分さっきの人のことだろう。



「いいけど、店って何処?」

「あー、学校の近くに『放し食堂』って店があるでしょ。そこのオーナーらしいから、そこじゃないかしら。でも、今出たばっかりだし、あの調子だと歩くのもゆっくりそうだから、そんな遠くにはいないはずよ。」

「じゃあ、すぐ行ってくるよ。」



僕は玄関を開けて外に出る。やはり暑く、引き受けた自分が少し恨めしく思ったが、そんな気持ちで手伝うのも申し訳ないので、気持ちをなんとかもみ消す。



道に出たところ重そうな荷物を持つ人はすぐ見つけられたが、本当にそうだろうか。



その人は黒く腰くらいまで長い髪を持ち、夏には全くそぐわないYシャツ姿の女性だったからだ。

格好はさっきまで外で作業をしていたとは思えないし、こんなに若い女性が店のオーナーだとは思えない。



でも、近づいてみたら確かに木を剪定する道具が見えたのでこの人で合っているのだろう。



「すいません。さっき木の剪定をしてもらった家のものですが、荷物運びを手伝わせてもらってもいいですか?」



彼女は長い髪を見せびらかす様に首をこちらに傾けた。彼女の顔はモデルの様に小さく、そのつぶらな眼には黒い眼鏡をかけていて、まるで何処かのお嬢様といった感じだ。



「え…あ……………えっと…あの…その…ごめんなさい………」

「えっ!?」



彼女は再び前を向き、必死に駆けて行く。



僕は何も出来ず、ただ呆然と立ち尽くすのであった。

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