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騙されやすさは神レベル

 メトロンとの初めての対面を果たし、俺は視線を色々な場所に移す。

 話には聞いていたが、本当に子供みたいだな。

 これで500を越えるのか......。



 見た目と反して年齢が合っていないその姿に、俺は違和感を覚えるが、そんな俺の内心などお構いなしにメトロンは俺を見て、怪訝そうな面持ちで尋ねる。



「君、何でここに.......いや、そもそもどうやってーーーいったぁぁ!!?!?」



 緊張した空気と顔立ちで話す最中、俺は問答無用に無言のままメトロンの頭を殴った。

 殴った瞬間また鈍い音が頭から聞こえ、頭を抑えながらメトロンは理不尽に殴られたことに抗議の声をあげる。



「いきなり何すんのさ!!」

「うるせぇ、今まで自分がやってきたことを考えろ」



 モンスターをこっちに召喚したり、リーナをけしかけたり、けしかけたと思ったら【零の世界】に閉じ込めたりと、この今まで味わってきた数々の諸行。

 拳一発で足りるわけないだろ。



 いきなり殴られメトロンは痛そうに頭を抑えていると、俺は先程のメトロンの質問に応えた。



「そういえば、どうやってここに来たって話だが、お前が造った魔法陣から来た」

「魔法陣って.....あの島の?あれってサラに壊すように頼んだのに......」



 おかしいと思いながら、ぶつぶつと考え込むメトロンは、何やら察したのか顔をはっ!とさせ声を震わせた。



「も、もしかして、サラを......」



 何を勘違いしているのかは大体想像はつくが、これはチャンスだ。

 声を震わすメトロンに俺は肯定するように顔をにやつかせる。



「あぁ、あいつなら今頃向こうの奴等とよろしくやっているだろうな」

「向こうの奴等って........なっ!?」



 この意味深な俺の言葉に、メトロンの勘違いは更に拍車を掛ける。

 俺にとっての向こうの奴等とは勿論リーナ達の事だが、メトロンにとっての奴等とはメトロンが設置したあのおふざけ満点なモンスター達の事を意味しているだろう。  



 タコにスライムに触手責め。

 幾多のモンスター達がサラを襲う姿が、メトロンの頭の中で想像される。

 大人の本まっしぐらな妄想に、メトロンは顔色を悪くする。

 そして勘違いをしたまま、メトロンは更なる勘違いを重ねた。


 

「まさか、リーナも.........」

「......ふっ」



 含みのある俺の微笑。

 この微笑で全てを悟ったのか、メトロンは顔を震わせ、暗くなる。

 ここまで都合よく勘違いをしてくれるとは。

 お陰で手間が省けたな。 

 メトロンの馬鹿具合に俺は内心ほくそ笑む。



「安心しろ。体は元に戻すし、記憶も消しておく。精々温かく出迎えてやれよ」

「ぐっ!!........」



 悪役感満載な俺の演技にメトロンは歯軋りをする。騙されやすいな、こいつ。

 扱いやすくていいけど。

 予想以上の扱いやすさに俺はこんな奴にと若干呆れが入るが、これであいつらの問題は解決だ。

 減給も首もなくなるだろう。

 


「それはそうと、お前にはこれまで散々とやってくれたよなぁ」



 まだ俺の怒りは収まっていない。 

 そう言いながら俺は殴る構えをつくる。

 俺の殴る体勢を見て、メトロンはまた殴られると思ったのか少し怯えながらも惚けだした。



「な、何のこと?.......」



 この期に及んでなにを惚けているのだろうか。

 素直に認めないメトロンに俺はゆっくりと拳を振り上げる。

 


「もう一発行くか?」

「あぁ!嘘です!嘘です!したね!しましたね!!色々やったね確かに!!」



 流石にもう一発喰らいたくなかったのか、メトロンは慌てて訂正する。

 素直に自分の罪を認め、俺は振り上げた拳を下ろす。

 拳が下ろされ、メトロンはホッと安心したのか、ここでいらぬ口を滑らせた。



「でもあれ僕悪くなくない?あれって元をただせば変なスキル持った君がーーーってあいったぁぁぁ!!!」 

「どう考えてもお前が悪いだろうが」



 悪びれた素振りを一切見せないその言い草に、俺は下ろした拳を再び振り上げメトロンの頭を殴る。

 責任転嫁も甚だしいわ。どう見ても100パーセントお前が悪いだろ。



「いった!!何これいった!!てか何でこんな痛いの!?君今レベルいくつ!?」

「お前に言う必要はない」



 頭からまた鈍い音を建て、頭上を抑えながら悶絶する。

 本当はただステータスを見てないだけだが、例え見たとしたも何かこいつには言いたくない。



「さっきから見ていれば、私のマスターに暴力を振るわないで下さい!です」



 すると、さっきからこちらの様子を見ていたメルが俺に怒りの声をあげた。

 


「あれ?今の声は......」



 突然見知らぬ声が聞こえ、メトロンは頭を抑えながら辺りをキョロキョロしている。

 そういえば、メルにこのクソガキがどう思ってるのか聞くって言ったっけな。

 俺は思い出し、早速メルについて聞いてみた。     


「なぁ、俺がどうやってここに来たのか、本当に分かってるのか?」  

「え?サラにやらせたんじゃないの?」 

「あの魔法陣はお前の魔力でしか反応しないんだぞ」

「それを君が改造したとかじゃなくて?」



 どうやら本当に分からない様だ。

 メトロンは分からないとばかりに首を傾げている。そのメトロンの様子に、携帯からメルの「え?」という声が小さく聞こえてきた。   



 忘れられてると思ってるんだろう。

 俺的には案の定だが、決め付けるにはまだ早い。

 俺はメトロンのメルに対する気持ちを決定付ける質問を投げ掛けた。



「あそこにはお前が造ったものがあったろ?」

「もしかして、AIのこと?それならとっくに死んでるでしょ」

  


 呆気からんと、感情のない一言。

 この悲しみも後悔もない、メルが死んだことに何も感じてないと言っている様な言葉に、携帯からは「.......」と無言が流れる。


 

 絶望でもしてるんだろうか。

 きっと驚いて何も言えないんだろうな。

 何か俺も携帯を見るのが躊躇ってくる。

 未だ訳が分からない顔をしているメトロンに俺は答え合わせとして、胸ポケットにしまってある携帯を取り出した。



「お久しぶり、です。マスター」



 携帯の画面の中から、メルが綺麗にお辞儀をしながらメトロンに挨拶をする。

 だが、それに喜びや嬉しさ欠片もなく、暗い、トーンの下がった声だ。

 画面の中のメルを見て、メトロンは驚きの顔をする。



「君、もしかして、メル!?」



 指を指しながら、驚愕しているメトロン。

 ここで謝罪の一つでも述べれば良いものを、次の一言がメルを更なるどん底に突き落とす。



「君、もしかして、寝返ったの!?」

「え........」



 これにはメルも衝撃すぎた。

 死んだと思われただけならまだよかっただろう。勘違いをしていただけなのだから。

 だが、それだけには飽き足らず俺と共犯したと勝手に思い込んでいる。

 驚き通り越してメルはもう涙目だ。

 これで決定したな。

 最早情状酌量の余地なし。



「何でこんな極悪な男に!?」 

「誰が極悪だ!」

「いったぁぁ!!!?」



 一人盛り上がっているメトロンに俺はまた頭を殴る。



「さっきから頭殴りすぎでしょ!!アホ!!チート!!幼児虐待!!」

「誰が幼児だ!自分の年考えろ!!」


 

 500を越えた奴が何が幼児だ。 

 ただの見た目詐欺だろ。

 互いにいきり立つ俺とメトロンを余所に、黙っていたメルは静かに口を開いた。



「........ばか」

「へ?」

「ん?」

  


 いきなり口を開いたメルに俺とメトロンは同時に携帯を見つめる。

 画面を見ると、メルは顔を俯かせながら体をぷるぷる震わせていた。



「マスターの、ばかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 突如携帯から発せられた超大音量のメルの叫び。部屋全体が揺れ、少しの間声が部屋中に響く。

 唐突なメルの叫びに俺とメトロンは咄嗟に耳を塞ぐ。  



 今の気持ちを表すように、一頻り叫び終えたメルは怒った表情をしながら携帯の画面から姿を消す。

 その瞬間、突如部屋にあったパソコンの画面が点きだした。

 点きだした画面の中では、ファイルのドット絵が次々に消去されていく画像が流れ出した。



 暫くその映像が流れ続けると、やがてその映像は止まりまた元の黒い画面に戻る。

 画面が元に戻り、メルも俺の画面に戻ると、メルは怒った表情をしながら言う。



「マスターの部屋にある情報を、全て消しました。私を捨てた、腹いせ、です」



 そんなメルの言葉に、メトロンは「まさか.....」と言いながら急いでパソコンを起動させた。 



「......ない、ない、ない!ないない!!ない!!!」

   


 暫くパソコンを操作し、メトロンの顔は焦った表情をしながら操作を進める。



「僕のオンラインデータがない!!」



 その言葉を最後に、メトロンは床に膝を付け、絶望しながら頭を垂れる。



「僕の2000時間の苦労が......」 



 小声ながらメトロンは呟く。

 その言葉に生気は感じない。

 余程ショックなんだろう。

 サラやリーナが襲われていると知ったときよりショック受けてるぞ。

 にしても、中々えぐいことするな。

 ある意味一番でかいダメージだったな、今の。

 


 大切なデータを消されるのは確かに心が折れるだろうな。

 俺はメトロンに若干同情の念を感じたが、これはこれで中々面白い。


 

「お前そんなことも出来たんだな」

「ネット関係なら何でも出来る、です」



 関心気味に言う俺に対し、メルは少しどや顔で返す。

 有能なんだな。メルって。

 しかし、このポーズをただ見てるだけなのもあれだな。

 写真でも撮っておくか。

 俺は携帯でカシャッとメトロンが膝を付いて頭が垂れる姿を写真に納める。



 リーナにいい土産が出来た。

 後で見せてやろう。

 いい写真が撮れて、俺は満足していると、



「ふ、ふふふ........」

 


 メトロンは壊れた様な笑いを浮かべ、立ち上がった。 

  


「もう許さない。僕にこんなことして、ただで済むと思わないでよ」

 


 その瞬間、メトロンを中心に異様な空気が流れる。

 先程までとは違い、重く、圧を感じる。

 弱った敵を追い詰めない方がいいとは言うが、正にこういうことを言うんだな。   

 俺は突如雰囲気を変えたメトロンに警戒し、攻撃体勢をとった。 



「神である僕に楯突いたこと、後悔させてあげるよ」



 上等だ。返り討ちにしてやる。  

 このままでは5秒後には戦闘開始な空気の中、今度は俺の体に異変が起こった。    



「え?」

「なんだ?」

  


 メトロンとの戦闘に構えた俺の体は、突然淡い光に包まれた。  

 俺はこの事態に少し驚く素振りを見せるが、直ぐにその正体が分かった。



「これは.....」

「時間切れ、です」



 光りに包まれる俺の体を見て、メルは簡潔に応えた。

 実は、この転移には時間制限がある。

 限られた魔力の中では、限られた時間でしか活動出来ないのだ。

 何だ、もう時間切れか。

 折角ならもう少しいたぶりたかったんだが。 



「な、何なの、その光り.......」



 状況が掴めないメトロンに、俺は残念そうに伝える。



「どうやら時間切れみたいだ」 

「はぁ!?時間切れ!?」



 これからという所でいきなりの強制終了。  

 これには俺もメトロンと同じであまり納得いってない。


 

「え、ちょ、待ってよ!まだなんにもやってないんだけど!!」



 メトロンは異論の声をたてるが、そうは言ってもこの強制転移は変えられない。  

 俺だってもっと色々やりたかったぞ。

 


 俺は残念に思えたが、このままただでは帰りたくはない。

 どうせなら、最後にあれをやって帰ろう。

 俺はそう思い、あるものを【空間魔法(効果範囲 特大)】でメトロンの頭上に出現させた。


 

ガシャーンッ!!


 

 頭上に出現させれたそれは、メトロンの頭に勢いよく落ち、盛大な音を建てた。

 メトロンの頭上から落とされた物、それはコントでお馴染みのタライだ。

 遺跡で俺に落とされたあれを持ってきた訳なんだが、これをやり返したかった。



 いきなり頭上からタライが落ち、無言のままタライを見つめるメトロンに俺は去り際ある言葉を添える。



「やーい、引っ掛かったー」

  


 その言葉にメトロンはようやく状況を理解し、額に青筋を立てた。



「待てやこらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!ーーーーーーーー」


 

 そのメトロンの怒りの咆哮は途中で途切れ、俺はメトロンの部屋から姿を消した。

自分的にはあまり出来なかった気もするけど、次はそうはいかない。


おまけ


【トランプ】


 その頃のサラ達


「8」

「9」

「10」

「じゅ、11」

「「「ダウト」」」 

「なんで分かるのよ!?」 

「だって、ねぇ?」

「分りやすい」

「顔に出てるぞ」 

「くそう、まだまだこれからよ!」 


 リーナ達とよろしくやっていた。


 

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