報酬はラーメンです
日間二位......だと......。
教室でのテロリスト達の会話を聞いていた夜兎は、教室内から溢れでるシリアス感に退いていた。
(うわぁ、何このシリアスな感じ)
あそこにいなくてよかったわ。居たら間違ってあのテロリスト達をぶん殴ってるかもしれないな。俺シリアスな感じ苦手だし。
俺は一人そう思っているとズボンのポケットに入っている携帯が鳴り出した。
取り出すと携帯には石田哲二と表示されている。おっさんか。
相手がおっさんだと分かると俺は通話ボタンを押し携帯を耳に当てた。
「もしもし」
『おう俺だ。今学校の前に着いた』
「知ってる。こっから見えてるから」
そう言って俺は外のパトカーの方を見た。
こっからだとおっさんが後ろで電話している姿がよく見える。
『何?お前今何処にいるんだ?』
「屋上」
俺がそう言うとおっさんは屋上の方を見回して、俺と目があった。
一応手でも振っておくか。俺はおっさんと目が合うと小さく手をヒラヒラと振った。
するとおっさんは何故か苦笑している。何故だ。
『お前、この状況でよくもまぁ..........まあいい。それより隣にいる可愛い嬢ちゃんは何だ?彼女か?』
「違ぇよ。あんたもこの状況で何聞いてんだよ。それよりそっちは今どうなってんだ?」
釜石さんの事を追求されるのも面倒なので、俺は話を変えようとおっさんに話を振った。
『あぁ、こっちもテロリスト達と交渉をしてるんだが、どうやら向こうさんの目的は逃走用のヘリを確保することらしい。今から三時間以内に持ってこなければ人質を一人ずつ殺すとの事だ』
成る程、テロリストの目的は逃走用のヘリを確保することか。だから人の多い学校を狙ったのか。
「そうか。んで、どう対処する気なんだ?」
俺がそう聞くと、おっさんは急に歯切れを悪そうにしだした。
『それがなぁ、こっちも出来るだけ交渉の時間を伸ばしたり、密かに部隊を配置させてはいるんだが、何せ敵は連続テロ組織だ。敵の人数や現在地が分からなきゃどうしようもねぇんだ』
そう言うとおっさんはこっちをチラチラ見ながら白々しく言い出した。
『あー、誰かいねぇかなぁ。敵の現在地や人数が分かったりして、ついでに倒してくれる奴が』
「おい、待てやコラ」
何を期待しながら言ってんだこのおっさんは。そんな面倒な事誰がやるか。てか、何さらりとお願い増やしてんだよ。
「言っておくがやらんぞ」
『えぇ、いいじゃねぇかよ。例の力でやってくれよ』
いい年したおっさんが一般の学生に何を甘えてんだ。気持ち悪い。
おっさんの言う例の力というのは、勿論俺のスキルの事である。
実は去年俺が警察の厄介になっている時に色々あっておっさんにスキルを使った所を見られてしまった事がある。
最初は記憶でも消そうと考えたがおっさんの俺のスキルを見たときの反応が
『何だそれ?手品か?』
これである。正直怯えられたりするのかと思っていたが予想外の反応に少し驚いたな、あの時は。
以来おっさんにはこのスキルの事を秘密にして貰う代わりに、たまにおっさんの仕事の手伝いをするようになった。
このお陰で俺に警察のコネが出来た訳なんだが、これが中々便利だ。ちょっとしたノリで指名手配犯とか捕まえたときにおっさんに連絡すればスキルの事もばれずに引き渡す事が出来る。正にウィンーウィンな関係だ。
まあ、おっさんが秘密を破っても今度こそ記憶を消せばいいだけの事だしな。
『な?いいだろ?お前の力でさっと倒してくれよ。勿論自然な形で』
だがそのせいか、このおっさん最近調子に乗ってきている。さらりとまた注文増やしてるし。
おっさん俺を何だと思ってるんだ?神か何かか?幾ら俺でもそんな簡単に出来るわけないだろ。いや、出来るけど。
「嫌なものは嫌だ。タダ働きはしたくない」
『分かった。今度ラーメン奢ってやる。それならどうだ?』
等々物で釣ってきたぞこのおっさん。しかもテロリスト撃退の報酬がラーメンって。
割りに合わなさすぎだろ。
『言っておくがただのラーメンじゃないぞ。ここ最近テレビで有名なあの【メンメン】のラーメンだ』
おっさんの言葉に俺は少し反応した。【メンメン】か。あそこのラーメンはテレビとかで何回も放送されていて一度行ってみたかった所だ。
俺は面倒くささとラーメンを天秤に掛けながらうーんと悩むと。
「..........やるのは人質解放までだぞ」
『本当か!?「ただし!」』
「替え玉とトッピングに卵付き。後餃子も」
『なっ!?お、おい幾らなんでもそりゃあねぇよ。こっちも給料日前で金欠なんだよ』
「嫌ならいいぞ」
『ぐっ、わ、分かった』
「よし。ならやってやる。終わったらまた連絡する」
そう言って俺は電話を切り一息ついた。
あー、受けてしまったとはいえ面倒な事になったな。
「神谷君、今の電話何だったの?」
俺とおっさんの会話を聞いていた釜石さんが俺に聞いてきた。
あ、やばい。そう言えば隣に釜石さんが居たんだったな。何て誤魔化すか。
「あー......少し頼まれ事だ。悪いが少し行ってくる。釜石さんはここで待っててくれ」
そう言って俺は立ち上がり校舎の中に入った。
「え、ちょっと!?神谷君!?」
釜石さんは俺を追いかける様にドアを開けたが、俺はもうそこにはいない。釜石さんには悪いが転移でもう校舎の中に入ったからな。
「さて、んじゃやりますか。ラーメンの為に」
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