罠を破壊しても二重の罠があるのは定番
夜兎君の居た部屋から出た後、夏蓮ちゃんが何やら見つけたものがあるらしく、私とリーナちゃんとロウガちゃんはそれに付いていった。
「うわー」
「こんな場所が.......」
夏蓮ちゃんに連れてこられた場所に、私とリーナちゃんは驚嘆の色を示す。
天井は低く、薄暗い少し狭い部屋。
ここにこんなのがあるなんて思わなかったな。
私は今来た道を見ながら思う。
「まさかあんな所に隠し部屋があるとは。よく見つけたな夏蓮殿」
「いえい」
隠し部屋を見つけたことに関心しながらリーナちゃんは夏蓮ちゃんに言う。
褒められてちょっと嬉しいのか、夏蓮ちゃんは少し頬を緩ませ軽くピースする。
今私達がいる場所は、最初夜兎君と一緒に来た時に通った道の途中にある隠し部屋。
考えがあると言う夏蓮ちゃんの言葉に、私達はその考えを知らされないまま付いてきたけど、よくこんな場所見つけられるな。
「どうやって見つけたの?」
「この隠し部屋に繋がる壁に変な模様があった」
夏蓮ちゃん曰く、ここに来た時に周りとは微妙に違う模様があったらしく、それをずっと不審に思っていたらしい。
そして、その模様を押したら隠し部屋が出てきたという、何ともベタな展開だ。
「罠とかだったらどうする気だったの?」と私は聞いたが、「罠だったら最初に通った時に既に起動している筈」と言われ、私は確かにと納得した。
「だが、よくここに何かあるって分かったな。それだけじゃ何があるか分からないだろ?」
「起動しないってことは先ず罠じゃない。他の通路の壁も見てきたけど、おかしかったのはあれだけ。何かあるのは確か」
リーナちゃんの疑問に夏蓮ちゃんは何て事ない様子で説明する。
ちょっとした事から全てを見いだす。
その凄まじい洞察力に私は素直に尊敬した。
凄いなぁ、夏蓮ちゃん。
「まぁ、それに........」
言葉の途中、夏蓮ちゃんは目の前にあるものに目を向ける。
「案の定何かあった」
「そうだな」
「そうだね」
夏蓮ちゃんが見つめるそれを、私とリーナちゃんは同調するように見る。
目の前にあるもの。私はそれを見て言う。
「これ、魔法陣だよね」
薄暗い部屋の中に輝く怪しい光。
それはまごうことなき、さっきの部屋でも見た魔法陣だ。
「何の魔法陣なんだろうね?これ」
私は魔法陣を眺めながら言う。
さっきの部屋で見た魔法陣とは明らかに形が違う。
魔法陣が光っているということは、今もこれは作動しているということだろう。
いったいどんな効果があるんだろう。
興味深そうに魔法陣を覗き込む私にリーナちゃんが応える。
「恐らく、これがこの遺跡を魔法無効化している魔法陣だ」
「これが?」
そうは見えないのか、夏蓮ちゃんは半分疑いの目で魔法陣を見る。
「ここはこの遺跡で丁度真ん中に位置している場所だ。差し詰め、この場所から遺跡を囲うように展開されてるってところだな。それにこんなところで展開されている魔法陣なんて、無効化の魔法陣ぐらいしかない」
魔法陣ってそうなってたんだ。
リーナちゃんの説明を聞いて私はへぇって思った。
「これ、どうやったら壊れるの?」
さっきからずっと魔法陣を眺めていた夏蓮ちゃんが言った。
それが魔法を無効化してるなら、夏蓮ちゃんの言う通り早く壊さなきゃだね。
「それなら簡単だ」
そう言って何処から出したのか、リーナちゃんは手から剣を取りだし魔法陣の前に出た。
「どこから出したのそれ?」
「これは私の【ボックス】のスキルから取りだした剣だ。これは魔法ではないから使うことが出来る」
剣を見せびらかしながらリーナちゃんは言う。
そんなのもあるんだ。やっぱスキルって便利だね。
「魔法陣は様々な便利性を持つが、致命的な欠点がある。それはちょっとでも魔法陣に傷や亀裂が出来れば発動しなくなるほど繊細だということだ」
剣を両手で逆手に持ち、地面に突き刺す様な体勢を取る。
「つまり、こうすれ、ば!!」
逆手に持った剣を上から下へ降り下ろす。
剣は魔法陣に突き刺さり、小さな傷跡が出来る。
すると、先程まで光っていた魔法陣の光りが徐々に消えていき、やがて機能が停止したかのように完全に光りが消えた。
「これでもう大丈夫だ」
そう言ってリーナちゃんは剣を仕舞うと、掌の上に灰色の靄みたいなのを出して「よし、魔法が使える」と言って魔法が使えるのを確認していた。
これで止まったんだよね。
呆気ない結果に私は素直に喜べずにいた。
何かこういうのって、ただでは終わらない気がするんだけど。
そう感じる私はこの事をリーナちゃんに言おうとしたが、
「わんわん!!」
その前にロウガちゃんが何やら吠え出した。
いったいどうしたんだろう?
いきなり吠え出したロウガちゃんを見るが、ロウガちゃんは何やら下に向かって吠えている。
まるで、下から来る何かに威嚇しているように。
どうしたの?と、私はロウガちゃんに声をかけようとしたが、その矢先ーーーーーー
「なっ!?」
「あっ」
「えぇ!?」
ーーーーーーー案の定、私が危惧していた事は起こった。
リーナちゃんが魔法陣を消した後、今度は私達の足元に魔法陣が現れた。
破壊後に発生するトラップ。
やっぱりこういうのってあるんだね。
突然の魔法陣にリーナちゃんは驚き、夏蓮ちゃんは無表情ながらも声を出す。
不意に現れた魔法陣に私達は為す術なくーーーーーその場から姿を消した。
おまけ
【魔法陣】
「魔法陣って何でも出来るの?」
「いや、何でもではないが、色々な用途で使われるな」
「例えば?」
「そうだなぁ.....。今回みたいな魔法無効化もそうだし、転移によく使われるな」
「へぇ、じゃあ設置できれば何処にでも行けるの?」
「位置を設定出来ればな」
「じゃあ、それを学校に設置するのも?」
「出来るが、そんなことのためには使わないぞ」
「えー、じゃあ夜兎君の家は?」
「.......ありかも「ありじゃねぇよ」」
ーーーーーーーーーーーーーー
ブックマーク、評価よろしくお願いします。




