信念は曲げられない
前回の話の終わりが少し納得いかなかったので、一部追加してあります。
なので、話が少し分かりにくいと思いますが、ご了承ください。
勝手なことですが、どうも申し訳ありませんm(__)m
前回のあらすじ
ふざけたトラップをくぐり抜け、最新部に辿り着くと、そこにはメルと超巨大ゴーレムが立ちはかだっていた。
「これが、最後の手段。死にたくなかったら、ここから出ていって下さい、です」
ゴーレムを背に、メルは最後の警告をする。
最後の最後で凄いのが出てきたな。
ゴーレムを見ながら俺は思う。
メルの後ろにいるゴーレムは立ち上がってから微動だにしていない。
どうやらメルの命令で動くみたいだな。
メルとゴーレムを見ながら俺は考察する。
すると、何か分かったのかリーナがゴーレムを指差して声をあげた。
「あれはノーマルゴーレムだ!ノーマルゴーレムは数あるゴーレムの中でも最弱のモンスターだが、ゴーレム種は皆自分の体と同じ鉱石を纏うことで自分を強化できる。鉱石が体に馴染むのに時間がかかるが、そうすることにより自分より強いモンスターを倒す事が出来る変わったモンスターなんだが、これは流石にでかすぎる」
驚いた様子でリーナは言った。
確かにでかいな。足の幅が俺の身長よりでかいぞ。
こんなのゴ○ラでしか見たことない。
しかし、同じ鉱石を纏って自分を強化か。
こんだけでかければどんだけ強くなってるんだか。
目の前の巨大ノーマルゴーレムに俺は軽くげんなりする。
正直魔法が使えない今勝てるかといったら分からない。だから出来たら戦いは避けたいな。
俺はそう思い、メルにあることを聞いてみた。
「なあ、お前のそのマスターってのはメトロンの事だよな。メトロンになんて命令されたんだ?俺達は別にこの場所に危害を加えに来た訳じゃない。用があるのはその転移した先にある所なんだが」
もし、メルが受けていたメトロンからの命令がこの場所を傷付けるなとかだったら、争いなくこの場を回避出来るんじゃないか。
俺はそんな淡い希望を思いつつ言うと、メルは静かに応えた。
「私はマスターに『この島に入った者は全て排除せよ。特にこの場所には絶対に近づけさせないように』と命令されました、です。だからその魔法陣の先に用があっても、近づいては駄目なの、です」
そう言い終わると、メルは少し頬を緩ませた。
「その時マスターは言いました『僕が帰ってくるまでにここを頼むよ』と。誰かに頼られるのは初めての感情でしたので、マスターに頼られて、私は嬉しく思った、です」
本当に嬉しいと思っているのだろう。
そう言ってる最中メルの顔の頬が緩みっぱなしだ。やっぱり無理か。所詮淡い希望は持つだけ無駄だったか。
期待はずれな結果に俺は少し落胆した。
(しかしあれだな、これってまさかと思うが)
落胆したと同時に、俺はあることを思った。
(メトロンの奴多分メルのこと忘れてるな)
途中あったサラの言葉を思い出すと、メトロンは完全にメルのことを忘れている。
でなきゃ、わざわざ破壊なんて頼まないし、事前にサラに伝えているだろう。
(可哀想に........)
来る筈もない主人を待ち続けるAI。
ちょっと同情してくるな。
未だ嬉しそうに微笑むメルに俺は哀れんでいると、リーナが俺に耳打ちしてきた。
「どうするつもりだ、神谷夜兎。ここで戦闘になるにしても、さや殿達はここに居させるわけにはいないだろ」
注意深くノーマルゴーレムを見ながらリーナは言う。
確かに、このままじゃどの道あのノーマルゴーレムとの戦闘は避けられない。
そうなれば必然的にさや達をこの場に居させるわけにはいかなくなる。
そうなる前に避難させておくか。
「さや、夏蓮。リーナ達と一緒にこの部屋から避難してくれ」
「え?何で?」
「多分これからあのでかぶつと戦うことになる。だからそうなる前にこの部屋から出るんだ」
「それじゃあ、夜兎君は?」
「俺は残ってあれを倒してくる。どの道あの転移魔法陣を使うにはあれをどうにかしなきゃだしな」
「一人で大丈夫なの?」
心配そうな顔をしながら、さやは聞いてくる。
超巨大ゴーレム対一人の人間。
こんな構図、無謀以外のなにものでもない。
俺の力を知っていたとしても、無茶だと思うんだろう。
それに魔法も使えないという制限まである。
心配するのも当然か。
心配そうな顔をするさやに、俺は大丈夫とばかりに微笑んだ。
「安心しろ。たかが石ころに負けるほど、俺は弱くない」
「でも........」
だがそれでも、やはり心配なものは心配のようで、さやは心配そうな顔をする。
その顔を見て俺はどうしたもんかと思っていると、さっきまで嬉しそうに微笑んでいたメルがとうとう行動に出た。
「私はマスターの為に造られました。マスターの命令は何がなんでも守り通します、です」
そう言った瞬間、突如後ろで止まっていたノーマルゴーレムがゴゴゴッ!!と音を建てながら動き出した。
不味い、もうやってきたか。
ノーマルゴーレムが動きだし、俺は少し焦りながらさや達を避難するように言った。
「全員、早く避難しろ!」
「夜兎君.......」
ノーマルゴーレムが動きだしても、依然とさやはこの場を動こうとしない。
動こうとしないさやに、俺は説得しようとしたが、横から夏蓮がさやの肩を掴んだ。
「行こう、さやちゃん」
「夏蓮ちゃん。でも......」
「大丈夫。あれはあんなのに負けるほど柔じゃない」
落ち着いた、真剣な目で夏蓮は言い、「でしょ?」と言いながらこちらを見る。
流石我が妹、分かってるじゃないか。
俺は夏蓮の言葉に応える様にふっと微笑む。
「二人とも、さやと夏蓮を頼んだぞ」
「あぁ」
「わん!(任せて!)」
俺の言葉にリーナとロウガは返事をし、リーナ達は部屋を出ていく。
さやは夏蓮に手を掴まれ、半ば強引に連れていかれた。部屋を出る最中、さやはずっとこちらを心配そうに見ていたが、俺はそれに手を振り笑顔で見送る。
その途中、何か伝え忘れたのかリーナは立ち止まり、こちらに向かって叫んだ。
「ゴーレムは皆胸の中に核が埋め込まれてる。その核を破壊すればゴーレムを倒せるぞ!狙うなら胸の核だ!」
リーナの助言に、俺は「分かった」と返事をする。
さや達が部屋を出ていくのを確認し、俺はメルの方を向き直す。 律儀に待っていてくれたようで、メルはこちらの様子を窺っていた。
「貴方は出ていかないの、ですか?」
「生憎、俺にはやることがあるんでな。ここを出るわけにはいかない」
俺はそう言うと、メルは「そう、ですか....」と言って目を瞑り、やがてやむ得ないとばかりに呟いた。
「なら、排除します、です」
「やってみろ」
再びゴゴゴッ!!と音を建てながら動き出すノーマルゴーレムに、俺は拳を構える。
超巨大モンスターにたった一人で挑む。
絵面は絶望的だが、やるしかない。
俺は絶対にあのクソガキの所に行くんだからな。
曲げられない信念を胸に抱き、俺はノーマルゴーレムへと向かっていく。
おまけ
【偏り】
「メルってずっとここにいるんだよな?」
「はい、もう何百年になります、です」
「外の事とか気にならないのか?」
「少し気になります、けど、私には検索機能があるので、外の情報には疎くはない、です」
「へー、どんなこと知ってるんだ?」
「今期アニメ良作多数とか、実は自分が友達だと思っている人の八割が友達じゃないとかーーーー」
「ネットだと何か偏るな」
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