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絶対にぶん殴る

 その時、私は何時もの様にメトロン様への定時報告をしていた。



「ーーーーー以上で定時報告を終わります。神谷夜兎にまだこれといった動きはありません」

「分かったご苦労様。引き続き頼むよ」

「はっ!!」



 定時報告が終わるとメトロン様は「地球かぁ」っと言って何やら懐かしそうに遠くを見つめていた。



「懐かしいなぁ」 

「行ったことがあるのですか?」

「うん、昔お忍びで。確かその時は今リーナがいる国では江戸とか云われてたかな」



 そう言ってメトロン様は懐かしそうに語る。

 どうやら昔隠れてメトロン様は地球に遊びに来ていたようだ。

 だが何だろうか。

 見た目幼き子供の姿をしているメトロン様から昔と言われても違和感しか感じないな。

 一応あれで年長者ではあるが。

 すると何か思い出したのか唐突に喋りだした。



「そういえば島も造ったっけ」

「島、ですか?」



 島と聞いて私は首を傾げると、メトロン様は「そうそう」と言いながら話続けた。



「あれは地球に行くようにって思って造った島なんだけど、その時何か楽しくなっちゃってね。色々改造したっけ」


 

 「いやー、あの頃はまだ若かったなぁ」と恥ずかしそうにメトロン様は頬を染める。

 だからそんな見た目をしたまま言われても違和感しかないんだが。

 


「しかしよろしいのですか?そんな島もし見つけられたら大事になるのでは?」

「大丈夫だよ。そうならないように手を加えてあるから」



 問題ないとはがりにメトロン様は軽く言った。 メトロン様が大丈夫と言うなら大丈夫だろう。

 未だ懐かしんだ顔をするメトロン様を余所に、私は一人納得した。



 




ーーーーーーーーーーーーー

  






「ーーーーーーという感じだったな」



 回想が終わり、リーナは話終えて疲れたのかふぅっと息をつく。

 


「何か、自由だな。神」

「神様がルール破るんだ」



 予想以上のフリーダムさに俺とさやは苦笑する。神って皆こんななのか。



「まぁ、メトロン様はそういう性格の上に【遊戯神】と云われるほど遊ぶのが好きなお方だからな。そうなるのも仕方ない」

 


 あのクソガキ【遊戯神】だったのか。

 俺はその事実に少し驚いたが、直ぐに納得した。あんな子供みたいな声をした奴にはぴったりだな。

 もしかしたらクラスを召喚したのも面白さ見たさに由るものだったりして。

 


「てか昔はってあのクソ.....メトロンはいったい何歳なんだ?」


 

 俺はリーナに聞こうとしたが、さっき心の中でクソガキと言ってしまったからつい口にも出そうになった。

 危ない危ない。これいうとリーナが怒るからな。現に無意識なのかちょっとこっちに反応してきたし。次からは気をつけなければ。

 


「詳しくは私も分からない。ただメトロン様が言うには500から数えていないらしい。というか貴様、さっき何か言いかけてなかったか?」

「いや、そんなことないぞ」



 どうやらギリギリセーフのようだ。

 勘づいてくるリーナに俺は知らないとはぐらかす。前ほどじゃないとはいえリーナの前でクソガキというのは止めた方がいいな。



「へー、神様って長生きなんだねぇ」



 俺の内心の焦りとは違い、さやは呑気に喋る。

 その呑気さが今は何か羨ましくなるな。

 少し俺に分けて欲しく思える。



「しかしメトロンって江戸の頃に一度来てたのか。島まで造って.......島?待てよ、まさか......」



 一人呟く俺は自分の言葉に何かが閃きそうになり、ぶつぶつと考える。

 少しの間考えると、俺は確認を取るためリーナに尋ねた。



「なぁリーナ、もしかしてその島にメトロンの所に行くための転移装置とかあったりするのか?」

「転移装置?あぁ、あるかもしれないな。メトロン様に異世界を行き来する力はないからもしかしたらあるかもしれない」



 リーナの言葉を聞いて俺は口許を緩める。

 


「そうか..........」

「それがどうかしたのか?」



 口許を緩める俺にリーナは俺の顔を窺う様にして聞く。

 自分では分からないが今俺の顔は多分笑みを浮かべているだろう。

 ただしそれは笑みは笑みでも悪い笑みだ。

 俺の中の考えが固まると俺は無言で立ち上がる。



「夜兎君?」   



 急に立ち上がった俺にさやは声を掛ける。

 つまりあれだろ。あの島にはクソガキの所に行ける転移装置があるかもしれないって事だろ。

 だったらやることは一つだ。

    


「あの野郎の所に行って一発ぶん殴る」

「殴るってメトロン様をか?」

「あぁ、悪いが止めても無駄だぞ」 



 あいつには散々な目に遭わせられてきたんだ。

 こんなチャンス無駄にするわけにいかない。

 例えリーナが止めてもだ。



「いや、別に止めはしない」



 だが俺の予想に反してリーナは俺を止めなかった。

 それに俺は驚いて「え?」と言いながら虚を突かれた顔でリーナを見る。



「止めないのか?」

「貴様の気持ちも理解できる。私も同じ目に遭ったからな。だから今回に関してはメトロン様には良い薬になるだろう。それに......」

「それに?」



 聞き返す俺にリーナはさっきの俺と同じ様に悪い笑みを浮かべながら言った。



「私も少しは痛い目をみればいいと思っている」



 悪びれない素直な気持ちが現れた言葉。

 その一言に俺は嬉しそうに頬を緩ませる。



「お前も段々らしくなってきたな」

「誰かさんのお陰でな」


     

 そう言って俺とリーナはふふふと笑い合う。

 まるで悪巧みを思い付いた子供のような黒い笑みだ。

 そんな様子にさやはついていけないのか「二人とも程々にねー」と言って苦笑する。



「だがいいのか?俺がメトロンの所に行けばお前が手を貸したとかで疑われないか?」

「安心しろ。その辺は上手くやる。思う存分やるがいい」

「そうか」



 こいつもあの頃より変わってきたな。 

 最初は狂った信仰者みたいな感じだったのに。

 良い傾向だ。

 俺とリーナは少しの間笑い合った後、島に行くにあたって綿密な計画を建てた。

 待っていろクソガキ、直ぐにそっちに行ってやるからな。

おまけ


 【予兆】


「ひぃ!!」

「どうかしましたか?メトロン様」

「いや、何だろう。何か寒気が......」

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