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すいません、それ事実です

今回多分今までで一番長いです。

「随分と色々あるな」



 部屋に入ったリーナの後を追い、俺は中に入ると目の前に広がる沢山の魔導具に目を動かす。

 部屋の中はカーテンが閉められているからか電気は点いているが少し薄暗い。

 壁際には棚、中央には机が並び、それぞれに沢山の魔導具が置いてありちょっとした博物館みたいになっている。

 


「何かの役に立つと思い置いてあるんだ。他にもまだまだあるがそれは全部この中だな」



 そう言ってリーナは部屋の隅に置いてあった見た目宝箱みたいな形をした箱を指差した。

 お、これってもしかして。



「これ無限収納か?」

「あぁ、正しくは収納箱。容量は決まっているが持ち運びに便利な魔導具だ。これは大型だから持ち運ぶのは難しいが他にも鞄型の奴もあるから持ち運ぶならそれを使っている」

「それなら何で並べてるんだ?」

「出しておいた方が直ぐに使えるからな。それにこの中は物が多すぎて取り出すのに時間がかかる」

「物を収納する魔法とかは?」

「?何だそれは?聞いたことがないな?」



 俺の言葉にリーナは知らないと首を傾げた。



「え?じゃあお前の【ボックス】ってスキルは違うのか?」

「あれは私専用のスキルだし物を入れるのにも制限がある。そこまで便利な物ではないぞ」



 それを聞いて俺は少し驚いた。

 どうやら俺の【空間魔法】みたいに物を収納出来る魔法はないみたいだ。

 異世界ならありそうなのにな。

 リーナの話を聞いて俺は改めて部屋を見回す。



「しかし本当に色々あるな」



 星の形をした魔導具、水晶みたいな魔導具、小箱みたいな魔導具。

 本当に様々な魔導具が置いてある。  



 見た目だけじゃいったい何に使うかなんて分からないな。

 中にはただの木の板や木彫りの馬みたいなのまであって、本当に魔導具どうか疑いたくなるレベルだ。



「本当に魔導具なのか?」

「見た目はあれだが歴とした魔導具だ。色々な場面で使えるぞ」

「わー、これ綺麗だね」

 

 

 すると先程まで拗ねていたさやがキラキラと綺麗な石がついたネックレスに触れようと手を伸ばした。



「あ、それはーーーーー」

「へ?」



 それを見てリーナは何か言おうとした瞬間、ネックレスに触れたさやの足元に小さな魔法陣が現れる。突然の事にさやは驚き棒立ちになると、一瞬にして姿を消した。



「あれ?さや?」



 突然さやの姿が消え、俺は辺りをキョロキョロと探すが姿がない。

 いったいどうなってるんだ?いきなりさやが消えたぞ。

 俺はこれはどういうことかをリーナに聞こうとすると、リーナはあちゃーっといった顔をしながら頭を抱えていた。

 


「やってしまった..........」

「どうしたんだ、リーナ?さやは何処に行ったんだ?」

「さや殿は何処にも行ってはいない。ただ見えないだけだ」

「え?まじで?」



 リーナに言われ俺は【気配察知】を使ってさやの居場所を確認してみたが、やはりさやの気配がない。



「気配も感じないんだが」

「さや殿のが触れたのは超隠密ペンダント。自分の姿は勿論の事、気配さえも消してくれる優れものだ。その代わり向こうの声がこちらに聞こえなくなったりするがな」



 何とも便利な魔導具だな。

 俺はさやが消えた方を見ながらそう思った。

 さやが消えた理由は分かったがまだ肝心な事が分かっていない。



「どうしたら元に戻せるんだ?」

「あのペンダントはさや殿の魔力を吸って動いている。さや殿が魔力の吸収を抑えられる事が出来ればいいのだがな、生憎そうもいかない」



 リーナは困ったように言った。

 さやは文字通りただの一般人だ。

 魔力の扱いなんて分かるわけがない。



「魔力がなくなれば自然に止まるから大丈夫だとは思うんだが」



 魔力がなくなればって、それ気絶することになるな。

 大丈夫だろうか。

 俺は消えたさやを心配していると、突然体が何者かに触れられたかのように揺れだした。



「うお!?な、何だ?」

「多分見えないさや殿がこちらに気づいて貰おうと貴様の体を揺らしてるんだろ。さや殿、すまないがそのまま解けるまで待っていてくれ」



 リーナがそう言うと俺の体の揺れが止まった。

 多分「そんなぁ......」と言いながらさやは落ち込んでるんだろうな。

 俺はさやを慰めようと下の方に手を伸ばすと何か固い感触がありそれをポンポンと叩く。 

 肩の辺りだろうか。動く気配がない。



 ーーーーー数分後、さやは床に倒れた所を発見され案の定気絶していた。

 今日は何か運が悪いな、さや。



「うぅ、酷い目にあったよぉ」

「大丈夫か?」

「すまない、私の管理不足だった」



 頭を垂れて疲れた顔をするさやに俺は心配の言葉をかけ、リーナも申し訳なさそうにする。

 気絶してからは一応俺がさやに魔力を与えてから目覚ませた。

 効率は悪いがさやの魔力量なら手に触れるだけでも十分だからな。



「でも、ちょっとあれは得したかな」



 暫く頭を垂れていたさやは何かを思い出したかのように少し小声になりながら顔をにやつかせる。

 

 

「夜兎君に撫でて貰えたぁ」



 少し嬉しそうに小声で一人呟くさやに俺はまさかと思い確認した。



「俺が触ったの肩だよな?」

「へ?あー、うん。肩だよ」



 若干何かキョドってる感じがするが本当だろうか。俺は疑わしい目でさやを見つめるとさやは目を反らす。

 まぁ、いいか。別に肩であろうとなかろうとどっちでもいいか。

 俺はさやを見つめるのを止め他の魔導具を眺めた。



「何だこれ?」



 その中にそれぞれ『○』『X』と書かれた二枚の板と握られる形をしたハンドルみたいなのが置いてある。

 何に使うんだこれ?



「なぁリーナ。これ何だ?」

「ん?あー、それは真実探知と言ってそのハンドルを握ったものの真実を暴く事が出来る代物だ。尋問をするときに使う」



 要するに嘘発見機みたいな物か。

 てかこれ尋問用かよ。

 凄いエンタメ感満載な形してるけどいいのかこんなので。

 俺は真実探知を見ながら微妙な気持ちになった。すると何かを思い付いたのかリーナは悪戯な笑みを浮かべ俺に話しかける。



「神谷夜兎。ちょっとそれを持ってみてくれ」

「?これか?」



 リーナに言われるままに俺は真実探知のハンドルを掴んだ。

 その瞬間リーナはここぞとばかりに早口で言った。



「神谷夜兎はさや殿と付き合っている!」

「は?」

「へ?」 

 

ブブーッ!!



 突然のリーナの発言に俺と未だ嬉しそうにしていたさやは間抜けな声をだし、それと同時に真実探知の『X』と書かれた板が光だし音が鳴り響いた。



「ふむ、どうやら違うようだな」 

「ちょっと待て、お前何やらせんだよ」

  


 何処か満足げな表情をするリーナに俺は真実探知のハンドルを持ちながらリーナを睨む。

 


「いや、この前違うとは聞いたんだがどうにも日頃見ていて確証が持てなくてな。どうせなら使ってみようかと思ったんだが、まぁ違ったようだしそう睨むな。いや違うんならいいんだ。違うんなら」



 そう言ってリーナはうんうんと頷く。 

 だから何で少し満足げなんだよ。

 


「だからって勝手にやるなよ」

「そ、そうだよリーナちゃん!わ、私と夜兎君は別にそういう関係じゃないから!!」



 呆れながら言う俺に対しさやは恥ずかしそうにリーナに文句を言う。 

 


「いやはやすまなかった。そうだ、さや殿も何か聞いてみたらどうだ?今なら何でも分かるぞ」

「え?何でも」



 特に悪びれた様子のないリーナの言葉に恥ずかしがっていたさやの心が少し揺れた。

 不味い、悪魔の囁きに騙されかけてる。

 


「まてまて、何勝手な事ーーー」

「貴様も構わないだろ。別にやましい隠し事がなければな、それともあるのか?」



 俺の言葉を遮る様にしてリーナは言う。

 こいつ、楽しんでやがる。

 俺を弄べると思ってるのかリーナはニコッと微笑み、俺はそれを見て少しイラッときた。



「隠し事なんてあるわけないだろ。何聞かれたって平気だ」

「なら大丈夫だな。それじゃあさや殿、質問タイムといこう」

「うん!」


  

 完全に悪魔の囁きに騙されたさやは嬉しそうに返事をする。

 何だろう、つい勢いで言ってしまったが......完全に乗せられたな。 



 リーナに乗せられ俺は自分の不甲斐なさに情けなくなる。

 でもまぁ、いいか。

 聞かれて困る事は特にないし。

 俺は少し情けなさを感じながらもそう楽観視すると、いよいよ質問タイムが始まった。



「それじゃあ、言うね」



 少し緊張したように顔を強張らせながらさやは質問を告げようとしている。

 いったい何聞こうとしてるんだよ。   

 無駄に緊張感を与えるさやにつられ俺は息を呑み、やがてさやは口が開いた。



「い、今好きな人はいますか!」


.........ブブーッ!!



 少し顔を赤くしながら早口でさやは聞く。

 すると何故か少し間を空けてから『X』の板が光り、音が鳴った。

 いきなり凄いこと聞いてきたな。

 


「何で今少し間が空いたんだ?」



 『X』の板を見ながら俺は首を傾げた。 

 それにリーナは少し考える素振りをし、思い当たる事があるのかゆっくりと喋る。



「恐らく貴様の中の答えが曖昧なんだろう。真実探知は貴様の記憶や魔力の僅かな揺れを探知して発動する。多分まだ恋愛とまでに至ってないが少なからず気になる人はいるという事だろ」


  

 そういうことだったのか。

 リーナの説明聞いて俺は自分の中の気になる人について頭の中を探ってみた。

 そんな人居ただろうか。

 


「夜兎君まだ好きな人いないんだぁ.......」



 俺に好きな人が居ないと分かりさやは何処となく安心した表情をしている。

 


「しかし好きな人がいないとは。これでは貴様の弱味を握るのは難しそうだな」

「お前それが狙いだったのか」



 道理でさっきから妙にノリノリだと思ったら、そんな理由か。

 


「日頃貴様には散々な目に合ってきたからな。ここで貴様の弱味を握っておきたい」



 それを本人の前で堂々と言うのもあれだと思うけどな。

 それに散々な目って、俺ってそんな酷い事してたか。ちょっと呪い使って授業サボったり、お菓子盗み食いした位だぞ。



「そういう訳でどんどん質問していくぞ」

「他に何聞こうかな」



 聞く気満々な様子で二人は楽しそうにしている。まだ続くんだ。これ俺拒否権ないよな。

 楽しそうにする二人を見て俺は思わず息を吐く。いったい何時まで続くんだろうな。




  



ーーーーーーーーーーーーーー








「まさかここまで何もないとは」

「逆に吃驚だよね」

 


 いったい幾つの質問をされただろうか。

 何回も質問をして若干くたびれた様子のリーナとさやに俺はもう止める様に勧めた。



「なぁ、もう止めないか?流石に聞いてる方も疲れてきたぞ」

「う~ん........仕方ない、次で最後にするか」



 流石に諦めが出始めたのかリーナは残念そうに言った。

 やっとこれで終わりか。意外と長かったな。

 


「とっとと言ってくれ」

「ではいくぞ。最近同じ歳位の女性と一緒に寝たことはあるか?」

  


 リーナの質問に俺は苦笑した。

 おいおい最後に何の質問が来るかと思えば。



「そんなんあるわけーーー」


ピンポーン!! 



 否定しようとする俺を嘲笑うかの如く『○』の板が光り、音が鳴り響く。 

 予想外の事に俺は固まりゆっくりと『○』の板の方を向く。

 き、聞き間違えかな......。



「いや、だからそんなんあるわけーーー」


ピンポーン!!


 

 また否定しようとする俺を遮る様にして『○』の板が光り鳴り響く。

 どうやら聞き間違えじゃないみたいだ。

 


「おい、神谷夜兎.......」



 するとリーナが声を震わせながら俺に近づいてきて俺の襟を掴む。 



「貴様同い年の女性と一夜を共にしたのか?」

「いや、待て。これは何かの誤解ーーー」

 

ピンポーン!!



 リーナに襟を掴まれ弁解しようとする俺に無慈悲な音が鳴り響いた。

 あ、弁解の余地なしか。

 


「そ、そんな.......夜兎君が他の女の人と......」



 一方でさやは絶望したかのように体を震わせ、今にも泣きそうな顔をしている。

 これは不味い。急いで誤解を解かなければ。

 


「神谷夜兎.....貴様恋愛対象でもない女性と一夜を過ごすとはどういう了見だ!!」

「待て!誤解だ!!何かの間違いーーー」


ブブーッ!!



 最早否定すらさせてくれないようだ。

 否定しようとすると今度は『X』の方が鳴り出した。

 くそ!こんなの持ってるから駄目なんだ!!

 俺は持っていたハンドルを床に落とし、襟を掴みながら今にも怒り出しそうなリーナに必死に弁明する。



「待て、話を聞いてくれ。俺は同い年位の女と一緒に寝たことはない!」

「じゃあ何故真実探知が反応するんだ!!」

「そんなの知るか!兎に角、俺は本当に同い年位の女と一緒に寝たことは.......」



 だが、必死に弁明する途中俺はあることを思い出した。

 そういえば、前にレッドドラゴンから助けて貰ったお礼が言いたいとか言って夏蓮が俺の布団の中に入ってそのまま一緒に寝たな。

 あの時は成り行きでそうなったが、今思えば添い寝したことになるのか。



 俺はそれを思い出した瞬間血の気が引いた。  すいません、それ事実です。



「その反応、やはり貴様やったのか!!」

「そんな、そんな、夜兎君.......」



 俺の反応を見て確信したのかリーナは俺の体を揺らしながら怒り狂い、さやは既に目から涙が溢れている。



「待て、ちょ、待ってくれ!確かにそれは認めるがお前らが想像していることは何一つしていない!!だから俺の話を聞いてくれ!!」

「黙れこの変態!!」

「夜兎君、そんなぁ.......」



 怒り狂うリーナに泣き出すさや。

 この二人から誤解が解けるのはかなり先の事だった。

 もうあんなカオスな空間は御免だ。

 誤解が解けた後、俺は少しやつれた気がするのは気のせいだろうか。

おまけ


 【ピンチ】


 夜兎が誤解を受けていた頃のロウガ。


「むっ!主のピンチ!助けなくちゃ!!」

『貴様それでも男か!!』

『夜兎君が、夜兎君がぁ......』

『待って!!お願い本当に待って!!それ誤解だから!!!』

「........やっぱり止めとこ」



ーーーーーーーーーーーー


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