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天使に人間の常識は通じない

矛盾が生じてたので修正しました。

 放課後になり、俺とさやは昼休みに話した通りリーナの家に訪れていた。



「ここが私の家だ」

「おぉ........」

「すごぉい........」



 リーナに案内され俺とさやが目にしたのは思わず顔を見上げてしまう程の超高層マンションだった。茶色の塗装に細やかな模様や装飾が施され、見た目何十階とあるだろう高さがある。

 確かここはここら一帯で一番高級なので有名なマンションだ。

 え、まじでここなの。



「お前こんなとこに住んでたのか」

「ここは家から飛ぶのに便利だということでメトロン様が用意してくれたんだ」



 そんな理由でここにしたのかよ。

 俺は目の前にそびえ立つマンションを眺めながら神の融通さに何ともいえない気持ちになった。

 


「な?私の言った通り普通だったろ」

「いや何処がだよ」

「え?」

「いや、え?じゃねぇよ。これを普通といったら俺達の家は何だ。普通以下か」



 あっけからんと言うリーナに俺はそう言った。

 こいつの中の普通ってどうなってるんだよ。

 俺はそんな事思いながらさやの方を見ると、さやは未だにマンションを見ながら「うわぁ.......」っと感嘆の声をあげていた。

 これが普通の反応だよな。

 


「何をしてるんだ?早く行くぞ」



 いつの間にかマンションの入り口に立っていたリーナに促され、俺とさやはマンションの中に入った。



「うわぁ......」

「すごぉい........」



 中に入ると俺とさやはまた感嘆の声をあげた。

 凄いと思っていたがここまで凄いとは。

 天井にはシャンデリアに高級そうなソファーやカーペットが並び、何処かのホテルかといいたくなる。



「エレベーターはこっちだ。ついてきてくれ」



 リーナに言われ俺達はエレベーターへと移動する。



「夜兎君、私何か場違いな気がしてきたよ......」

「奇遇だな、俺もだ........」



 この場違いな雰囲気に俺とさやは肩身が狭く感じた。一般庶民な俺達には敷居が高い気がする。

 何気なしにくるんじゃなかったな。 

 


「このまま最上階に行くぞ」



 エレベーターに入りリーナはそう言いながら最上階のボタンを押した。

 もう驚かない。驚かないからな。

 俺は当たり前みたいに言うリーナの発言に内心堪えながら思った。

 こんなのに一々驚いていたらきりがない。

 高級マンションの最上階。

 凄そうな所だな。



「にしても何か凄い所だね、ここ。お金とか大丈夫なの?」



 驚きすぎて乾いた笑みを浮かべながらさやはリーナに聞いた。



「金か?そこは経費扱いだ」

「え?経費なの?」

「あぁ、元々私は神谷夜兎の監視を目的としてここにいる。これはその為の経費だ。まぁ、この世界の金は人間にとっては重要かもしれないが我々は違う。そもそも貨幣が違うからな。そんなのはメトロン様がいくらでも作ることが出来る。だが勿論生活費は私の給料から出されているけどな」



 リーナの言葉にさやは流石に予想外すぎたのか絶句している。 

 絶句しているさやにリーナは理由が分からんとばかりに首を傾げた。

 


 いや、何その「どうした?」みたいな反応。

 金作るとか何でもありすぎるだろ。

 そりゃあ絶句もするわ。

 驚きな天使の間事情に俺は内心ツッコミが堪えなかったが、これで分かった。



「さや、もう深く考えるな。俺達とリーナの間じゃあ常識が違いすぎる」

「そ、そうだね..........」



 天使と人間では色々と違うんだな。

 様々な天使の事情に俺とさやは疲れた顔をするが、これからまだありそうな天使と人間の差に更なる疲労感を覚えた。





ーーーーーーーーーーーー





「ここが私の家だ」



 そう言ってリーナはカードキーをかざしドアを開ける。ここまで来るのに随分と苦労した気がする。マンションに入ってエレベーターに乗っただけなのに何でこんな疲れた感じがするんだろうか。



「..........広いな」

「..........広いね」



 リーナに通されリビングに入った俺とさやはただただそう言った。

 驚きすぎて何か逆に冷静になってきたな。

 リビングは一人暮らしには無駄に広い位の広さで、ベランダは最上階だけあって街全体を一望出来る。



「お茶を持ってくるからそこで寛いでくれ」



 リーナに言われ俺とさやはソファーに座りリーナを待った。



「何か、凄い所に来ちゃったね」

「そうだな」



 ソファーに座り俺とさやは苦笑しながら話す。

 確かに凄い所だよな。

 しかしこれは備え付けだろうか。

 ふかふかなソファーに壁に埋め込まれた巨大なテレビ。これぞセレブって感じだ。



「でもまぁ、それ以外は特に何もないよな」



 リビングを見渡したが特に変わった所は何もない。あるのは高級そうな地球の物だけ。

 異世界的要素な物はなかった。

 もしかしたらリーナからしたらそれが普通なのかもな。

 異世界要素のない地球での暮らし。

 それがリーナにとっての普通な事かもしれない。

 


「持ってきたぞ。ん?どうしたんだ?そんな納得したかのような顔をして」 

「いや、何でもない」



 腕を組ながら一人そう納得する俺にリーナは聞いてきたが、俺は適当にはぐらかす。

 ちょっとした価値観の違いか。

 俺はそう思いながらリーナのお茶を堪能する。



 お茶を飲みながら俺達は雑談を交わしていると、



「ごめん、ちょっとお手洗いに行くね」 



 さやは急に立ち上がった。

 そういえば雑談中美味しいって言ってお茶を何杯も飲んでたな。  

 そりゃあトイレも行きたくなる。



「それならリビングを出て奥の右の部屋だ」

「分かった」



 リーナに言われさやはリビングを出ていった。

 さやが出ていってから俺とリーナは少しこの家について話した。



「にしても無駄に広いよな、ここ」

「そうなんだ。使いやすくていいんだが、広すぎて最初は落ち着かなかったな」

「そりゃあそうだよな」



 こんなだだっ広い家に一人で住むのは落ち着かないだろうな。

 広すぎて寂しくなりそうだ。

 リビングを見回しながら俺はそんなことを思っていると、ここで気になっていた事をリーナに聞いてみた。



「ここに魔導具的な物ってないのか?」

「魔導具?あー、あるぞ。それは別の部屋に置いてある」



 あるんだ魔導具。

 俺はリーナから魔導具の事を聞いて少し興味を持った。

 少し気になったので俺はリーナに魔導具について聞こうとしたら、



「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」



 部屋の外からさやの悲鳴が聞こえた。

 


「さや!?」

「どうしたんだ!」



 突然悲鳴が聞こえ俺とリーナは慌ててリビングから出ると、そこには網に捕まり空中に浮いているさやの姿があった。

 


「だ、出してぇ.......」

「さや、いったいどうやったらそうなったんだ?」



 網に捕まり助けを求めるさやを見ながら俺はそう言った。

 家の中でこんな古典的な罠に引っ掛かるってあるんだろうか。

 網の中で若干涙目になるさやを眺めながら俺はそんなことを思っていると、リーナが申し訳なさそうにしながら言ってきた。

 

 

「すまん、これは私が付けた魔導具によるものだ」

「魔導具の?」

「あぁ、さや殿。捕まる前にこの部屋に触れてないか?」



 リーナは魔法陣の絵が描かれたドアを指差した。何この怪しさ満点のドア。



「う、うん。何か変わってるなって思ってちょっと触った」

「これは私以外が触ると触った者を捕縛する魔導具がつけられていたんだ。防犯用として」



 防犯用って。 

 こんなところに誰が盗みに来るんだよ。 

 よく見ると天井に網がくっついていない。

 網自体が浮いているようだ。

 本当に魔導具なんだな、これって。

 


「防犯用魔導具か」

「便利だろ」

「確かに便利だが、必要あるのか?」

「念のためだ。あった方が安心するだろ?」



 それはそうかもしれないが、肝心な罠がこんな古典的なのでいいんだろうか。

 何か抜けられそうな気がする。



「呑気に喋ってないで早く下ろしてよぉ.....」



 呑気に会話をしている俺とリーナにさやは早く下ろすように催促してきた。

 あ、そういえばそうだったな。

 魔導具を解除して下ろされたさやは放置されたことに少し拗ねていたが、これで魔導具をお目にかける事が出来た。


 

「他にもないのか?」

「あるぞ、何なら見てみるか?」

「いいのか?」

「あぁ、特に危険な物でもないからな」


 

 そう言ってリーナは魔法陣の絵が描かれたドアの中に入っていった。

 そこにあるのか。だから防犯してたんだな。

 そういうわけで、俺はリーナに他の魔導具を見せて貰った。

おまけ


 【チョロい】


「放置された......」

「悪かったって。そんな拗ねないでくれよ、さや」

「私達が悪かったから」

「別に拗ねてないもん......」

「ほら、機嫌直しにこれでも食べるか。お茶請けのクッキー」

「......食べる」

「チョロい」

「チョロいな」



ーーーーーーーーーーーー



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