クラスの派閥
異世界召喚から三ヶ月経っての話です。
その頃、異世界召喚から三ヶ月が経ち、夜兎の中学のクラスメイト達は今日も訓練に勤しんでいた。
「よーし、今日はこれまで!!」
自分達の教官である騎士の人の号令を聞き、クラスの剣士組はふぅっと一息つく。
訓練して三ヶ月も経つともう皆慣れてきているのか疲れ果てている者誰もいない。
元々成長速度が一般より速いのがクラス達勇者の特徴。
三ヶ月で慣れるのも当然である。
「皆、お疲れ様!!」
その中でもやはりこの男、天上院輝は他の者より郡を抜いている。
訓練に慣れたと言っても全員息は乱れ汗は掻く。だがそれに引き換え天上院は息を一つも乱さず汗は一つも掻いていない。
この天上院の余りの成長振りには、騎士団ももう天上院に教える事はないと匙を投げる程だった。
余裕とばかりに天上院は剣士組の皆に労いの言葉を掛けていると、外から黄色い歓声が聞こえ出した。
「きゃあ!!ヒカル様!!」
「こっち向いてー!!」
「お疲れ様です勇者様!!これ受け取ってください!!」
「これ作ってきました!!よければ食べてください!!」
訓練場の外は市民達の、特に若い女子でごった返し訓練が終わった天上院に声を掛ける。
全体の士気を上げるために一般の人は訓練場だけなら見物出来るようにしてあり、その効果は絶大で人に見られる事によってクラスの訓練によく励む様になった。
女子達の黄色い歓声が送られる中天上院はその女子にニコッと微笑むと黄色い歓声の声は更に大きくなる。流石は天然たらし。
そんな天上院を見て一人面白くなさそうにしている者が一人いた。
「何やってるの?天上院君」
天上院の隣で転移してきた天道美紀がじと目になりながら天上院を見つめていた。
「やぁ美紀。丁度今あの娘達から贈り物を頂こうと思ってね」
「態々受け取るの?」
「相手に悪いからね」
「ふーん、そう........」
美紀はそう言うとじっと天上院を見つめた。
「どうしたんだい?そんなにむくれて?」
「別にむくれてない」
美紀はそう言ってぷいっとそっぽを向く。
天上院はそれに不思議に思いながら首を傾げた。美紀の気持ちはクラスの誰もが知っている。
その思いの相手である天上院が気づかないのは可笑しな話だが今更そんなこと気にする者は誰もいない。何時ものことだから。
自分の思い人が他の女に猛烈なアタックを受けている。その事実が美紀にとって面白くないのは当然な話だ。
「やっぱりあれが不味かったかなぁ.......」
小声で美紀はそう呟いた。
天上院は見物の女子からの贈り物を受け取るのに忙しくて聞こえていない。
美紀はこれまでの事を思い返す。
この一ヶ月色々な事が起きた。
初のダンジョン探索に盗賊団の壊滅。
モンスターの大群の殲滅にレアモンスター討伐。
兎に角色々あった。
中でも極めつけなのが盗賊団の壊滅とモンスターの殲滅だ。
この二つが天上院の人気を底上げしたのだろう。ファンが前よりの比ではないくらいに増えている。
美紀からしたら思い人が讃えられるのは嬉しいことだが流石にここまで来ると気分はよくない。
(誰にも渡さないんだから!!)
心の中で負けじと美紀は決意を固める。
だが変わったのは天上院だけではない。
「お疲れ様。はいこれ」
「おぅ、ありがとな」
「大丈夫?疲れてない?」
「もう慣れたさ。平気平気」
「これから暇なんだが今から一緒にどっか行かないか?」
「本当!?うん!行こう行こう!」
訓練場の隅でクラスの男子とこの世界の女子が楽しそうに会話をしている。
この一ヶ月の間でこの世界で彼女を作る男子が現れ始めた。
盗賊団の時やモンスターの時で、その男子に見惚れた者や個人的に助けられた者等理由は様々だが、彼女を作った男子達は彼女に良いところを見せようと日々頑張るようになった。
そして頑張るようになったのは彼女が出来た者達だけではない。
「くそぅ!!あんなにイチャつきやがって!!」
「あいつ最近までこっち側だったのに.....!!」
「俺だって何時か彼女を作ってやる!!」
「その為にも特訓だ!!」
「俺はやるぞ!!彼女を作る為に!!」
イチャつくカップルを見ながら未だ彼女の出来ないクラスの男子は悔しそうにしていた。
彼女が出来ない者も自身に彼女を作る為に日々奮闘している。
最早帰る気があるのかと疑いたくなるがやる気があるのは良いことだ。
それに誰も咎める者はいなかった。
最近では【リア充組】と【非リア充組】という二つの派閥に別れ度々対立していることがあるが特に目立った事は起きていない。
何故か異様にやる気がある。
教官の騎士の人達にはそう見えているだけだろう。
「行くぞお前らぁ!!特訓だ!!」
「「「おぉ!!」」」
「何?特訓?じゃあ僕もーーー」
「「「「リア充は来るな!!」」」」
特訓という言葉に反応する天上院にクラスの【非リア充組】は一斉に止めに掛かる。
異世界召喚から三ヶ月、天上院達クラスは今日も異世界ライフを満喫中であった。
おまけ
【悩殺記録】
「きゃ!!(ガシャン!!」
「大丈夫ですか?」
「あ、はい大丈夫....です」
「怪我ないようで良かったです(キランッ」
「あ、あぅ~〃〃」
「これで何人目だっけ。天上院に悩殺されたの」
「100からもう数えてねぇよ」
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