喜び過ぎて絡みづらくなる奴ってたまにいるよな
ある意味のデート回
天気の良い日曜の朝。
小鳥がチュンチュンさえずる中寝起きの俺は電話越しのおっさんにモーニングコールを受けていた。
『おーっす夜兎、昨日はよく眠れたか?石田のおじさんがモーニングコールしに来たぞー』
「切るぞ.......」
朝から聞くおっさんの声に寝起きで若干不機嫌な俺は耳から携帯を離し通話を切ろうとする。
『だぁー!待て待て!!冗談だから!!少し頼みがあるんだ話を聞いてくれ!!』
通話を切ろうとする俺におっさんは慌てて止めに掛かった。
全く、折角の日曜に何でおっさんの声で起きなければならんのだ。
「んで、話ってなんだ?」
朝からふざけてくるおっさんに俺はため息をつきながら携帯を耳元に戻す。
話を聞くになってくれた俺におっさんは少しホッとし本題を話した。
『いやな、急で悪いんだが夜兎、お前にはーーーー俺とデートして貰う』
ーーーーーーーーーーーーーー
俺は何をしているんだろうか........。
「おぉ!!こりゃあ凄いな!久し振りに遊園地何て来たが今こんな風になってんのか!!」
俺の隣では私服のおっさんがゲートの前で様々なアトラクションを見ながらはしゃいでいる。
どうして俺がおっさんと遊園地なんかに.....。
最初おっさんからデートしようと言われたとき、通話のボタンを切るのを通り越して思わず携帯を投げそうになった。
誰がおっさんとのデートで喜ぶ奴がいるんだ。
だがまた慌てて理由を話すおっさんの話を聞いてその手が止まる。
どうやら今来ている遊園地である取引が行われるらしい。
その現場を抑えるために俺に協力を依頼したいとのことだ。
そんな漫画みたいな事があるのかと言いたくなるがあるものはある。
てかそれならそうと初めからそう言え。
もう少しで携帯を壊すところだったぞ。
「てかなんでそんな大事な事におっさん一人しかいないんだよ」
周りに刑事らしき人はいない。
見たところ来てるのは俺とおっさんしかいないんだが。
「そりゃあお前、この事知ってるの俺とお前しかいないからな」
おっさんの言うことに俺は「は?」と言って間抜けな声を出した。
おい、今何て言った?
「俺とおっさんだけって、こんな大事な事に何でなんだ?」
「実は俺は今まである指名手配犯の捜査をしていたんだがな。そいつを追っかける途中でこの取引に辿り着いたんだがーーー」
そう言うとおっさんは俺の肩にポンッと手をやる。
「そんな危険な事に他の同僚を巻き込む訳にはいかないだろ?」
俺の肩に手をやりながら決め台詞っぽくおっさんは言う。
若干格好つけながら言うおっさんに俺は何かムカついた。
いや同僚は駄目で俺はいいのかよ。
俺は冷めた目をしながらおっさんに本音を聞いた。
「んで、本当の所はなんだ?」
「協力求めるの面倒」
俺の言葉におっさんは直ぐに言った。
おっさんの本当の理由に俺はうわっとなりながらまた冷めた目でおっさんを見る。
理由が面倒だからって、あんた本当に刑事かよ。
冷めた目で見る俺におっさんは少し焦る様に言った。
「べ、別にいいだろ!この犯人は前から追っていてやっと見つけたんだから!それにお前がいれば下手に協力求めるよりいいだろ!!」
すると焦ったように言っていたおっさんは今度は得意気な顔になりなから言った。
「それにお前も飯につられて来ただけだろ。人のこと言えないぞ」
おっさんの言うことに俺は黙り込んだ。
俺がこんなおっさんとのデート紛いな事にタダで付き合う筈がない。
実はここの遊園地には絶品と称されているパンケーキがある。
それは何回もテレビで紹介され、ネットでも遊園地でやってるのが勿体ないと言われている位称賛されている絶品グルメだ。
おっさんから今回の報酬としてそれを奢ってやると言われ俺はこの頼みを引き受けた。
二度も食べ物でつられるとは我ながら情けない。
「しゃーないだろ。旨いものには勝てん」
「だったらその旨い物の為にも頑張ろうぜ、相棒」
おっさんはそう言って俺の肩を組みながらははは!と笑う。
全く、調子のいいおっさんだ。
俺は軽くため息をつきながらおっさんと一緒に目的の場所まで歩いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「本当にここなのか?」
「あぁ、情報ではこの中で取引が行われる」
今俺とおっさんは遊園地では定番のアトラクション、お化け屋敷の前にいる。
おっさんが言うにはここで取引をするらしいが本当だろうか。
何か段々不安になってきたな。
「よし、取り敢えず入るぞ」
そう言って俺とおっさんは列に並びお化け屋敷の中に入った。
列に並び俺達の番が来て中に入ると、中は薄暗く通り道の脇がライトで照らされている。
「この先に従業員しか知らない隠しスペースがあってそこで取引が行われるらしい。先に行って待ち伏せするぞ」
顔をキリッとさせながらおっさんは渋い感じに言う。声だけなら頼れる刑事みたいに聞こえるんだが、
「それは分かったがーーーー何でさっきから俺の後ろにへばりついてるんだよ」
格好を見ると台無しである。
お化け屋敷に入った直後何故かおっさんは俺の後ろで肩をぎゅっ!!と掴んだまま離れよとしない。しかも若干震えてないか。
「き、気にすんな。ただ何となくやっているだけだ」
「そうかじゃあこの俺の肩をへし折るかの如く掴んでいる手を離してくれ」
「い、いやお前何か肩凝ってると思ってな。ちょっとマッサージをしてやるよ」
そう言っておっさんは頑なに俺の肩から手を離そうとしない。
こんなときにマッサージとか言い訳に無理があるぞ。
「あんたもしかして怖いの無理なのか?」
「な、何言ってんだ!?こ、怖い訳ねぇだろ!!」
俺の言葉におっさんはあからさま動揺しながら言う。いやめっちゃ怖がってんじゃん。
「そうか。じゃあ先に行ってくれよ。俺じゃあ取引場所が分からないからな」
そう言って俺はおっさんを前に出し、意地の悪そうに言う。
流石のおっさんもこれには勘弁して欲しいのか潔く認めた。
「すまん、怖いから先行ってくれ」
自白するおっさんに俺は少し呆れた。
「それならそうと先に言え」
「だってよ、いい年したおっさんがオバケ怖いとか気持ち悪いだけだろ」
「確かにそうだな」
「そこは否定してくれよ........」
いやこれが可愛い女子だったら許せる話だが、おっさんがオバケ怖いとかそれ普通に考えたら気持ち悪いだろ。
そう言うのが許されるのは女子限定だ。
「だから同僚とか一緒に行きたくなかったんだよ........」
俺の後ろでおっさんがぶつぶつと何か言っている。それも本音の一つか。
まぁ、確かに知り合いにこんな姿見せたくないよな。
おっさんはびびりながら俺の後ろを歩いていると、ゾンビのお化けが驚かしにやって来た。
「うぁああ!!!」
「ぎゃぁぁあ!!」
急に出てきたゾンビにおっさんは俺を盾にしながら絶叫する。
そのあまりの絶叫振りにお化け役のゾンビも少したじろぐ程だった。ここで相手がおっさんじゃなくて釜石さんとかだったら可愛いと思えるんだろうなぁ。
後ろで絶叫する野太い悲鳴を聞きながら俺はそう思った。
だがおっさんは絶叫するがしっかりと肩は離さずさっきより肩を掴む力が強くなっている。
あ、ちょっと肩がミシミシいってる。
まぁ、痛くないんだが。
おっさんは俺を盾にしてゾンビの所を抜けると俺は気を紛らせる為に何気なしに聞いた。
「そういや、何でそんなにお化けが嫌いなんだ?」
何気なしに聞く俺におっさんは少し黙ると徐に喋りだした。
「ガキの頃肝試しをやったときに俺は一人で回ってたんだが、そん時見ちまったんだよ」
「見たって、何をだ?」
「そんなもん決まってるだろ。幽霊だよ」
おっさんは震え声になりながら語り続ける。
「歩いていた墓地の向こうで白い手がわんさか現れて俺を手招きするかのように手を揺らすんだ。それを見たとき俺は不覚ながら近づいちまった。そん時はまだ幽霊とか信じてなかったからな」
するとおっさんは思い出したのか体が段々震えてくる。
「だが近づくと白い手の一つが俺の足を掴んでこっちに引きずり込んできたんだ。俺はそこで自分が今やばい状況にいるって分かった。そっから俺はもう片方の足で白い手を蹴って逃げだした。それはもう無我夢中で走ったぞ。気づいたらゴール地点でもう白い手が見えなくなっていた」
するとおっさんは少し遠い目をしだした。
「あれから幽霊全般が、果てには作り物でも苦手になっちまった」
そしておっさんは乾いた笑みを浮かべる。
「ほら?笑えよ?こんな惨めなおっさんをよ」
おっさんはそう言うが俺は全然笑えなかった。
いや、何処にも笑える要素一つもなかったぞ。え、何そのリアル体験。
何気なしに聞くもんじゃなかったな。
そんなまじな体験してたのかおっさんは。
「.......何か、さっき気持ち悪いとか言って、すまん....」
「いや良い。気にするな」
急にしんみりとした空気になり俺は空気を変えるべく話を変えた。
「そういや、取引の時間は大丈夫なのか?具体的な時間とか聞いてなかったが」
俺の言葉におっさんはピタリと足を止めた。
おっさんが止まったことにより必然的に俺も止まり俺はおっさんの顔を見る。
「悪い、今何時だ?」
おっさんの質問に俺は無言で着けていた腕時計を見せる。
するとおっさんの顔は段々焦りが生じ青くなっていく。
おいおいまさか.........。
「やばい、もう取引始まっている」
取引が始まっていると分かりおっさんは俺から手を話して前を走った。
「おい!急ぐぞ!」
後ろを向きながら走るおっさんに俺は止めようと声をかけようとする。
あ、今一人で前に出たら.....。
「あだっ!?」
だが声をかける前におっさんは何かにぶつかり少し後ずさる。
少し後ずさりおっさんは「何だ?」と言って前を見るとおっさんの体が固まった。
「うぁ~!!」
おっさんの目の前には血だらけになった幽霊がおっさんの肩を掴み脅かしてくる。
それにおっさんは固まったかと思うと体をわなわなと震わせ、やがて絶叫した。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
目の前の幽霊を押し退けおっさんは奥へと走り、その声は野太くお化け屋敷中に響く。
あーあ、言わんこっちゃない。
俺は走り去るおっさんを追いかける為に奥へ走ると、おっさんが誰かとぶつかって倒れていた。
「大丈夫か?おっさん」
「いててっ。まさかあんな変な所から人か出てくるなんて」
おっさんは頭を抑えながら目の前でのびている一緒にぶつかった人に声を掛けようとするが、倒れている人を見ておっさんが「あ」と言って指差した。
「こいつだ!」
「へ?何が?」
「こいつが俺の探していた指名手配だよ!!」
そう言っておっさんは少し興奮しながら倒れている人に手錠をかける。
まさかぶつかったのが狙っていた指名手配だとは。運がいいなおっさん。
「ん?待てよ」
その犯人がここにいるって事は他の奴が何処かに.......。俺はキョロキョロと辺りを見回していると、こちらを覗いている一人の人影が見えた。
あ、あいつか。
目があった瞬間人影は逃げ出したが、俺は逃がす筈もなく【首トン】で気絶させた。
よし、これで犯人確保だな。
「よっしゃあ!!これで逮捕だ!!」
俺はもう一人の犯人を担いだままおっさんに近づくと、おっさんは高々と叫びながらは喜んでいた。
俺はそれに横やりを入れるようにおっさんに確認をとる。
「ちゃんとパンケーキ奢れよ」
すると上機嫌なのかおっさんは笑顔になりながら待ったをかけた。
「おいおい~、何も仕事してないのに見返りを要求する気かぁ~。随分虫がいいな~。んぅ?」
暗がりのせいで俺の脇に担いでいる人がみえないのか、おっさんはそう言いながら俺の肩を組んでくる。うざったらしい言い方をしながら言うおっさんに俺は少しイラっと来た。
「そうか、じゃあ俺もそれ分の働きをしてやるよ」
そう言って俺は手錠を掛けられたもう一人の指名手配を担いだ。
「俺はこのまま転移でこいつをおっさんの車に運んどいてやるよ。なに、今日中には起きないようにしておくから安心しろ。おっさんはこのままお化け屋敷を出てパンケーキのあるレストランに行っててくれ。一人でな」
最後の部分を強調しながら言う俺におっさんは意味が理解出来たようで段々顔が蒼白になっていく。
さっきまで犯人捕まえた喜びで忘れていたかもしれないがここはおっさんの苦手なお化け屋敷だ。
先はまだ長い、精々楽しんでくるがいい。
「ちょ、ちょっと待て。さっきのは冗談だ。俺達相棒だろ?一緒にやった仕事は最後までやり遂げようぜ。なっ、なっ?」
俺を行かせまいと必死に弁解するおっさんに俺は何も言わずニコッと笑顔になる。
俺の笑顔におっさんもつられ笑顔になると、俺は笑顔のまま言った。
「じゃあな」
「ちょ、お願い!まっーーーー」
おっさんが言い終わる前に俺は駐車場まで転移した。
ふっ、調子に乗るからこうなる。
次は気を付けるんだな。
俺はしてやったりとした感じに鼻で笑いながらレストランに向かった。
その後レストランに着きおっさんの顔を見ると生気の抜けた表情になっていたのは、言うまでもない。
警察事情とか一切知らないまま書いたので突っ込み所が多々あるかもしれませんがご了承ください。
おまけ
【ホモですか?】
お化け屋敷並んでいる最中にて
「ねぇ見てあの二人」
「男二人ってどういう関係なんだろう?」
「片方結構格好よくて、もう片方は中年のおじさん。この組み合わせって......まさかホモ!?」
「え!?でもあんな年の差があるんだよ?」
「きっとあの格好いい学生の子にお金上げてるに違いないわ」
「まさかの援交!?」
「怖いね~」
「怖いね~」
「.........おっさん、今だけ無性に帰りたくなったんだが」
「言うなよ......俺だってそうだ.....」
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