切実に帰って寝たい
リーナの口から放たれた言葉に俺は目を見開いた。そして驚いた様に言うと、
「メトロン......って誰だっけ?」
頭に?マークを浮かべながら首を傾げた。
俺の反応にリーナは若干「は?」と言った様子になっていたが、直ぐに理解したのか怒りの顔に変わった。
「貴様!自分にスキルを与えてくれた御方を忘れたのか!!」
憤慨するリーナに俺は暫し思い出そうとう~んと唸っていると、突然思い出したのか「あ!」と言ってやっとメトロンの事を思い出した。
「あー、あの俺のいたクラスを異世界送りにしたガキのことか」
「ガキっ!?き、貴様!!忘れるだけに飽きたらずメトロン様を愚弄するのか!!」
俺の言葉にリーナは更に憤慨した。
その顔は正に鬼の形相で俺はその顔に「おー怖」と肩を竦めた。そこまで怒るか普通。
「んで、そのメトロン様は何で今更俺を異世界に連れていこうとしてるんだ?」
俺の冷静な質問にリーナも少し冷静になったのか、少し深呼吸をした後に言った。
「本来なら40人もいる勇者の中で一人だけ行けなかった所でこちらは何もするつもりはなかった
。39人もいれば十分だからな。だが先日のモンスターの件で貴様の強さが並みの勇者の強さでないことが分かり、メトロン様はこれは使えると言うことで急遽貴様を向こうの世界に連れていく事になった」
随分と勝手な話だな。
俺はリーナの話を聞いてそう思った。明らか利用する気満々じゃねぇか。
ていうか39人もいるなら俺別にいらないだろ。何で態々連れてこようとするんだ?
しかもモンスターの件って、あれ全部見られてたのかよ。だったらお前らで何とかしろよ。
こっちは酷いめにあったんだぞ。
俺は内心悪態ついていたが、ここである考えが頭をよぎった。
「なあ、もしかしてあのモンスターの件はお前らの仕業なのか?」
俺の言葉にリーナは言葉を詰まらせた。
あ、これは図星か。
言葉を詰まらせるリーナに俺はそう思い、やがてリーナは歯切れの悪そうにしながら言い出した。
「実を言うとそうなんだ。メトロン様はモンスターの管理もしておられるんだが、あの時間違えてこの世界にモンスターを創造してしまったんだ。創造したモンスターは取り消すことは出来ないからせめて座標だけでも変えようとメトロン様が考えた矢先ーーーー」
「俺の所に送ったと」
俺の言葉にリーナは「そうだ」と言って頷いた。いや、そうだじゃねぇよ。あれお前らの仕業かよ。
じゃあ何か、あの妙に見計らった様にモンスターを出現させてたのはあのメトロンとかいうクソガキの悪ふざけか。
だとしたら一発殴りに行かなければな。人をおちょくったことを後悔させてやろう。
「てかそれならお前らで解決しろよ」
俺は率直に思ったことをリーナに言った。
「本当は余り世界に対して干渉してはいけないのだが、前に異世界召喚をしたせいでこれ以上は上の神様にばれる恐れがあったんだ。それに幸い貴様がいたことだからな。そこで全て任せる事にした」
いや任せるなよ。何さらっと丸投げしてきてんだよ。
というか何だよ上の神様って。神様に上司とかあるのか?格差社会なのか神って。
一応全ての事情を聞き終え俺は終始突っ込みどころが絶えなかったが、もうこれ以上聞くのは止めた。何だか馬鹿らしくなっきたな。
「まぁ、まだ言いたい事はあるがそこはもういい。話を戻すが、39人も勇者がいるのに今更俺を連れていく必要はないだろ」
39人もいれば魔王何て即リンチされて終わりだろ。
「いや、実は貴様程異世界の勇者達の成長は余りよくない。このままでは魔王に勝てないかもしれないんだ」
リーナの言葉に俺は少し驚いた。嘘だろ、39人もいるのに魔王に勝てないのか。
魔王どんだけ強いんだよ。
しかも俺より成長が遅いとか、あいつら何やってんだ?
「じゃあ俺が行った所で無意味じゃないのか?」
「少しでも戦力があった方がいいだろ」
リーナはそう言うが俺は余り納得出来なかった。
「そんなに強いんならそのクソガ、メトロンが倒せばいいだろ」
「メトロン様はお忙しいんだ。一々下の世界の事など気にしてはいられない。それにさっきも言った通り余り干渉は出来ない。だから異世界召喚を行ったのだ」
何とも使えない神様だな。
俺がクソガキと言おうとしたことにリーナは「おい貴様、今何て言おうとした?」と青筋を立てていたが、気にしないでおこう。
若干怒り気味なリーナに俺は話の流れを変えた。
「そもそも俺を異世界送りにするのにお前が来る必要はあるのか?黙って異世界に送ればいいだろ」
「異世界召喚の魔法陣はそこまで万能ではない。発動するまでに時間がかかるのだ。今の貴様にやったところで直ぐに逃げられるのが目に見えている」
そりゃあ、いきなり魔法陣が現れたら逃げるに決まってるだろ。態々入りに行く奴が何処にいる。ラノベでもあるまいし。
「じゃあどうやって俺を連れていくつもりなんだ?」
「貴様が素直に着いてくるのが一番なんだが?」
リーナはそう言うが俺は勿論拒否った。
「嫌に決まってるだろ。何で今更異世界何かに行かなきゃいけないんだ」
「.........そうか」
俺の言葉にリーナがそう言うと、途端に空気が重くなった。
その瞬間リーナから威圧を放たれたが、俺は依然として涼しい顔をしたままだ。
「ほう、これぐらいは堪えるか」
「そりゃあこれぐらいはな」
楽々と威圧を堪えている俺にリーナは関心すると、戦闘の構えを取った。
うわー、やる気満々じゃん。
「もう一度聞くぞ。素直に私と来い」
「月並みで悪いが嫌だと言ったら?」
リーナの言葉に俺はちょっとしたお約束の言葉を返すと、リーナはふっと笑った。
「力尽くで連れていく」
これまたお約束な言葉が返ってきた。
まぁ、そうなるよな。
「あんまり干渉はしちゃいけないんじゃなかったのか?」
「メトロン様からある程度の行為は許されている」
俺の苦し紛れの言葉にリーナは問題ないとばかりに言った。
こりゃもう駄目か。
戦闘の構えを取って警戒するリーナに俺はめんどくさそうに思った。
帰って寝たい......。
おまけ
【真実】
メトロンside
「あー、そういえば今日はアナムズにモンスターを送り込まなきゃだっけ。面倒だけど準備しよ」
「モンスターの数と種類はこれでよし。それじゃあ送ろ....はっはっはっくしょん!!...あ。あぁ!!」
「どうかされましたか?メトロン様」
「え、あぁうん。何でもない」
「そうですか」
「う、うん。ど、どうしよう.....。ばれたら上に怒られちゃう......。そうだ!そういえばあそこには一人異世界に行きそびれた人がいたっけ。そいつに全部任せよう。うん、それで行こう!ついでに折角だからちょっと遊んでみようかな」
この後、夜兎の前にモンスターがやたら出現させて楽しんでいたのは言うまでもない。
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