クラスの成長記録
少し時間軸がずれ、クラスが異世界召喚されてから二ヶ月たっています。
一方その頃、時は遡り異世界召喚から二ヶ月が経ち、天上院輝率いるクラスの人達は今日も城の中庭で鍛練を行っていた。
「よし!今日はここまで!」
指導役である騎士の人の号令を聞くと、クラスメイト達は糸が切れたかのように腰を地面に降ろした。
「皆、お疲れ様」
その中でただ一人、天上院だけは額に汗を流しながらも平然と立っていた。
「やっぱ天上院は凄いな。何でそんな平気そうなんだ?」
「うーん、やっぱりステータスの差じゃないかな」
クラスの男子の問いに天上院は自分のステータスを見ながら言った。
天上院輝 15歳 男 人族 Lv25
体力 2080/2080
魔力 1980/1980
スキル
光魔法 剣豪 退魔剣
天上院のステータスは周りと比べたら一番高い。ステータスの上がりかたは人それぞれであり、普通の人は10や20が一般的である。
それに引き換えクラスの人達のステータスの平均上昇は40であり、天上院は70だ。
この数値は千年に一度と言われる程で、初代勇者にも匹敵すると言われ国からかなり期待されている。
それに加え天上院には魔のつくものに特攻をもつ【退魔剣】を所持していて、正にTHE勇者と言った感じだ。
初代勇者というのは天上院達クラスが召喚される前に召喚された勇者の事だ。
今から百年前に今程ではないが魔族との戦争で初代勇者が召喚され、世界を救ったという言い伝えがある。
(これでまた一歩初代勇者に近づけたかな....)
その話を聞いて天上院は密かに初代勇者に憧れを抱いていた。
自分もそんな風になりたい。
自分も世界を救いたい。
そんな思いを思いながら、天上院はステータスを見ながら自分の成長を噛み締めていた。
「天上院君、お疲れ様」
すると、天上院の目の前から少し小柄で片方をシュシュで束ねたロングの黒髪の少女が現れた。
「やぁ、美紀。魔法組は終ったのかい?」
「うん、さっきね」
天上院に美紀と呼ばれたこの少女は天道美紀。【転移魔法】の使い手でクラスで一、二を争う美少女だ。
今クラスでは剣士組と魔法組に別れて訓練を行っている。武系のスキルと魔法のスキルの二つに別れるわけだが、両方持っている者は交互に行っている。天上院もその一人だ。
終わり時間から察するにまた美紀は【転移魔法】で天上院の所に来たようで、天上院はその事について言った。
「美紀また【転移魔法】を使ったね。あんまり横着しない方がいいよ」
「だって早く天上院君に会いたかったんだもん」
天上院の言葉に美紀は反省の色がなく、逆にえへへと自分の言葉に照れていた。
その事に天上院はしょうがないなと軽く息を吐くと、
「皆様、お疲れ様です」
今度は遠くからこの城の王女であるルリアーノが地面に座っているクラスの人達に労いの言葉をかけながら天上院の方まで歩いてきた。
「お疲れ様です天上院様」
「はい、王女様」
ルリアーノの言葉に天上院はピシッと背筋を伸ばしながら言った。
だがルリアーノは何処か気に触ったのか、眉をひそめた。
「ですからルリで構いませんのに」
「いえ、王女様にその様なことは出来ませんので」
天上院は頑なにルリアーノをあだ名で呼ぶのを拒むと、ルリアーノは「そうですか.....」と残念そうにし、気を取り直して直ぐに話題を変えた。
「それはそうともう【アナムズ】には慣れましたか?」
「はい、二ヶ月も経てばもうすっかり慣れました」
【アナムズ】というのはこの世界の名前である。大陸が三つに分けられ、それぞれ人族、獣人族、魔族の三種族が治めている。エルフは居ないらしい。
天上院の言葉に「それはよかったです」とルリアーノは言うと、次第にルリアーノは少し恥ずかしそうにもじもじとしだした。
「あの、天上院様。よろしければ、この後、一緒にお茶などいかがですか?」
「あぁ!!ずるい!私も天上院君と一緒にカフェに行きたかったの!!」
ルリアーノの言葉に美紀は素早く反応すると、「美紀様は先日も天上院様と一緒に行ったではありませんか!」「あれはただのお買い物!カフェは行ってない!」と言い争っていく内にルリアーノと美紀は口論になった。
「まあまあ二人供、お茶もカフェも別に一緒に行けばーーーー」
「「二人っきりがいいの(いいんです)!!」」
二人を宥めようと天上院は口を挟むが、ルリアーノと美紀は声を揃えて天上院に怒鳴った。
あまりの気迫に天上院は黙り込んだ。ルリアーノと美紀の口論は続き、
「こうなったら天上院君に決めて貰おう!」
「分かりました!そうしましょう!」
何故か最終決定は天上院に委ねられ、天上院はえ?っといった顔をしている。
「さぁ!天上院君!」
「天上院様!」
「「どっちに行くの(行きますの)!!」」
二人に決断を迫られ、天上院は何て言おうか焦りながら悩んでいると、
「りょ、両方で」
口から苦し紛れの言葉が出た。
「両方なんてあるわけないでしょ!!」
「真面目に答えてください!!」
勿論そんな言葉が通用する筈もなく、天上院は二人から更に責められた。
その周りでは地面に座っているクラスの人達はそれを見ながら「また何時もの光景だ」と思いながら見物している。
異世界召喚されたクラスは今日も平和に生きながら、来るべき時まで訓練に勤しんでいた。
そう、全ては魔王を倒すために。
作品の中にもありますが、ステータスの上がりかたは個人で違います。
比較すると、
夜兎 100(チート)
∨
天上院 70(超強い)
∨
クラスの人 平均50(強い)
∨
一般の人 10~20(普通)
おまけ
【友達がいないだけ】
“主ー、主何でそんなに強いのー?”
「それは前にクラスで異世界召喚があったからだな。俺は行かなかったけど」
“その人達今どうしてるのー?”
「さあな、まだ異世界にいるだろうな」
“どんな人達だったの?”
「そうだなー.......あれ?」
“どうしたのー?”
「思い出せない。どんな奴がいたのか全く分からない」
“何でー?”
「まさか何らかの作用が働いてるのか?ピンポイントにクラスの奴等を忘れる作用が」
“ただ主に友達が居なかっただけじゃないのー?”
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