女の子の秘密って言われるともう何も聞けないよな
前回が短かったので今回は長め。
放課後になり、俺と釜石さんは勉強会をするため俺の家に来た。
「どうぞ」
「お、お邪魔します」
俺は釜石さんを家の中に招くと、何故か釜石さんは何処か緊張しながら入ってきた。
さっきまでの浮き浮き気分は何処にいったのか少し動きがかくついている。
「お帰り」
すると、奥から夏蓮がひょこっと顔をだしてきた。
「........お客さん?」
「あぁ、同じクラスの釜石さんだ」
「初めまして夏蓮ちゃん。釜石沙耶香です」
「......よろしく」
お互い挨拶を済ませると、夏蓮は釜石さんをじっと見つめた。
「どうかしたか?」
「......彼女?」
「か、彼女だなんて!そ、そんな.......まだそういう関係じゃないし(ぼそっ」
夏蓮の言葉に釜石さんは顔を赤くしながら声をあげた。最後の方は聞こえなかったが何故だか激しく動揺している。
一方夏蓮はそれを見て「これは危険....」と小声で意味深な事を言っていて、正直俺はこの状況についていけなかった。釜石さんはただの俺の友人なのにな。
「それはそうと今日は勉強会をするから俺の部屋には来るなよ」
「勉強会?」
「もうすぐテストだからな」
俺がそう言うと夏蓮は「ふーん」と言いながら何かを考えるように視線を一旦反らした。
そして何か思い付いたのか再び視線を戻して言った。
「私も一緒に勉強したい」
「は?勉強って、お前テスト近かったっけ?」
「割りと近い」
そう言う夏蓮に俺は少し悩んだ。
俺としては別に構わないんだが、釜石さんがどう言うかだな。
俺はまだ少し顔を赤くしている釜石さんをチラッと見ながら考えていると、
「私は別にいいよ。人が多い方が楽しいし」
俺の考えを察してくれたのか釜石さんは応えてくれた。
釜石さんがいいなら別にいいか。
「それじゃあ一緒にやるか」
「うん」
そう言って俺達は俺の部屋に向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「.....なぁ、夏蓮」
「何?」
「何でこっちに来るんだ?」
俺達は部屋で四角いテーブルを使って勉強会をやろうとしていたが、何故か夏蓮が横が空いているにもかかわらず俺の隣に座って来た。
俺と真っ正面に座っている釜石さんはそれを見て何て言ったらいいか分からず苦笑いしていた。
「....何となく」
「横空いてるぞ」
「あっちは狭い」
いやこっちの方がどう考えても狭いだろ。
俺は仕方なく少し横に移動しようとすると、夏蓮がまた横に移動してきて肩がぴったり付く位の距離まで近づいて来た。
いや、近づかれても困るんだが。
俺がそう思っていると今度は少し体重を俺に預けながら釜石さんを見て「ふっ」と微笑んだ。
まるで「自分ならこれぐらい出来るんだぞ」とでも言っているかのような仕草に流石の釜石さんも来るものがあったのか急に席を立った。
「わ、私もここよりこっちの方がいいかな!」
そう言って釜石さんは夏蓮とは反対の俺の隣に座った。
いやだから何故こっちに来る。
俺の隣に座ってきた釜石さんは俺の肩にぴとっと近づく距離までいくと、更に腕に抱きついてきた。
釜石さんは「どうだ」という顔で夏蓮を見ると、夏蓮はそれにムッと来たのか同じ様に腕に抱きついてきた。
何だろう、さっきから空気が重くなっている気がする........。
火花が散りそうな程睨み合っている二人を余所に俺はこの天井を見つめながらそう思った。
「あ、あのさぁお前ら、そろそろ勉強しない?」
「ちょっと黙ってて神谷君!」
「まだ勝負はついてない」
いや、何の勝負だよ。
いきり立つ二人を見て俺は何も言えずにいると、もう耐えられなくなり不意に立ち上がった。
「な、何か飲み物とってくるな」
そう言って俺は抱き着く手を振りほどきながら逃げるようにして部屋を出た。
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神谷君が部屋から出ていき、私と夏蓮ちゃんは暫し無言でいた。
今思い返すと、私何であんなことしちゃったんだろう......。
先程の自分の行為を思い出して私は少し羞恥心にかられていた。
夏蓮ちゃんが神谷君の隣に座って肩を寄せながらこっちを挑発してくるからついやっちゃったけど、神谷君嫌じゃなかったかなぁ.......。
私はそんなことを思っていると、急に夏蓮ちゃんが口を開いた。
「ねぇ、お兄ちゃんの事好きなの?」
「え!?す、好きって.....!?」
突然の事に私は動揺した。
私の動揺の仕方に夏蓮ちゃんはクスクスと笑った。
「分かりやすい」
「うっ、あぁ~.....」
神谷君が好きなのがばれ私は顔を赤くしながら頭を抱えた。いや、先程の態度からしてばれていただろうがいざ面向かって言われると恥ずかしい物がある。
「私もお兄ちゃんが好き」
「へ?あ、やっぱりそうなの?」
夏蓮ちゃんの突然の告白に私は驚いたが、さっきの行動で予想はついていたのでそこまで驚きはしなかった。
でもよく平然と言えるなー。私なら絶対恥ずかしくなっちゃうのに。
好きと言っても平然としている夏蓮ちゃんに私は関心していると、急に夏蓮ちゃんは私に向かって頭を下げた。
「だからさっきはあんなことをした。ごめんなさい」
「え、い、いいよ!私もついむきになってやったことだし。こっちこそごめんね!」
頭を下げながら謝る夏蓮ちゃんに私は慌てて言った。すると夏蓮ちゃんは顔を上げお互いの顔を見会うと、次第にクスッと笑いが溢れ、二人して笑い合った。何かさっきまでの自分が馬鹿らしくなっちゃったな。
「ねぇ、何処でお兄ちゃんを好きになったの?」
一頻り笑い終えると、夏蓮ちゃんは私に質問した。急に恋ばなみたいになったね。
「いいけど、夏蓮ちゃんの理由も教えてね」
「勿論」
そう言って私達は暫く神谷君との思い出を話し合った。
私は貧血で倒れたことや、テロリストから助けてくれたこと、
夏蓮ちゃんは昔虐めから救ってくれたことや、最近また虐めから助けてくれたこととか兎に角色々話した。
「へぇー、神谷君そんなことまでやってたんだねー」
私は夏蓮ちゃんの話を聞いて驚嘆した。
前から凄いと思ってたけど本当に凄いな神谷君は。
「因みにその後お礼を言いに一緒のベットに入った」
「い、一緒の!?」
夏蓮ちゃんの言葉に私は顔を赤くしながら驚いた。い、一緒のベットに入ったって......つまり、そういうことだよね!?
「だ、駄目だよ!二人は兄妹なんだし!そ、そんなこと......!!」
私は一人動揺していると、夏蓮ちゃんは意地の悪い笑みを浮かべながら言った。
「何想像してるの?ただ一緒に寝ただけだけど」
「へ?寝たって....それだけ?」
「何だと思ってたの?」
一瞬私は間抜けな声を出したが、夏蓮ちゃんの言葉を聞いて私はまた別の意味で恥ずかしくなり顔を赤くした。
一緒のベットに入ったってそういうことだったの......。
「まぁ、でも私達は義理の兄妹だし問題ないけど」
すると急な爆弾発言に驚き私は赤くなっていた顔が一瞬で退いた。
「え?本当の兄妹じゃないの?」
私は夏蓮ちゃんの話を聞くと、実は神谷君は昔事故で両親を亡くして親戚である夏蓮ちゃんの家に引き取られたらしい。
「そうだったんだぁ....」
「まあでも、お兄ちゃんそんなに気にしてないと思うからそこまで気にすることはないと思うけど」
神谷君にそんな過去があったなんて知らなかったなぁ。今思えば私学校にいるときの神谷君しか知らないな。
......もっと知りたいな、神谷君のこと。
「ねぇ夏蓮ちゃん。もっと神谷君のこと教えて」
「お兄ちゃんのこと?」
「うん、私もっと神谷君の事知りたいの」
真剣な眼差しで私は夏蓮ちゃんを見た。
夏蓮ちゃんは私の目をじっと見ると、次第にふっと笑い言った。
「いいよ。何でも聞いて」
それから私と夏蓮ちゃんは神谷君が来るまで沢山お話した。
ーーーーーーーーーーーーーー
俺は今ドアの前で立ち尽くしている。
あの修羅場にも似た空気の前から逃げて来た手前今更入りづらい。
手にはジュースやお菓子が乗っているお盆があり、かなりゆっくり準備してきた。
(覚悟を決めるか.....!!)
何時までもここで立ち止まっている訳にもいかないので、俺は意を決してドアを開けた。
「それでねーーーーーー」
「へぇ、ーーーーー」
すると目の前には先程の重い空間が嘘の様な和気あいあいとした空間があった。
夏蓮と釜石さんが二人で楽しそうに話をしている。何か仲良くなってる。
ここに来るまでに何があったのだろうか。
俺は疑問に思い、二人に聞いてみると、
「女の子の秘密だよ」
「男子には分からない」
と言われてしまった。
二人はそう言うと、「ね、夏蓮ちゃん」「うん、さやちゃん」と顔を合わせた。
何処まで仲良くなってるんだこの二人?
まあ、仲良くなったならいいか。
俺はそう思い深く考えるのを止めた。
この後、ちゃんと勉強会を開始し、有意義な時間を過ごした。
おまけ
【仲良し】
「なあ、釜石さんーー」
「夏蓮ちゃん。さっきのはねぇーーー」
「なあ、夏蓮ーー」
「ねぇ、さやちゃん。ここはーーー」
「.....何か寂しいなぁ...」
“主には僕がいるよー”
「ありがとうな。ロウガ」
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