友達が少ない奴は遊びにいくだけでも大喜びする
区切りがいいため、今回は短いです。
夏蓮との楽しいお出掛けから翌日、俺は朝のホームルームで暇そうにしながら担任の武堂の話を聞いていた。
「皆もう分かっていると思うがもうすぐテストがある。遊んでばかりいないで、ちゃんとテストに向けてしっかり勉強しておくようにな」
テストか。テストと聞いて何人かの生徒は嫌そうな顔をしているが、俺からしたら寧ろ嬉しいことだ。知力を使いここ一年の予習を済ませてある俺からしたらテスト何て思う存分静かに寝られる時間だからな。
「それじゃあホームルームはこれで終わる。クラス委員、号令頼む」
「起立、礼」とクラス委員の号令の下ホームルームが終わり、皆一時間目の授業の準備をするためそれぞれ散らばった。
「テストかぁ~」
俺の席の前で釜石さんがテストと聞いて憂鬱そうな顔をしていた。
「釜石さんって勉強苦手だったっけ?」
「そうでもないんだけど、今回自信なくてね」
釜石さんは成績は中の上という所で決して悪くはない。因みに俺は勿論トップだ。
「神谷君はやっぱり余裕そうだね」
「そうか?」
「うん、だって小テストとか何時も満点だし」
そりゃあ一年間の予習をしてあるからな。小テストなんて楽勝に決まっている。
「それなりに勉強はしてるからな」
「そうなんだー........ねぇ、神谷君」
俺が建前として勉強をしたという嘘を言うと、急に釜石さんは少し言いにくそうな感じを出しながら言った。
「もし神谷君さえ良ければ、私に勉強教えてくれない、かな?」
「いいぞ」
「そうだよね。駄目だよね.....ん?いいの!?」
釜石さんのお願いに俺はさらっと了承すると、釜石さんは驚く様に俺に顔を近づけた。
近いな。
「あ、あぁ、いいぞ」
「よかったー。断られるかと思って不安だったんだぁ」
そう言って釜石さんは安心した様子をしていた。
別に断る理由がない。
それに学校での唯一の友達である釜石さんの頼みだ。断る筈がない。
「それじゃあ何処でやろうか。今日家お母さんが仕事早く終わるって言ってたから家でやるのは無理なんだよね」
「別にいても構わないぞ」
「いや、いるとまたからかってきそうだから、ちょっとね....」
そう言って釜石さんはあの時を思い出したのか少し恥ずかしがっていた。
そういえば、そんなこともあったな。確かに親にいらぬ誤解をされるのは嫌だろう。
「かといって学校の図書室だと人の目もあるし、ここら辺に図書館なんてないしなー」
何処で勉強会をやるか悩んでいる釜石さんに、俺は思い付いたかのように提案した。
「じゃあ家に来るか?」
「え?神谷君家に?」
「あぁ、家今日母さん仕事が遅くなるとか言ってたから多分大丈夫だぞ」
いるとしたら夏蓮だけだが、妹なら別に問題ないだろう。
「えっと、じゃあ神谷君家にしようか」
「あぁ」
俺がそう言うと釜石さんは小声で「神谷君家に行ける......」と言いながら少し嬉しそうにしていた。友達の少ない釜石さんからしたら友達の家に行くなんてイベントそうそうないんだろうな。楽しそうで何よりだ。
「じゃあ放課後また一緒に行こうな」
「うん!勉強頑張るね!」
そう言って釜石さんは次の授業の準備をするため前を向いた。
その様子は鼻唄交じりの満面の笑みで、如何にも嬉しい事がありましたという顔をしている。
途中「一回着替えて行けばよかったかなぁ....」という声が聞こえ、俺はそれに苦笑した。
そこまで友達の家に行くのが楽しみなのか.....。ちゃんともてなしてあげよう。
釜石さんの言葉を聞いて俺はしみじみそう思った。
おまけ
【周りからの評価】
夜兎と釜石がテスト勉強の会話をしている時、クラスの周りからは
「あの二人またイチャついてるぞ」
「毎度毎度よくやるよなぁ」
「この前も二人で一緒に帰ってたよな」
「前に女子から神谷を家に誘ったとも聞いたぞ」
「絶対付き合ってるだろ。あの二人」
「いや、でもそうでもないらしいぞ」
「どういうことだ?」
「何でもこの前神谷が違う子と歩いてるのを見た奴がいるらしい」
「まじかよ、神谷の奴二股か?」
「いや、まだ付き合ってないから二股ではないだろ」
「ということは、二人が神谷を取り合っているということか」
「そういうことだな」
「......上手くいくといいな。釜石さん」
「そうだな.....」
暖かい目で見られていた。
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