やっぱり友達なのか?
三月四日 最後の部分を少し修正しました。
どれくらい気絶していただろうか。
俺は気絶から目が覚め最初に視界に飛び込んできたのは夏蓮の顔だった。
「....おはよう」
「.....おはよう」
俺が起きた事に気付いた夏蓮は俺にそう言ってきた。俺は少し混乱しながらも夏蓮に挨拶を返した。え、何、これどういう体勢?
俺は今自分の状態について確認しようとすると、頭の裏に少し柔らかい感触がする。
何だこれ?俺は体を横にし、柔らかい感触がする方に手を伸ばすと、そこには夏蓮の太股があった。
俺の頭が夏蓮の膝の上にある。
これってまさか膝枕か?俺はやっと今の状態に気付くと、夏蓮の太股を触りながら少し感動していた。まさか妹に膝枕をされる時が来るとは。俺は夏蓮の太股をすりすりと触りながら思っていると
「何時まで人の足触ってるの?ていうか起きたなら退いてよ。足痺れた」
夏蓮に冷ややかな目で見られながら言われた。
俺はもう少し堪能したいと思ったがこれ以上夏蓮を怒らせるのもあれなので、少し残念に思いながら夏蓮の膝から退いた。
「そういえば、俺が気絶してからどれくらい経った?」
「数十分位しか経ってない」
数十分か。前気絶した時は数時間だったが、やはり【精神耐性】のお陰か時間が短くなっている。これはいいスキルを手に入れたな。
俺は気絶時間が短くなった事に嬉しく思うと、
「じゃあ教えて」
夏蓮が唐突に言い出した。
「教えてって、何を?」
「あの変な力の事」
俺は夏蓮の言葉を聞いてやっと分かった。スキルの事か。
「あれな、あれは....手品だぞ」
「嘘言わないで、手品でドラゴンが倒せる訳ないでしょ」
ですよね。俺もそう思います。
俺は夏蓮に問い詰められどうしようかと考え込んだ。正直もう隠し通せるところじゃないよな。あそこまで見られると。
「......まあ、ここは素直に話すか」
少し考え俺はこれ以上何を言っても無駄だと判断し素直に話すことを決めた。
「夏蓮、これから話すことは全部本当だ。よく聞いていてくれ」
「分かった」
俺の言葉に夏蓮は頷き、俺は自分の力について話した。
クラスが異世界召喚された事、その中で俺だけ残った事、今まで俺がしてきた事、全てを夏蓮に話した。途中俺が例として見せたロウガや魔法に夏蓮は驚いていたが全部ちゃんと聞き入れてくれた。
全てを話し終え、考えているのか夏蓮は黙ったまま目を瞑り、
「何か、ずるい」
徐にそう言い出した。
「ずるい?」
「一人だけそんな力持ってるのが、ずるい」
いやずるいとか言われてもな。
「私も欲しい」
「欲しいって、スキルをか?」
「そう、出来るでしょ?」
いやそんな簡単に言われても困るんだが。
スキルは長年の経験と努力よって身に付けられる物だ。俺みたいに【超成長】のスキルがない限り短期間での取得は先ず無理だ。
「......今度方法探しとく」
「よろしく」
俺は曖昧に返事をしとくと、今度は俺が夏蓮に質問をした。
「そう言えばお前こそ何やってたんだよ?こんな人気のないところで」
俺がそう言うと、夏蓮は少し気まずいのか俺から視線を反らした。
何か聞かれちゃ不味い所でもあったのか?
俺は疑問に思い近くで倒れている三人の女子を指差した。
「あれお前の友達か?」
「全然違う」
俺がそう言うと夏蓮は即座に否定した。
この反応から見てこりゃ何かあるな。
俺は夏蓮の反応にそう思うと、
「夏蓮、人にここまで話させておいて自分は話さない、何て言わないよな?」
意地悪な笑みになりながら言った。
流石にそこを突かれると夏蓮も何も言えないのか、
「.......分かった」
素直に白状した。
そこから俺は夏蓮が虐めに合うまでの経緯を全て聞いた。ここで髪の毛を切られそうになった事、陰湿な嫌がらせをされ続けた事、その全てをだ。
俺は一通り話を聞き少しの間口を閉ざすと、
「少しあの三人とお話してくる」
人の妹に手を出すとはいい度胸だ。
俺が今までしてきた事を後悔させてやる。
俺は倒れている三人の方へ行こうとすると、
「待って」
夏蓮に手を掴まれた。
「これは私の問題。今度は自分で解決する。だから、何もしないで」
そう言う夏蓮に俺は暫く考え込むようにして夏蓮をじっと見つめると、
「分かった。今は何もしない」
夏蓮が自分でそう言うんだ。今は手を出す時じゃない。まあ、夏蓮の身に何かあれば今度こそ容赦しないけどな。
俺がそう思っていると、倒れていた三人の体がピクッと動き出した。
「う、うぅん」
「ここは.....?」
「私達、何してたんだっけ.....?」
三人は何故こんな所で倒れているのか疑問に思いながら体を起き上がらせた。
俺は一応念のため本当に記憶が消えているのかを確認するため三人に声を掛けた。
「気分はどうだ?自分が何で倒れているのか覚えているか?」
「え、倒れてたってどういう.....」
すると話し掛けた三人の内の一人が俺を見ながら言うと、俺を見たと同時に言葉が途切れ、俺の顔をじっと見つめた。見ると他の二人も同様に俺を見つめてきた。急にどうしたんだ?
「あ、あの!」
急に固まった三人に俺は不思議に思っていると突然一人が立ち上がり声をあげた。
「お、お名前な何ていいますか!」
「........はい?」
突然立ち上がったと思ったら予想外な質問に俺は思わず少しの間を空けながら変な声が出た。
「ず、ずるい!私も!」
「あの!ご趣味は何ですか!」
すると他の二人も一人目の時と同じ様に急に立ち上がり俺に質問をしてきた。
その顔は何処か赤くまるで憧れの人を見るような目をしていた。
三人からの多大な質問責めに俺は戸惑っていると、
「人の兄にちょっかいださないで」
夏蓮が俺の裾をぐいっと引っ張り自分の方に引き寄せながら言った。
「え!この人神谷さんのお兄さんなの!?」
「もう!それならそうと早く言ってよ!」
「どうして紹介してくれなかったの!」
三人は俺が夏蓮の兄だと分かると今度は夏蓮に質問責めをしだした。最初は夏蓮は無視をしていたが、段々と鬱陶しくなったのか少しため息をついて三人をこっちと手招きする。
「ちょっとこっち来て」
それに釣られるように三人は夏蓮の下に行き四人でのひそひそ話が始まった。
「人の兄........やめ...」
「...いい......お願い!......ちがっ....であ.....」
「そう.....そう....」
「おねが.....何でも...........聞くから」
「だった........あし.....全校.......土下座.....って。それな....すこ.......おしえ.....」
「わかっ.......まかせ....」
「それぐ.......らくしょ......」
「かなら......みせる....」
ここからだと会話が途切れ途切れで聞こえた来て、何だが不穏な単語が聞こえてくる。
何だよ土下座って。夏蓮の奴何させる気だ?
俺は暫くその様子をじっと眺めていると、話がついたのか三人は夏蓮に別れを告げた。
「じゃあね、神谷さん!」
「今度お兄さんについて教えてね!」
「約束だからね!」
「分かった分かった」
はしゃぐ三人に夏蓮は少し疲れた様子で見送った。今何か変な会話が聞こえたが気のせいだろうか?俺ははしゃぎながら帰る三人の姿を見送ると、何となく夏蓮に言った。
「やっぱり友達なのか?」
「違う.....多分....」
また夏蓮は即座に否定をしようとしたが、さっきの三人の反応を見て自信をなくしたのか、言葉が弱々しくなっている。
俺はそんな夏蓮の反応を見てふっと微笑んだ。
「よかったな。和解出来て」
「和解なのかよく分からないけど」
素直じゃないな。俺はそう思うと夏蓮の顔を見ながら言った。
「俺らも帰るか。夏蓮」
「.......うん」
俺は夏蓮の横を歩きながら家に帰った。
夏蓮の手が俺の裾を掴んだままでいたが、俺は気にせず歩き続けた。途中夏蓮の顔をチラッと見ると少し恥ずかしそうにしていたが、手だけはしっかり離さなかった。
これでまた一区切りとして暫くまた日常パートに入ります。モンスター出現の原因は後々ちゃんと分かりますので。
おまけ
【ヒロイン枠】
「神谷君.....」
「どうしたんだ?釜石さん。そんな暗い顔をして」
「最近私の出番がないんだけど、私ヒロインだよね?」
「何かどっかで似たようなの聞いたことあるな。まあ、確かに釜石さんはヒロインだが、夏蓮もヒロインみたいなもんだしな」
「次はちゃんと出番あるかな?」
「次はまた別のキャラが出るからそこまで出番はないんじゃないか?」
「そうなの!?そんな~。それじゃあまた私の出番が少なくなるの~?」
「まあその時には夏蓮の出番殆んどないだろうからお会い子じゃね?」
「ちょっと待て」←夏蓮
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