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奇跡が重なるとこうなるんだなぁ

遅くなって申し訳ありません。

 ...さて、どうしたもんか。

 ロウガに頼んで、おっさんから財布を盗った窃盗犯を追いかけようとしたが、これは誤算だった。

 若干後悔しながら、俺はロウガを見る。



 遅い、限りなく遅い。

 先頭で歩いてくれているが、普通に歩いたら抜かしてしまいそうだ。



「...なぁ、ロウガ」 

“なぁにぃ?”

「本当に、今日はどうしたんだ?」

“どうもしない~”


 

 心配する俺に、ロウガはこれまた覇気のない声で応える。

 どうやら、まだ適当に返すくらいの気力はあるようだ。



「気分が悪いなら無理しなくていいんだぞ」 

“どう見たって平気でしょー”



 いや、どう見たって元気なさそうなんだが。

 後ろ姿が失業した会社員みたいに、気合いを感じない。あからさま表情が暗いな。

 この姿をどう元気だと捉えればいいのか。



 自分で頼んでおいてなんだが、正直自分達でダッシュで探した方が早い気がしてきた。

 俺と同じことを考えたのか、おっさんが隣でヒソヒソ声で話しかけてくる。



「おい、本当に大丈夫か?このままじゃ犯人見つける前に金盗られて終わるぞ」

「分かってる」



 なにがあったか分からないが、今は取り敢えず目の前の目的を達成しよう。

 ロウガの方はそれからだ。

 


「ロウガ、もう少し早く向かえないか?このままだと逃げられそうだ」

“はやくぅ?”



 急にそんなことを言われ、ロウガは歩きながらこちらに振り返った。



“じゃあ、もうちょっとはやくするねぇ”



 俺に言われ、ロウガはもう少し早く行こうと足に力を入れる。

 これで、逃げられる前には間に合うだろうか。



「一応言っとくが、ちゃんと周りに怪しまれないくらいの速さで―――」

“それぇ”



 俺が注意を言いかけたその時―――――ロウガは猛スピードで通りを駆け抜けていった。



 力の抜けるような掛け声が聞こえた途端、気がつけばロウガの姿は消え、ビュウンッ!!と風の音が鳴り響く。

 


 ......あれぇ。いや、急いでとは言ったけど....。



「それは急ぎすぎだろ...」



 後に残された俺は、思わず口に溢した。

 多分、ロウガが走ったのを目にした人はいないだろう。

 全員、「なに!?今の風!?」と驚くばかりで、誰もロウガには気づいていない。 



「お、おい。今、なにが起きたんだ...」



 おっさんもその気づかなかった内の一人のようで、呆然としながら俺に聞いてくる。

 これは...本格的にやばいな。



 今のロウガの行動から、俺はそう感じた。

 ロウガは、あれでも俺のなかでは知能の高い優秀な犬、もとい狼だ。

 そのロウガがあんな奇怪な真似をする筈がない。



 多分、調子が悪いのに関係しているのだろうが、なにが原因なのか。

 後で、リーナに聞いてみよう。なにか知ってるかもしれない。



「とにかく、今はロウガを追うぞ」



 今は目の前のことに集中しよう。

 一応、これの記憶だけ消しておくか。

 移動が見えていなくても、消えるとこは見られてるかもしれないし。  



 ロウガの原因について考えつつも、俺は小走りでロウガを追う。

 少し遅れて、おっさんも「あ、おい、待てよ」と後ろを付いてきて、俺達はやや騒然とする場を駆けていった。






――――――――――――――――――







 大分走ったが、ロウガの姿はまだ見えない。

 どこまで行ってしまったのか、俺は辺りを見回しながら小走りをしていく。



「いないな」

「どこまで行っちまったんだか」



 俺とおっさんはやや急ぎ気味にロウガを探す。



「ちくしょう、これなら自力で探した方が早いんじゃないのか...」



 埒が明かなくなったのか、おっさんは愚痴を溢している。

 ここまで来ると、窃盗犯の方は通り過ぎたんじゃないだろうか。

 

 

「多分ロウガのことだ、通りすぎてても途中で引き返すだろ」



 なんでああなったかは不明だが。



「とにかく、今はロウガを探すぞ。あいつの居場所が犯人の居場所だ」

「わぁってる」



 俺の言葉に、おっさんは焦りを見せながら応える。 

 どっかに行くまで、ロウガは気分は優れていなかったが自我は確かにあった。 

 暴走とかではない。でなければ、今頃ここら一帯血の海だ。



 だから、あいつを見つければ全て解決するんだが、どこに行ったのやら。

 まったく、どうしてこうなったんだか...。

 するとここで、ロウガを探すなかで俺はある一つの考えが頭を(よぎ)った。



 まさか、ここに来て狼の本能が蘇ったとか...。



 見た目や中身はあんなんだが、何度も言うがロウガは狼。

 暴走とかではないが、獲物(ターゲット)を狩る本能が抑えられなくなったということはないだろうか。



 田舎の実家に行った時以来、モンスターと戦わせてなかったし。

 血に飢えているということも考えられる。

 だとしたら、窃盗犯はもう既に...。



「なわけないか」



 そこまで考えたが、俺はないないと思い頭を振り考えるのを止めた。

 そんなことを言ったら、逆になんで今になって本能が出てくるんだ。

 もっと前から出てきてもおかしくないだろ。



 下手な妄想は捨て、俺はロウガを探そうとチラッと路地を確認する。

 するとそこには、探していたロウガの姿があった。



「あ、ロウ........!?」



 しかし、呼び掛けようとした俺の声は目の前の光景により自然と停止した。

 ロウガはいた。確かにいた。



 襟を噛みながら仰向けに倒れた男を引きずっている姿だが。



「......」 



 無言のまま、俺は固まりその場を見つめる。

 ズルズルと音を建てながら、ロウガは男を路地の奥へと引きずり込んでいく。

 まるで、誰も見えないところに連れていこうとしているかのようだ。



 あまりの衝撃に、思考が追い付かない。

 俺の目には、ロウガが暗がりに男を連れていくように見えるんだが。

 よく見ると、ロウガの目は血走り、小さくだが「ぐるぅ」と唸っている。

 完全に野生剥き出しの表情だ。



 ここで不意に、俺はさっきまで考えていたことが頭のなかに湧き出た。



 ロウガは狼で、野生としての本能が抑えられない。

 これが事実だとしたら、これから行われるのは....獲物の補食!



「ろ、ロウガ...」



 流石にそれは止めねばと思い、俺はチラ見した体勢からゆっくりと声をかける。

 俺の声を聞いて、ロウガの目がギロッと俺に向く。あれ、なんか怖い。



“あ、主ー”



 だが、そんな俺の心情とは裏腹に、ロウガは俺を見た途端表情は元に戻り、男から口を離し俺に歩み寄る。



「な、なにしてるんだ」

“主が探してた人を見つけたから、人目のないところに持ってこうとしたのー”


 

 しゃがみながら、俺はロウガに問う。

 探してた人と言われ、俺は改めてその男を見ると、その人物は俺達が探していた窃盗犯だった。

 ロウガのが衝撃的すぎて気づかなかったな。



「なんで気絶してるんだ」

“見つけたら手前で止まろうと思ったんだけど、勢いが強すぎて間違って体当たりしちゃったの”



 それで気絶してるのか。可哀想な奴だな。取り敢えず財布だけ探しておくか。

 そう思い、俺は倒れている窃盗犯に若干の哀れみを感じるも、男に歩み寄り財布がないかポケットを探る。



 中々財布が見当たらず、俺は男をひっくり返すと、尻ポケットの方に見覚えのある長財布があった。



 これがおっさんのだな。

 俺は財布を取り、おっさんのだと確認し終えると、ドッと疲れたように肩を落とした。



「お前が人を引きずる姿を見たときは驚いたな」

“周りの人に見せちゃいけないと思って”



 行動としては正しいな。



「そういえば、引きずる際になんであんなに血走った顔をしてたんだ?」

“力入れると服とか首を噛み千切っちゃいそうだったから、なるべく優しくやろうと頑張ってたの”



 そういう理由だったのか。

 ロウガのレベルじゃ、簡単に人の肉や服は噛み千切るだろうな。



「誰かに見られなかったか」

“体当たりした直後にこっちに連れ込んだから、多分平気”


 

 これはまた臨機応変に対応してくれたようで。一応、撮影とかはされてないだろうけど、後で記憶は消しておこう。



「あんまり軽率なことはするなよ」

“ごめんなさーい”



 頭を撫でながら、俺はやんわりとロウガに注意する。

 本能とかじゃなくてよかった...。

 内心ちょっとだけホッとし、俺はロウガにいきなり飛び出した原因を聞いてみる。



「というか、どうして急に飛び出したんだ」

 


 そう聞くと、ロウガは“う~ん”と落ち着つきが無さそうに唸る。

 


“なんか、体の底から力が溢れてきて、スッゴい落ち着かないのぅ。それになんか体がダルくてぇ”



 力が溢れる。魔力が増大でもしてるのか。

 だが、ステータスを見ても、魔力の量は変わっていない。

 見た目だって変化はないのに、いよいよ分からないな。



「おい、夜兎。そんなところでなにしてんだ?」



 いなくなった俺を探してたのか、おっさんが後ろから話しかけてきた。



「ロウガと犯人を見つけた」



 そう言いながら、俺は倒れている窃盗犯の方を指差す。

 それを聞いておっさんは「本当か!?」と言いながら、急いで犯人に駆け寄り「財布はどこだ!!」と必死で探し始める。



 財布は俺が持ってるが、後で返しておこう。



「一先ずは御苦労様。このまま帰すと少し不安だから、帰りは一緒に帰ろうな」

“はぁい”



 お礼を言ってから、俺はまたロウガを一撫でする。

 一通り終わったら、電話でリーナに相談してみるか。なにかあってからじゃ遅いし。

 ロウガを撫でながら、俺はそんなことを考えていた。






―――――――――――――――







 丁度その時、夜兎達が来たのと別の方向から、夏蓮は同じ通りを歩いていた。

 これといって良いものはなかったな。

 一人でウィンドショッピングを楽しんでいた夏蓮は、そう思いながら通りを歩く。

 


 実はこの場所、夜兎の住んでる地域からそう遠くない場所だったりする。



(今日はもう帰ろ)



 特に収穫もなかったので、夏蓮はまっすぐ自宅に帰ろうとする。

 だが途中で、なんとなく横の路地に目線を向けた夏蓮はピタッと歩くのを止めた。



 あれって...。

 後ろ姿だが、あれは確かに自分の兄、夜兎である。

 そして、見知らぬ中年の男が一人と後ろで倒れてる怪しげな男、その後ろでなにやらぐったりと伏せの状態のロウガの姿もあった。



「あんたの財布これだろ?」



 そんな夏蓮に気づかず、夜兎はおっさんに取り返した財布を渡す。

 だがそれは、夏蓮には夜兎の背中で見えず、なにをしているのかよく分からなかった。

 それに、後ろの歩く人の声や距離があるため、声も聞こえづらい。

 いったい、なにしてるんだろ?



 気になった夏蓮は、その場に立ち止まったまま観察していると、



「おぉ!!サンキュー夜兎!!本当に助かったぜ!!」



 おっさんが感動のあまり夜兎に抱きつくシーンを目撃してしまった。



(え........)



 突然の展開に、夏蓮は絶句したまま呆然とする。



「おい、止めろ。気持ち悪い。誰かに見られたらどうするんだ」



 抱きつかれた夜兎も当然の如くおっさんを引き剥がしながら、誰も見てないか確認しようと後ろを振り向く。

 そこで咄嗟に、夏蓮は反射的にサッと壁際に隠れ、夜兎は誰もいないと分かり、向き直る。



「オーバー過ぎだ」

「それぐらいこっちはドキドキしてたんだよ」



 呆れる夜兎に、おっさんは悪びれる素振りを見せずに微笑を浮かべる。

 この部分を聞けば、これはただのふざけあいと取れるが、夏蓮にとってはそうはいかない。



 壁際に隠れながら、夏蓮は気持ちを落ち着かせ、整理しようとする。

 今自分は、兄が中年の男と抱き合うのを見てしまった。

    


 今のやり取りを見ず、更には会話まで聞こえていない夏蓮には、そう解釈されてしまうのだ。

 そして、この解釈をそのままの意味で受けとると、我が兄、夜兎はあの男とそういう仲(・ ・ ・ ・ ・)になってしまう。



(いやいやいやいや)



 だがそれはあまりにも滑稽すぎる。

 自分の兄は同性愛者?そんなわけがないだろ。

 それ関連でからかうことはあっても、今までそんな片鱗を見せたことだってない。

 頭を横に振りながら、夏蓮は馬鹿馬鹿しいとばかりにふぅっと息を吐く。



「てか、気持ち悪いとかないだろ。少し傷つくぞ、それ」

「年取ったおっさんのハグなんて、誰が喜ぶんだよ」



 動揺している夏蓮を余所に、夜兎とおっさんは他愛のない話を続けている。

 よくよく考えてみれば、あれは単に向こうからいきなりやってきたことかもしれない。

 


 あんなことをされれば、お兄ちゃんの顔も嫌がっている表情をしている筈。

 もう一回見てみれば、嫌な顔をしているお兄ちゃんがいる。

 夏蓮はそう確信し、もう一度路地を覗いてみると、



「撤回すれば次はもっと高級な店に行けるかもしれないぞ」

「ハグしちゃうのも仕方ないよな、気にするな」



 夜兎の顔は嫌がるどころか、満面の笑みであった。



(えーーーーーーー)



 予想外すぎることに、夏蓮は驚きながらまた壁際に身を隠した。

 なにあの顔、あんな笑顔一緒に住んでても近年稀に見るか見れないかぐらいの奴だよ。

 まさしくハグして嬉しかったって顔してた...。



 路地の方では「お前って現金な奴だよな」「別にいいだろ」と苦笑いするおっさんと平然としている夜兎。

 これもまた、一種のおふざけだが、夏蓮はその場面を見ておらず、壁際で激しく動揺していた。



(いやいやいやいや待て待て待て待て)



 動揺し、思考が悪い方へ傾いてしまいそうになるも、夏蓮は必死に頭を横に振り、落ち着こうとする。

 まさか、ハグされてあんなに嬉しそうにするなんて...。



 頭のなかで『同性愛』という単語がチラついてくるが、こんなことで夏蓮は諦めない。

 単に、お兄ちゃんはあの男性と仲がいいだけかもしれない。



 仲良しだから、ハグだって普通に許せる。

 そうだ、そうに違いない。というか、そうであって欲しい。

 

   

 じゃあ、なぜあんな路地にいるとか、そもそもさややリーナ以外に友達がいるとは思えないとかは、この際夏蓮には関係ない。

 半分希望ではあるが、夏蓮は心のなかでそう結論づける。



「にしても、結構札多いな」

「なにかあったら困ると思ってな」

 


 一方夜兎達といえば、財布の中身が盗まれていないかチェック中だった。

 もう一度覗けば、仲良く会話してるか、楽しそうにしている光景が広がってる筈。



 しかし、夏蓮がそう考えていたその瞬間、



「わ、わふん!(は、ハクシュン!)」



 これも調子の悪さが原因か。

 さっきまでぐったりしていたロウガがくしゃみを上げ、それを歪みに小さな突風が巻き起こった。



“あっ”

「んぉ!?」



 突然の突風に、ロウガの斜め前にいたおっさんは風に押し出され、バランスを崩し、夜兎の方へと倒れていく。

 そしてそれは一緒に財布の確認をしていた夜兎の顔面に近づき、近くまで顔を寄せていたため、夜兎は反応できないでいる。



(もう一度、確認してみよう)



 意を決し、夏蓮はまた路地を覗いてみると―――――――夜兎とおっさんの顔が重なりあっていた。



(ーーーーーー!?!?)




 最早、心のなかでさえも声がでない。

 刺激が強すぎて夏蓮は放心状態に陥るが、見られるのは不味いと思いギギギッとぎこちない動きでなんとか壁際まで戻った。



「あぶねぇ!なんだよ今の!?危うく取り返しの付かないことになってたぞ!」

「寿命が縮んだな」



 本当はといえば、確かに唇が重なりかけたが、おっさんが反射的に財布で壁を作っていた為、重なるまでには至ってなかったのだ。

 これには流石に夜兎とおっさんは肝を冷やしたようで、心底ホッとしている。



「今のロウガがやったのか?」

“ごめんなさーい。なんか力んじゃって”

 

 

 耳をパタリと折りながら、ロウガは深く反省した様子を見せる。  

 未遂で終わったからか、夜兎は「気をつけろよ」と軽く咎めるだけ。

 確かに、唇が重なりあうまでには、至ってなかったには至ってなかった。

 だが、夏蓮にはそれは見えていない。 

 


 壁際に戻ってからも、夏蓮は「え?え?え?」ともう訳が分からなくなっていた。

 い、今のってあれだよね?男子と女子がやるあれだよね?

 付き合ってからより親密になった時にやるあれだよね?



 決して男同士がふざけてやるようなことじゃないよね?

 そんなの、もう仲が良いという領域を越えている。



 もう、あれは間違いない。 

 あれはもう、異性が愛し合った時にやる奴でしかない。

 この事実に、夏蓮は途方もない絶望感を感じ、思わず天を仰いだ。



 都合のいい解釈をしてきたけど、もうこれは誤魔化しようがない。

 お兄ちゃんとあの男性は、そういう仲(・ ・ ・ ・ ・)だった。



(帰ろう)



 認めた瞬間、なぜだかとてつもない罪悪感が押し寄せてきた。

 自分はなにも見てなかった。抱き合う姿も、嬉しそうにする姿も、唇が重なりあう姿も、なにも見ていない。



 できるなら、この記憶は永遠に消去したい。

 顔色を悪くしながら、夏蓮はそう願いつつも、急ぎ足で自宅へと帰っていった。








―――――――――――――――――







 

 そんな夏蓮の心情など露知らず、夜兎は一人帰宅中であった。 

 窃盗犯の方はおっさんに任せておいた。後は警察の仕事だし。

 さっきのこともあり、ロウガは【使役魔法】による異空間のなかにいる。



 本来なら最初からそうするべきだったが、放置していた期間が長すぎていたため、完全に失念していた。

 お陰で、取り返しのつかないことになるとこだったな。



「治るまで大人しくしてような」

“ごめんなさぁい”

 


 やや疲れたような俺の言葉に、ロウガは反省する。

 未遂とはいえ、思い出しただけでも気分が悪くなりそうだ...。

 背中がヒヤッとするも、俺は調子の悪そうなロウガに頭を悩ませる。



 まさか、くしゃみだけであんな風になるとは、これは迅速な対応が必要だ。

 そう思い、帰る途中ではあるが、俺はリーナに電話をかけることに決めた。



 まだ昼過ぎだし、時間はあるだろう。

 携帯を取りだし、俺はリーナに電話をかけると、少ししてから、リーナは電話に出た。



『もしもし?』

「リーナ。悪いが今時間あるか?」

『どうしたんだ、いきなり?』

「少し相談がある」



 そう言ってから、俺はロウガの身に起きていることの全てを話した。

 話し終えると、リーナはうーんっと暫し考え込み、思い当たることがあるのか提案をしだす。


 

『考えうる点はあるにはあるが、こういうのは直接見た方が早い。どこかで落ち合おう』

「分かった」



 待ち合わせ場所を決めて、俺は「また後で」と言ってから電話を切った。

 やっぱり、リーナなら知ってたか。相談して正解だったな。



「移動するか」



 ここでは人の目があるから転移できないため、俺は転移できる場所まで小走りで走っていった。

おまけ


【できるかも】


「そういえばロウガ、お前いつからそんな感じだったんだ?」

“今日の朝からぁ”

「そうだったのか。くしゃみであれだからな。早めに気づいてよかった」

“でも、今までだったらできなかったことが、できるようになってるかもぉ”

「というと?」

“おっきい遠吠えとか”

「それは俺以外の人の耳が大変なことになるから絶対にするなよ」



―――――――――――――



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