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写真苦手な人ってたまにいるよな

 夏休みも終盤になり、天上院達の突然な一時帰還に翻弄されつつも、後一週間でこの天国のような時間が終わってしまう。

 普通なら、一般の学生は夏の課題や2学期の準備に手間取っているだろうが、俺にはそんなの関係ない。



 課題なんてとっくに片付けたし、特に勉強をする必要があるわけでもない。

 残り一週間となったが、最後までのんびりといきたい、そう思っていた。

 なのに、



「楽しみだねー。夏蓮ちゃん」

「そうだね、さやちゃん」



 俺の目の前では、夏蓮とさやがウキウキしながらよく行くショッピングモールを歩いている。

 どうして、俺の予定はいつも崩れるのだろうか.....。



 口には出さないが、気落ちしたように俺は僅かに息を吐く。

 なぜ俺がこの二人と一緒にここに来ているのかというと、前に理不尽に取り付けられたお願いのせいだ。



 この夏の終わり、今いるショッピングモールでセールがあるらしく、その荷物持ち兼男除けとして、俺も付いていくことになった。

 女子はオシャレが好きというが、二人も例外ではないらしい。



 まぁ、変なことをお願いされるよりはましかもしれないが、ここでしっかりしてるのが家の妹だ。

 実はこの買い物に付いてくるお願い、二人からのお願いではなく、夏蓮個人のお願いとなっている。



 つまり、夏蓮の要求はこれでチャラだが、さやの方がまだ残っている、というわけだ。

 出発する前、夏蓮にそれを伝えられた時は、思わず「ずる....」と言葉を漏らしてしまったな。



「もう、どうとでもなれ....」



 のんびりなんていつでもできる、今は二人との買い物を楽しむとしよう。

 ほぼ見てるだけになりそうだけど。



「今日はごめんね、夜兎君。付き合わせちゃって」

「頑張って働いてね」



 少し申し訳ないという気持ちがあったのか、さやと夏蓮は俺に言葉をかける。

 


「別にいいさ。これも一応、お願いなんだからな」


 

 たとえ理不尽に取り付けられたものだとしても、投げ出すつもりはない。

 これは一種のお出掛けだと割りきっていくとするさ、雑用だとは思わずに。



「服選ぶ時に、可愛い服を着たさやちゃんを見せてあげる」

「ちょ、夏蓮ちゃん!?」



 いきなり自分を差し出され、恥ずかしげに慌てるさや。

 夏蓮も大分さやに対する扱いが雑になってきたな。これも仲の良い証か。

 からかわれるさやを面白そうにしている夏蓮を見て、俺はなんとなく思った。






―――――――――――――――――――――





 お目当ての服屋に着いてから、俺はある重大なことを思い出した。

 しまったな.......。



「夏蓮ちゃん、これなんてどうかな?」

「こっちもいいと思う」



 かれこれ何十分経っただろうか。

 店に着いてから二人はああしてずっと服を選んでいる。

 忘れていた。女子はこういう時の買い物はめちゃくちゃ長いんだった。



 店の外で二人を眺めながら、俺は終わるのをじっと待っている。

 最初は俺も会話に入ろうかと思ったが、女子のファッションに俺がついていける筈もなく。

 こうして、いつの間にか蚊帳の外だ。



 そういえば、夏蓮と前に来たときもこんな感じだったな。

 どうしてこう、すぐに終わらないんだろうか。



(暇だな....)



 店の外の壁にもたれかかりながら、俺は虚空の彼方を見つめる。

 唯一の救いは、この場にリーナが居ないことだな。女子が三人も居たら、きっともっと時間が掛かっていることだろう。



 今日リーナが不在なのは、本人曰く仕事があるからだそうだ。

 内容までは言ってなかったが、多分メトロン達のことだろう。

 


 聞いた話では、今メトロン達は罰を受けてる真っ最中らしい。

 どんなのかは知らないが、きっとひぃひぃ言いながら泣きを見ているだろうな。



(にしても、長いな.....)



 少しして俺はまた二人の方を見るが、二人はまださっきと同じ感じで悩んでいる。

 こういう時の女子の体力って無限に感じるのは、俺だけだろうか。



 そんなことを思いながら俺はふと横の通路を振り向くと、見知った顔の子供が視界に映った。

 銀髪に銀色の瞳、格好は周りに溶け込む為か普通の服だが、顔は確かに昨日見た【友愛神】コロラだ。



 このショッピングモール内にある店のソフトクリーム片手に、通路を歩いていたコロラはすぐに俺の視界から消えた。

 なんだ、ただのメトロンの友達か。

 ............あれ?



 コロラだと分かり、俺は顔を前に戻したが、すぐにこの違和感に気付きバッ!と目を見開かせ慌てて振り返った。

 いやいやいやいや、あいつが居たらおかしいだろ。



(思わず二度見をしてしまった....)



 まさか、自分がそんなベタなことをするとは思わず色んな意味で驚いたが、俺は視界から消えたコロラの後を追った。


 

「コロラ」



 後を追い俺は後ろから声をかけると、コロラはこちらに振り返り俺をじっと見つめる。



「.......どちら様ですか?」



 間を空けてから、コロラはまるで他人のように装いだした。



「は?」

「あなたは誰ですか?人違いをしてませんか?」



 急にしらを切られ俺は変な声を出すが、コロラは依然と他人を装う。

 いや、嘘つけ。さっき俺に呼ばれて振り返っただろ。

 それにステータス見れない時点で、一般人じゃないのは確定してるんだよ。



「目、泳いでるぞ」

「な、なんのことだか分からないなー!僕子供だしー」

  


 目が泳いでると言われ、コロラは焦りを見せながら即座に顔を背ける。

 嘘下手だな、こいつ。



「まさかお前、罰から抜け出してきたのか?」

「ぼ、僕忙しいから、それじゃあ!」

 


 図星を突かれたのか、コロラは血相を変えてこの場から離れようと背を向け走り出す。

 走っていくコロラを無言で見送る俺は、途端にある言葉を呟く。



「......スカラがお前を探しにこっちに来てたぞ」

「え!?嘘!?なんでこんなに早く!!」



 俺の囁きに反応して、コロラは顔を青くしながら周囲を何回も確認する。 

 簡単だなー、こいつ。

 確認してから気づいたのか、コロラ「あっ」と声を漏らしてからチラッとこちらを伺う。   



 もう、完全にバレたな。

 俺とコロラの間に、微妙な空気が広がった。 








――――――――――――――――――――――

 







「それで、なんでこんなところにいるんだ?」



 場所を通路から俺が元いた所に変え、俺はコロラを問い質す。

 バレたからか開き直ったコロラは、苦笑いを浮かべながら理由を述べる。



「いやー、僕も神王様に悪戯がバレて罰として大量の仕事を言い付けられたんだけど......やっていくうちに飽きちゃった」



 悪びれた素振りを見せず、コロラは笑いながら話す。

 つまりは罰の仕事に飽きたから、こっちに遊びに来たと。

 なぜ、わざわざこっちに来るんだよ。

 自分の世界に行けよ。



「罰っていう割りに意外と軽いんだな。仕事が増えるだけとか」

「僕の場合、やったのが異世界人を元の世界に戻したのと、軽い精神の魔法だけだから。後は未遂で終わってるし」



 言われてみれば、確かにそうだな。

 昨日のこととコロラの言ったことを照らし合わせてみると、今言った通りコロラはそれしかやっていない。

 


 犯人は分からなかったが、あの魔族を送ったのはこいつじゃなかったみたいだし、軽くもなるか。



「逆に、メトロンの方が罰が厳しかったけど」

「どんな罰なんだ?」

「24時間天使に監視されながら、逃げないように足に重り付きの枷を着けながら仕事してる」


 

 「あれ見たときは怖かったなー」と呑気に言うコロラ。

 監視に枷が着いてるのか、想像してみると中々凄い感じだな。

 どれだけ仕事を抜け出せばそうなるのだろうか。

 想像して俺は少し苦い顔をすると、ここでふとあることが気になった。



「それにしても、お前よくそれを見て止めなかったな。大事な友達なんだろ?」



 そう聞くと、コロラは「そうなんだよねぇ」となぜだかふふん!と得意気な顔をしている。



「メトロンの使いの天使の人に言われたんだよね。『ここで敢えて見放すのが、真なる友です』だって!」



 「だから、僕はメトロンの為を思って置いてきたの!」とコロラは自信満々に語る。

 扱い分かってるな、その天使の人は。

 偉いでしょ!という風な面持ちなコロラに、俺は「へー」と適当な相槌をうつ。



「じゃあ、なんでこの世界に来たんだ?別に自分の世界でもいいだろ」

「ここ前上から見てた時に一度行ってみたいって思ってたし。それにメトロンの管理って緩いから、簡単に入れるの」



 緩かったのか、ここの管理。

 道理で変な奴等が何人も来ると思ったら....。 

 ある意味知りたくもなかった事実に俺は若干気を落とすと、俺はコロラにある確認をとった。

 


「一応聞くが、お前もう俺を狙ってないよな?」

 


 そう聞くと、美味しそうにソフトクリームを舐めていたコロラは舐めるのを止め、応えた。



「全然。メトロンにもう止めてって言われたし」



 特にどうも思うことなくコロラは言うと、突然顔を俯かせた。



「というより、あの時は.....ごめんなさい」

「え?」

「勘違いとはいえ、あんなことして....ほんの少し、悪いとは思ってる」



 照れてるのか顔を逸らしながら、コロラはぶっきらぼうに応える。

 そんなコロラに、俺は意表を突かれたような顔をする。

 驚いた.........。



「お前にそんな心があったんだな」

「なんかそれ酷くない!?」



 折角謝罪を述べたのに、この返し。

 コロラは心外そうに俺の顔を見るが、俺としては本当に驚きだった。

 だって、メトロンの友達でこんなにもチョロいんだぞ。



 わざわざそっちから謝るなんて、今日は隕石でも降るんじゃないだろうか。

 そう思える程、コロラの謝罪は俺にとって衝撃的だった。



「確かに僕は親友の頼みだったら全力で応えるけど、違ったら違ったで罪悪感くらいは感じるよ」



 再び俯きがちになりながら、コロラは小声で言う。

 もしかして、この世界に来たのも俺に言うためだったりして。

 そう考えると、なんだか憎めなくなってきたな。


 

「あー.....まぁ、別にそこまで気にすることはないと思うぞ。死人はいないわけなんだし」



 俯くコロラに、俺は若干視線を外しながらフォローを入れる。

 そう言って貰えて安心したのか、コロラこちらを見ながら微笑んだ。



「そう言って貰えて、嬉しいよ」



 ホッとした声を出して、コロラはまたソフトクリームを舐める。

 こいつは、他の神よりましな奴かもしれない。

 壁に寄りかかりながら、俺はそう思う。



 互いに無言になり、俺とコロラの間に微妙な空気が生まれていると、通路の方からまた聞き慣れた声が聞こえてきた。



「見つけた!コロラ様!」



 声が聞こえ振り向いてみると、そこにはリーナが慌てた様子で立っていた。  

 人目が多いところだからか格好が地球版だ。



「リーナ。なにしてるんだ」

「見つけましたよコロラ様。仕事を抜け出されては困ります。早くお戻りください」



 余程切羽詰まってるのか、俺の言葉を無視しリーナはコロラに駆け寄る。

 


「やば、見つかった」



 見つかったコロラはなぜか怯えた素振りで、俺の後ろに隠れた。

 え、なんで俺の後ろ?

 俺の後ろに隠れられ、俺とリーナはえ?っと困惑する。



「なにをやってるんだ?貴様は」

「いや、なにと言われても....」



 寧ろ、こっちが聞きたいんだが....。

 突然人を盾にされ、コロラは「まだ帰りたくない...」と俺のズボンをギュッと握りながら駄々をこねている。



 不覚にも、その様子に俺の心が揺らいだ。

 コロラは外見は幼く可愛いげがある。そして、先程のこともあってか、俺はすぐに手が出せなかった。

 どうしたらいいんだろうか、この状況。



 リーナとコロラを交互に見ながら俺はどうしたもんかと思っていると、リーナがある助言をしてきた。



「気を付けろ。コロラ様は人の心につけ入るのが得意だからな」

「返す」



 それを聞いた瞬間、俺は迷いなくコロラを差し出した。

 服の襟を掴み、俺はコロラを持ち上げながらリーナの前に突きだす。

 まさかこうも早く差し出されると思わなかったコロラは、一拍子遅れて「えっ!?」と驚く声をあげる。



「ま、待って!!裏切るの早くない!?普通そこはもうちょっといいだろとか言う場面じゃん!!」

「いや、俺のなかでお前は危険と判断したから」

「さっきまで友情が芽生えそうな感じだったのに!?」



 それとこれとは話は別だ。

 そもそも味方になったつもりはない。

 俺の変わり身の早さにリーナも若干驚いていたが、素直にコロラを受け取った。



「すまない、神谷夜兎。お陰で助かった」

「お前も大変だな」



 同情する俺に、リーナ「これが仕事だからな」と苦笑いを浮かべる。

 急いでるのか、リーナはコロラを持ち上げたまま歩き出す。



「さぁ、コロラ様。戻りますよ」

「せめて、アイス食べてからじゃ、駄目?」

「アイスは帰ってからお食べください」  



 最後の抵抗も儚く終わり、コロラは諦めたのか「はい....」力尽きたように頭がガクッと下がる。

 


「それでは、私はもう行く」

「あぁ」

「貴様も頑張るんだな。色々と」  



 そう言いながら、リーナは店のなかにいる夏蓮とさやに目を向ける。

 どうやら、こっちの事情は把握しているようだ。



「そうだな」



 リーナの言葉に俺は軽く返事をし、リーナはコロラを連れて通路とは反対の非常階段がある方へと歩いていった。

 多分向こうで、天界に戻るんだろうな。

 俺はリーナを見送ると、丁度見えなくなった時に夏蓮に声をかけられた。



「おまたせ」



 声をかけられ俺は夏蓮の方を見ると、そこにさやの姿はなかった。



「さやはどうした?」

「試着室にいる。可愛くコーディネートしたから、見せてあげようと思って」



 本当に見せる気だったんだな。

 半分冗談だと思った手前、俺は恥ずかしがるさやを思い浮かべながら苦笑いする。

 すると、どうかしたのか夏蓮は辺りをキョロキョロとしていた。



「なにしてるんだ?」

「さっき誰かと話してなかった?」



 声が聞こえてたのか、ここに俺一人しか居ないのを確認し夏蓮は首を傾げている。



「別に誰もいないぞ」



 一々説明するのも面倒なので俺は適当に誤魔化すと、夏蓮は「まぁいっか」と納得し背を向ける。



「早く行こ。さやちゃんが待ってるから」

「そうだな」



 夏蓮に急かされ、俺は店内へと入る。

 多分、さやからしたら来て欲しくないと思ってそうだなー.....。

 そんなこと思いながら、俺はさやのいる試着室に向かった。 








―――――――――――――――――――







「どうだった?」

「中々に似合ってたな」



 服屋を後にし、俺達は再びショッピングモールを歩いている。

 先程までさやが着ていた服について俺と夏蓮が盛り上がっているなか、さやは一人後ろで顔を赤くしながら手で顔を押さえていた。



「恥ずかしかった.......」



 まぁ、さやがそうなるのも無理はないか。

 夏蓮に促され試着室で待っていたのは、いつもと違った服装をしていたさやの姿だった。

 普段は落ち着いた格好をしてるからか、少しふりふりした感じや、ミニスカートを履いたさやは、とても新鮮味がある。



 そして、それが一つだけでなく、いくつかレパートリーがあり、それぞれどれもいいものがあった。

 付け加え、そんな格好をしながらさやに「ど、どうかな?」と顔を赤くしながら聞かれるわで、色々と刺激的な試着会だったな。



 暫く、そっとした方がよさそうだな。

 羞恥心に悶えているさやを見ながら、俺はそう思っているとなにを見つけたのか、さやは急に立ち止まった。



「さや?どうしたんだ?」

「あれ....」



 あれと言われ、さやが指差した先には、ゲームセンターの中にあるプリクラの機械だった。



「プリクラか」

「だね」

「折角だから、三人でやってみようよ」  



 プリクラかー。

 俺は隣の夏蓮に「やったことあるか?」と聞くと、夏蓮は「ない」と応える。

 俺もやったことないな。

 興味があるのか、夏蓮は「いいよ」と了承したが、反対に俺は渋った。



「俺は遠慮しておく」

「え、どうして?」

「写真は苦手なんだ。作り笑いが下手だから」


  

 過去何回か写真は撮ってきたが、どれも上手くいった試しがない。

 それを聞いて、さやは「そっかぁ」と残念そうにしていたが、なにか思いついたのか「そうだ!」と声をあげた。



「じゃあ、これが私のお願いっていうことにしていいから。それじゃ、駄目かな?」

「そんなんでいいのか?」

「うん、夜兎君や夏蓮ちゃんと写真撮りたいから」



 少し前までの羞恥心が嘘のような曇りのない明るい笑顔で、さやは微笑む。

 そんな言いかたされると、嫌とは言えないな。



「分かった。一緒に撮るか」



 俺はそれだけ言って頷くと、さやは「うん!」と嬉しそうな表情を浮かべる。



 話が纏まり、俺達は早速プリクラの中に入り、設定の入力が終わると、いよいよ撮影に入った。



「俺が真ん中なのか?端でもいいんだけど」

「だーめ、夜兎君私達より大きいんだから」

「バランス的に、ここ」


  

 俺としては端がよかったが、半ば強引に二人に真ん中に置かれ、両隣で二人が並ぶ。

 すると、機械の方から『笑ってー!』と指示が来たので、夏蓮とさやは笑顔になるが、俺だけは違った。



「夜兎君、それ笑顔なの........」

「ひきつってる」

「言ったろ、苦手だって....」



 俺も一応笑顔のつもりだが、二人からはなぜだか不評を受けた。

 やっぱりだめか。画面を見ても、確かにそこには口許がひきつった俺がいる。

 どうも苦手なんだよな、笑顔を作るのは。



 タイムリミットが迫るなか、もうこのままいっそ真顔でいこうかと考えていると、突然夏蓮が「えい」と俺の頬を伸ばしてきた。



「こっちの方がまだまし」



 夏蓮が頬を伸ばすのを見て、名案とばかりに今度はさやが「えい」と俺の頬を伸ばしてきた。

 


「あ、確かにそうかも」



 両方の頬を伸ばされ、二人は面白そうにくすくすと笑う。

 画面を見てみると、確かにさっきの顔よりはましなのにはなった気が....しなくもない。



「地味に、痛いんだけど」

「ほら、カメラ向いて」



 そんな俺の言葉を遮られ、俺は夏蓮に言われた通り前を向くと、カシャッとシャッター音が鳴った。

 その後も何回か撮り終えると、好きに落書きをし、無事撮影は終了した。



「次はリーナちゃんも入れて撮りたいね」

「そうだね」



 撮り終えた写真を見ながら、さやと夏蓮は楽しそうに喋る。

 顔引っ張られて写真撮るなんて、今までなかったな。

 写真を見ながら、俺は複雑な気持ちを抱える。

 ある意味、撮ったなかで一番笑ってるかもしれない.....。



「夜兎君もまた撮ろうね」

「そうだな......」



 撮った写真をポケットに仕舞いながら、俺はさやに応える。



(まぁ、悪くはないか....)



 ポッケにある写真に触れながら、俺は小さく微笑んだ。

 後日、写真は俺の部屋の引き出しに大事そうに仕舞われた。

おまけ


【芝居】


 帰った後


「結局、また掴まっちゃったなぁ」

「やぁ....ころらぁ....」

「め、メトロン!?どうしたの!なんかやつれてない!?」

「流石に、僕に、このお仕置きは、きつ..すぎ、た、よ.....」

「め、メトロン、しっかりして、メトロン!!」

「今すぐお菓子持ってきてくれたら、治る、気がする....」

「分かった、今すぐ取ってくるね!!」 


「またやってるよ。メトロン様」

「何回同じ芝居やれば気が済むのかしら」



―――――――――――――――――


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