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とうとう出てきちゃった

思うように文が書けず、ここまで空いてしまった....。



書籍版、第一巻が発売中です。 

よければどうぞ。

 リーナ達のところに転移をすると、そこではリーナと黄花がなにやら話し込んでいた。



「リーナ、黄花」

「夜兎様」

「来たか」



 話しかけると、黄花とリーナは話を中断しこちらに近寄ってくる。


   

「怪我はなかったか?」 

「はい、大丈夫です」

「当然だ。なんせ修行したからな」  



 俺の言葉に、黄花は頷き、リーナは自信満々に言う。

 確かに、相当修行したみたいだな。

 話では聞いていたが、この状況がなによりも証拠となっている。   



「みたいだな」



 リーナの言葉に、俺は奥の方を見ながら呟く。

 俺の目の前には、数十人の男女があちこちで気絶して倒れていた。

 一瞬で形を着けたのか、場はそこまで荒れていない。



「黄花のお陰ですぐに終わらせられたな」

「いえいえ、リーナ様も凄かったですよ」


 

 お互いを誉めながら、リーナと黄花は顔を見合せ仲良さそうにする。

 いつの間にこんなにも仲良くなったのだろうか。

 戦いの中で芽生えた友情でもあったんだろうか。

 そう思っていると、リーナが少し意外そうな様子で言った。



「まさか、貴様に妖怪の使い魔がいるとは思わなかったぞ」

「色々あってな」

「変な事はしてないだろうな」



 疑いの目をしながら、リーナは言ってくる。

 そんなわけないだろうに。

 疑うリーナに、黄花はふふっと笑い、俺は「してない」と言って話を終わらせ、早速さや達について聞いた。



「それよりも、さや達は無事か?」

「あぁ、それなら」

「あちらで眠ってます」



 俺に聞かれ、リーナと黄花はそう言いながら奥の方へ視線を向ける。

 視線の先には、壁にもたれかかりながらスヤスヤと眠っている夏蓮とさやがいた。

 どうやら、どこにも怪我はなさそうだな。

 遠目から見て、俺はそう思う。



「....う、うぅん...」



 すると、眠っていたさやの身体がピクッと動いた。

 小さな声をあげ、さやはゆっくりと目を開くと、



「ここは.....?」



 そこには目の前に人が倒れている光景が広がっていた。



「え、し、死体!?」



 なにを勘違いしているのか、倒れた勇者達を見てさやは仰天している。



「え、なにこれ!?と、取り敢えず、救急車かな!?」



 パニックになり、ポケットの携帯を慌てて探すさや。

 気づいたら知らない場所で、目の前で人が倒れていたんだ。無理もない。

 凄い慌てぶりだな。

 その様子を俺はなんとなく眺めていると、リーナが優しく声をかけた。



「落ち着いてくれ、さや。あれは別に死んでないぞ」

「あ、あれ?リーナちゃん?それに夜兎君.........え、これどういう状況?」



 俺達の存在に気づき、さやは落ち着きを取り戻し首を傾げる。

 そして、今のさやの声が原因か、夏蓮も目を開いた。

  


「...................」



 こちらも驚いてるのか、目が覚めてから無言のまま固まっている。

 こちらにも気づいたが、依然として黙ったままだ。



「なるほど........」



 長い沈黙の後、俺や倒れた勇者達を交互に見て、夏蓮は一人納得する。

 もしかして、今の間で事情を把握したというのか。



「え、お前この状況が理解できたのか?」

「いや、全然」



 まさかと思いながら聞く俺に、夏蓮は首を横に振る。

 違うんかい。じゃあ、なんで言ったんだか。

 夏蓮の答えに俺は拍子抜けしていると、さやがこの事態について聞いてきた。


 

「えっと、これどういうことなの?」

「あー、実はな――――――――」



 ここで、リーナは今まで起きたことを全て話した。

 天上院達が俺を倒そうとしたことや、二人を人質にしようとしたことなど、話せるところは話した。

 それをさやと夏蓮は、自分達が捕まってたのに少し驚きながらもしっかりと聞きいれる。



「――――――というわけなんだ」

「そうだったんだ......」



 話を聞いて、さやは少し呆けた様子で現状を理解する。

 そこまで驚かなかったな。冷静なさやに、俺は意外に思う。

 夏蓮はともかく、さやはもっと驚くと思っていたんだが。



「なんか、冷静だな」



 驚かないさやに、俺は何気なしに言うと、さやも自覚してるようで不思議そうに言う。



「なんでだろう......。聞いてて、あ、またこれかって思っちゃった」



 どうやら、ここにきてさやも慣れてきたようだ。

 これには夏蓮も同意のようで「確かに」と言いながらうんうんと頷いている。

 まぁ、確かに神に人質にされたり海で変なのに絡まれたりしてたら、そうなるか。

 これで男にも慣れてくれればいいのになぁ。

 そう思っていると、突然リーナがさやに頭を下げ始めた。



「すまない、さや。私の力が及ばずこのようなことになってしまって」



 頭を下げるリーナに、さやは慌ててフォローする。



「気にしないで。私もあの時自分でどっかに行っちゃったし。リーナちゃんは悪くないよ」



 「だから頭上げてよ、ね?」と優しく述べるさやに、リーナは感激したのか「さやか殿....」と口調が前のに戻る。



 その様子にさやは「女神とかいうのは止めてね?」と釘をさし、リーナは図星を突かれたのか少し残念そうにしていた。

 言う気だったんだな。



「因みに、お前には黄花が付いていたんだ」



 見えないであろう黄花を指差しながら、俺は夏蓮に言う。

 それを聞いた夏蓮は「あー」となぜか納得していた。



「だからか」

「?なにがだ?」

「歩いてる途中、周りで誰もいないところから物が浮いたり音が鳴ったりして、周りの人が騒いでた」



 物が浮いたり、音が鳴ったりって、そんなことしてたのか。

 俺は黄花の方を見ると、黄花は恥ずかしそうに「すいません、つい......」と顔を俯かせていた。

 本当に今度、黄花に街を案内しておこうか。 

 肝心な時にしっかりして欲しいし。


 

 俺は一人そう思うと、ふと倒れてる勇者達が目に入った。

 そういえば、ついでにこいつらも回収しようと思ってたんだ。

 さや達のことで忘れていた俺は、勇者達を一ヶ所に集めようと地面に引きずるように引っ張る。



「夜兎君、なにしてるの?」

「こいつらを天上院達のところに送る。ここに居て貰っても困るしな」



 こいつらの誤解も解かなきゃいけないしな。

 それには、天上院に説明してもらうのが一番だろ。

 さやにそう言いながら、俺は勇者達をずるずると引きずっていく。



 少し面倒だな。

 途中、近くまで行くと俺は放り出すようにドシャッと雑な感じで勇者達を投げる。



「貴様、雑すぎないか.....」

「こいつらには色々やられたしな、こんな感じでいいだろ」



 それに何回も転移するのは魔力の無駄な消費だ。

 一ヶ所に集めて一気にやった方が、魔力の消費が最小限に抑えられる。

 全員、案外近くにいたお陰かすぐに集めることができ、俺はできるだけ多くの身体に触れる。


 

 流石に、一度に全員とはいかないが、数回の転移で全員送ることができた。

 これでよし。

 一応、後先を考えてあっちで倒した奴等と同じ位置に送っといた。

 勇者達全員を転移させ、この場に俺やリーナ達だけが残る。



「それじゃあ、とっととここを出るか。俺が転移で送っていこう」

「夜兎君はどうするの?」

「俺はこのまま天上院達の方に戻る。まだやることがあるからな」



 もう天上院達はさやを襲うことがないだろうから問題ないが、まだメトロンの件が残っている。

 一緒にいたらなにかしてくるかもしれないし、ここは大人しく帰って貰おう。

 


 流石にわざわざ神のルール破ってまで手は出さないとは思うしな。

 そう言うと、リーナが俺に賛同してきた。



「私も一緒に行こう。奴等には私からメトロン様の潔白を証明する」



 まぁ、そういうことならいいか。

 リーナならあいつらに遅れをとることはないだろうし。

 一緒に行こうとするリーナに俺は「分かった」と言って了承すると、さやと夏蓮を家に帰そうと二人の肩に手を置く。



「気をつけてね、神谷君」



 少し心配そうな顔をしながらも、さやは俺に言ってくる。

 慣れてはきても、心配なのはなくならいようで。

 そんなさやに、夏蓮はちょっとしたフォローを入れてきた。



「心配することないよ、さやちゃん。これならまたいつもみたく帰ってくる」

「それもそうだね」

「帰ってきたらなにか一つお願いを聞いて貰おう。こんな目に遭わせた罰として」



 お願いという言葉に、さやは「え!お願い!?」と反応する。

 え、なにいきなり。 

 突然の夏蓮の提案に、俺はえ?と思っていると、それでも抵抗があるのか、さやは「いや、でも....」と遠慮がちになる。

 


 そんなさやに後もう一押しと思ったのか、「それじゃあ」と夏蓮は耳打ちでさやに何かを伝える。

 それを聞いたさやは「ふぇ!?」と変な声をあげながら、一気に顔が赤くなった。



 そんなさやを見て、夏蓮は楽しそうに「どう?」と聞くと、さやは「で、でも....」ともじもじとしている。

 いやいや、待て待て.....。



「なんて言ったんだ?」

「内緒」



 内容を夏蓮に聞くと、夏蓮は教えようとしない。

 どんなことを言ったか分からんが、良いことでないのは確かだな。



 夏蓮の言ったことに俺は気になっていると、さやが俺をチラチラと見ながら期待の眼差しを向ける。   

 俺に承諾を求めてるのだろうか。



 正直、そんな目をされても困るんだが。

 期待を胸に寄せたさやの目に、俺はえぇ...という気持ちになる。



 なんだろう、そもそもこんな目に会わせたのは俺というより、拐った奴等のせいな気もするんだが....。

 理不尽な感じが否めない俺は少し悩んだ末、しょうがないとばかりに息を吐いた。 



「...好きにしてくれ」



 俺がそう言うと、さやは嬉しそうに顔を明るくした。

 嬉しそうにするさやに、夏蓮は「やったね」と言って一緒に微笑む。

 あ、お前もなにかするつもりなんだな。

 


 最初は心配をなくすためだと思ってたのに、どうしてこうなったんだろう.....。

 解せない気持ちを抱きながらも、俺は「また後でな」と言ってさやと夏蓮を送った。



「大変だな、貴様も」

「いつものことだ」



 同情するリーナに、俺はため息をつく。

 まぁ、ひとえに俺のせいじゃないと言えば違うかもしれないし、ここは甘んじて受け入れよう。

 俺はそう考えていると、今度は黄花が気まずそうな顔をしながら話しかけてきた。



「すいません、夜兎様。子供達が心配なのでそろそろ戻らせて頂きます」



 そういえば、朝から黄花に護衛を頼んでたから長い間あの神社から離れたままだったな。

 それは心配にもなるか。

 


「あぁ、ありがとうな、黄花。また頼む」

「はい」



 短く返事をし、黄花は「それでは」と微笑みながら小狐達の下に帰っていった。

 さて、それじゃあ俺らも行くかな。

 


「行くか」

「そうだな」



 俺の言葉にリーナは頷き、俺達は天上院の下に転移した。







―――――――――――――――――







 転移して戻ると、天上院が俺が送った勇者達の前で困惑した表情をしていた。



「堂本君.....」



 なんて声をかけたらいいのか分からないのか、無言で仲間を見つめる天上院。

 それを見つけた俺とリーナは、無言のまま天上院の方に近づいた。



「天上院」

「神谷、堂本君達が......」

「気絶してるだけだ。別に死んではいない」



 俺がそう言うと、気持ちの整理をつけてるのか天上院は「そうか.....」とだけ言って俺から目を逸らす。

 まだ身体は思うように動かないのか、剣を杖代わりにしている天上院は次第に決意したように、顔こちらを向けた。



「神谷、君は何者なんだ」



 真剣な眼差しで天上院は言う。

 いや、何者って言われても........。



「スキルを貰っただけのただの一般人だ」 

「嘘を言わないでくれ、僕らが歯が立たない相手が一般人なわけがない」

「まぁ、レベルが違うからな」

「いくつなんだ」



 真面目な表情のまま、天上院は聞いてくる。

 いやいや、他人にレベルなんて聞くもんじゃないだろ。

 そう思った俺だが、言わなきゃ食い下がらないであろう天上院の顔を見て、しょうがないとばかりに少し間を空けてから言った。



「......431」

「よんひゃく!?」



 予想していたのより高かったのか、天上院は目を見開かせ驚愕する。

 言いたいことは分かるが、これは事実だ。

 最初は驚いていた天上院だが、次第に現実を受け止め乾いた笑みを浮かべる。



「ははっ.......勝てないわけだ.......」



 ひきつった笑いをする天上院。

 まぁ、そう思いたくもなるよな。

 俺のレベルが分かり、放心状態になった天上院は徐々に落ち着きを取り戻し静かに口を開いた。



「....神谷、君は本当にメトロンが言っていたことをしたのか。考えたんだけど、僕にはなんだか違うように思えるんだ」

「あいつが言ってたのは本当だ」



 少なからず疑念を抱いていたのか、天上院の僅かに希望を持った言い方に、俺はにべもなく応える。

 俺の答えを聞いて、天上院は「そうかい....」と残念そうに顔を伏せたが、その直後に俺は言葉を付け足した。



「まぁ、多少のズレはあるだろうがな」

「え?」



 そう聞いて天上院は顔を上げ俺を見るが、俺は構わず続ける。



「先ず人の記憶を操作したのは、スキルや魔法が世間にバレるのを防ぐためだ。そうしなきゃ、世界中パニックだろ?」

「え、スキルって.......え、もしかして、それだけ?」

「それだけ」



 俺の記憶を消す本当の理由に、天上院は目をパチクリさせる。

 それを聞いてまさかと思ったのか、天上院は立て続けに確認を取り始めた。



「じゃ、じゃあ、大事なAIを奪ったのは...」

「それはメトロンが勝手にそう思っただけだ」

「いまの私のマスターは夜兎様です!」



「街にモンスターを連れ歩いたのは.....」

「こいつ」

「わん!(どうもー!)」



「......天使に手を出したのは...」

「だから私はなにもされてない!!」  

「ということだ」



 聞いていたリーナの恥ずかしそうな叫びを最後に、質問は終わった。 

 証拠として、実際にメルやロウガにも会わせて本当だと実感した天上院は、体を硬直させ、



「なんじゃそりゃ............」



 ガックリと肩を落とした。

 全部勘違いだと知り、天上院は落ち込んだように頭が項垂れる。

 


「理解したか?」

「うん.....全部僕の誤解だった」

「ならいい」



 勘違いを認め、俺はその言葉を聞くと天上院の肩に手を置いた。

 すると突然、天上院の体が淡い緑色の光に包まれる。

 光が消えると、天上院は驚くように自分の体を見回した。



「これは.....」

「誤解は解けたんだ。もういいだろ」



 一瞬にして戦いの傷が癒え、天上院は自分の体を見たまま呆然としているなか、俺は倒れている他の勇者達に目を向ける。

 


 そいつらの前に立つと、俺は両手を勇者達の前に突きだし治療を行う。

 勇者達全員の天上院のと同じ体がまた淡い緑色の光に包まれ、怪我が治っていく。

 全員まとめてやった方が治療も早く終わる。堂本達をここに移動させて正解だったな。



 治療が終わり淡い光が消えると、先ず最初に美紀が目を覚ました。



「.....う、あれ?」

「美紀!大丈夫?」



 美紀が目を覚まし、天上院は慌てて駆け寄る。



「天上院君?」

「痛むところはないかい」



 ゆっくりと目を開ける美紀に、天上院は優しく言葉をかける。

 美紀の他にも、連鎖していくように仲間の勇者達が次々と意識が戻っていく。



「......ここは、どこだ」



 そのなかで、さや達を誘拐した堂本達も目を覚まし、それに気づいた天上院は堂本の前に座り込んだ。



「堂本君、皆」

「天上院、なんでお前がここに.....そうだ、神谷は?人質は!?」



 徐々に気絶する前の記憶が甦り慌てる堂本に、天上院は無言のまま俺を指差す。

 俺が無事なのを見ると、堂本は悔しそうに顔を俯かせた。



「くそっ!また失敗した!」

「堂本君、もうそんなことする必要はないよ」

「どこがだ!!早くしないと魔族が攻めてくるかもしれないだろ!!」

「その魔族はすでに倒されたんだ」



 声を荒げる堂本に、天上院は「あれを見て」と言って冷静に気絶したマクシスを指差した。

 それを見た堂本は、その魔族特有の特徴を見て眉を潜める。

 


「あれは、魔族か?」



 堂本の言葉に天上院は頷く。



「そうだよ、しかもあれは四天王の一人だ」

「四天王だと!じゃあ、俺達の国は!?」

「誰だか知らないけど、ある人に全滅させられたらしい。攻め入る途中でやられたんだ」  



 全滅されたと聞いて、堂本は信じられないといった表情を浮かべる。



「嘘だろ、どうして.....」

「分からない。でも、ルリ達が無事なのは間違いないよ」



 それを聞いて、堂本は体を震わせながらも最後の確認を取る。



「本当に、倒されたんだな。本当に、国は無事なんだな......」

「無事だよ。本当に」



 若干の堂本の震え声に、天上院はしっかりと頷く。

 その瞬間、堂本は顔を俯かせ糸が切れたようにぐったりとした体勢をとる。



「そうか、ならいい.......」



 震え声は徐々に大きくなり、次第に堂本の頬に一筋の涙が流れ落ちる。

 それを見た、天上院が口を閉ざしたまま肩に手を置く。

 大切な人が無事で安心したか。

 堂本を見ながら、俺は思う。



「天上院君、それ本当?」

「あぁ、魔族は何者かによって打ち倒された。ルリ達はもう大丈夫だ」



 美紀の問いに天上院はそう応えると、勇者達は一斉にホッとした。

 それは他の奴等も同じようで、天上院の話を聞いていた同じ誘拐を考えていた者は「よかった....」「無事でいてくれた.....」とそれぞれ安堵している。



 こいつらもそれなりに思うところがあったんだろ。

 大切な人の死に際に、やりたくもない誘拐を選んだ。

 もう変な気を起こすことはないだろう。



「.......すまない」



 落ち着いたのか、堂本が天上院に謝罪を述べた。



「勝手なことをした挙げ句、誘拐なんて真似をして、悪かった」 

「皆が無事なだけでもよかったよ」



 頭を下げながら言う堂本に、天上院は爽やかな笑みを浮かべる。

 


「話は終わったか?」



 タイミングを見計らって俺は天上院に聞くと、天上院は「うん、もう大丈夫だよ」と応える。

 すると、勇者達は俺を見てあることに気づいた。



「というか、だとしても神谷は倒さなきゃ帰れないよな?」



 ふと思ったか、仲間の男子がそう呟いた。

 確かに、偽メトロンは俺を倒さない限り異世界には返さないと言っていた。

 危機がなくなっても、まだ解決には至っていない。

 仲間の男子の言葉を受け、他の勇者達もその通りだと思っていると、天上院が「いや」と首を横に振った。



「神谷は倒さない。というより、倒せない」

「え、どういうこと?」



 話の意図が理解できていないのか、元クラスメイト達は首を傾げる。

 説明するより、実際に見た方が早いか。



「見せた方が早い」



 そう思った俺は、リーナから貰った【隠し玉】を取りだし、地面に置いた。

 


「【鑑定】のスキルを持ってる奴、俺のステータスを覗いてみろ。今なら確認できる」



 突然俺にそう言われ、戸惑っていた勇者達だが、【鑑定】を持っていた奴から「え...」「はぁ!?」と驚きの声があがった。

 【鑑定】を持っていない者達はなにがなんだが分からない顔をしていたが、すぐにその理由が明らかになる。



「........レベル、431」



 呟かれたその一言に、勇者達全体に動揺が走る。

 あまりのレベルの高さに信じようとしない奴も出てくるかもしれないと思ったが、今までの戦いが効いたのか出てこなかった。

 中には今まで自分がこんな化け物を相手していたことに恐怖していた奴もいたが、これで分かっただろう。



「さて、これで後残ってるのは――――――」


―――――――気にくわないなー



 その瞬間、俺の言葉を遮るように頭のなかに声が響いた。

 のんびりしているが、その奥では微かな怒りを感じる、子供みたいな声。

 とうとうきたか、黒幕。

 聞こえてきたこの声に、俺は待っていたという気持ちになる。

読んでて違和感を感じるかもしれませんが、前話を修正してあるのでお気になさらず。



おまけ


【お願い】


「お願いかぁ.....」

「どうしたんだ?神谷夜兎」

「いや、さやと夏蓮にどんなお願いされるのかと思って....」

「別に大したことは言われないだろ」 

「だといいけどなぁ.....」

「まぁ、貴様なら今すぐ世界一つ破壊しろと言われてもできそうだしな。大丈夫だろ」

「お前俺をなんだと思ってるんだ?」


 

―――――――――――――――――――



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