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同時に戦闘をやるとどっちか省略されることってあるよな

 全てにケリがつく、青空の今日。

 今からやらねばならないことを思うと憂鬱になる気持ちとは裏腹に、天気は快晴だ。

 またあいつらと戦うんだよなぁ.....。



 昨夜は覚悟は決めていたが、いざ本番になるとどうもやる気が削がれる。

 この現象はいったいなんなんだろうか。

 変わったと思ったけど、こういうとこは変わらないな、俺は。

 今俺は、昨日天上院達と戦った場所にいる。



 周囲が崖に囲まれ、上から見れば陥没してるように見えるだろう。

 そこで俺は、なにをするわけでもなくただ突っ立っている。



「そう都合よくはいかないか...」



 だだっ広い空間の真ん中で俺はため息をつく。

 ここなら天上院達も来てくれるんじゃないかと思い待ってみたわけなんだが、そう上手くはいかない。

 やっぱり探すしかないんだろうか。

 そう思った俺だが、あいつらの居場所なんて分からないし、それにあっちには転移が使える奴がいる。



 そいつがいれば多少遠い場所でも問題ない。すぐに駆けつけられるから。

 だから、こっちからしてみれば余計見つけづらいし、やりづらいことこの上ない。



 昨日九重から聞いた話が本当なら、天上院はすぐ俺の所に来るはずだ。

 あいつらには、時間がないだろうし。

 仲間割れした奴等に関しても、すでに手は打ってある。

 そっちは大丈夫だろう。



 後は天上院達を待つだけなのだが、来なかったらどうするか。



「戻るか....」



 いつまで経っても現れない天上院達に、俺は諦めかけたその時──────空が赤く染まった。



 やっと来たか。

 赤い空を見て俺は確信する。

 突如変わった赤い空を俺は眺めていると、遠くから声が聞こえた。



「神谷!」



 名前を呼ばれ、俺はその方向を向くと案の定天上院達がいた。



「遅かったな」

「ここにいるってことは、待っていたのか」

「そろそろ命を狙われるのも嫌なんでな。こうして待ち構えてた」



 実際、いつ来るか分からないのって神経使うんだぞ、これが。

 軽い口調で俺は言うが、天上院は集中してるのかピクリとも反応しない。

 覚悟を決めたのか、緊張してるのか分からないが、友好的でないのは確かだな。



 重い雰囲気を纏った天上院と軽い会話を交わし、俺は今いるメンバーについて指摘をした。



「今日はやけに人が少ないな。なにかあったのか?」

「君には、分からないことだよ」 



 理由はなんとなく分かるが俺は知らない振りをして聞いてみると、天上院は一切教えようとしない。

 まぁ、普通そうだろうな。

 天上院の言葉に俺はそう思っていると、天上院が早速剣を抜き出した。



「悪いけどもう時間がないんだ。次こそは倒させて貰う」



 そう言うと、天上院は数歩前に出て俺に近づき、逆に他の奴等は数歩後ろに下がる。

 まるで、他の奴等は戦う気がないかのようだ。



「どういうつもりだ?全員でやらないのか?」

「今回は僕一人で相手をする」

  


 余程自信があるのか、胸を張りながら天上院は言う。

 


「本気か?」

「あぁ、悪いけど皆では戦わない。多分、僕達の戦いについていけないだろうから」



 その瞬間、天上院が持っていた剣から強いオーラが現れた。

 あれが、九重が言っていた強そうな武器か。

 決して派手ではないが、これぞ勇者が持つに相応しい剣って感じがする。



 聞いた話では、ステータスが高くなるということだが、果たしてどれ程凄いのか。 



「神谷、君は強い。僕が会った人の中で誰よりも強い」

「そりゃあどうも」

「だからこそ残念だよ。君があの時一緒に行っていれば、いい仲間になれたのに」


 

 本当に残念に思ってるのか、天上院は悲しそうな顔をする。

 いや、だとしても多分俺先に帰ると思うから。

 なにが楽しくて、魔王退治に行かなければならないんだか。



 そういうのは、テンプレ主人公であるお前達でやってくれ。

 自分が異世界に行った時を想像し、面倒そうに思っていると、



「だから神谷―――――」



 突然目の前から天上院が消えた。

 


「ここで君を倒す」

「っ!?」



 気づいた時には、天上院は俺の目の前で剣を振りかぶろうとしていた。

 少し余所見していたのと、予想以上に天上院の動きが速かったのがあり、俺は一瞬反応に遅れ紙一重で転移で避けるが服が少し斬りつけられる。



 斬りつけたと思ったら、天上院は俺を通りすぎ少し行ったところで止まった。

 手応えを感じたのか、斬りつけた部分を見て天上院は得意気な顔になった。

 危なかった。戦いの最中に考え事をするもんじゃないな。



 斬りつけられた服を見て俺は冷や汗を掻き、よく見ると天上院の足が光っている。

 なんだあれ、昨日にはなかったな。

 そう思い、俺は今一度天上院のステータスを確認した。



 天上院輝 16歳 男 人族 Lv183



 体力 13140/13140

 魔力 13040/13040


 スキル


 光魔法の極意 極剣 予測 気配察知 気配遮断 魔神殺し 


 

 やっぱり、前見た時となにも変わっていない。いったいどういうことだろうか。  

 よく見てみると、足が光っているというより、光その物になっている感じがする。

 光になった足。それを見て俺は察した。



 どうやら、強くなったのはステータスだけじゃないってことか。



「この剣の力のスキル【輝装】により、今の僕は光だ。この高速に近い動きにはいくら君でも追い付けない」



 光輝く足を見せつけながら、天上院は堂々と語る。

 


「面倒な物を......」

「これなら勝てる」



 嫌な顔をする俺とは反対に、天上院は行ける!といった表情をする。

 最悪、あの武器破壊するか。メトロンからの貰い物らしいし、なくてもいいだろ。

 様々な事態を想定しながら、俺は次の天上院の動きに備える。







―――――――――――――――――――――








 時を同じくして、異世界【アナムズ】。

 ここでもまた一つ、ある戦いが行われようとしていた。

 


「マクシス様、まもなく人族の国が見えて参ります」

「そうか」



 部下の言葉にマクシスは短く返事をすると、急に不敵な笑みを浮かべ始めた。


 

「これだけの兵力があれば、人族の国なんて容易く落ちるわ」



 満足そうに兵士達を見ながら、マクシスは呟く。

 彼の周りには、部下である魔族が約数百人。

 そして、自分も乗っている使役したモンスターや空を飛ぶモンスターが同じく数百匹。

 魔族は元来人族より魔法もステータスも平均的に勝っているため、勝つには充分すぎるほどの戦力だ。


 

 この平原を越えればルリアーノの国が見えてくる。

 そんな時だ、



「?なんだ?」



 順調に進軍していたマクシス達の動きが突然止まった。

 前方で何が起きたのか、前が止まったことにより後ろが連鎖するように急停止する。

 先頭の部下の兵士達がなにやら騒いでいる声が聞こえ、マクシスは事態が掴めず困惑していた。



「なんだ?何が起きている」

「マクシス様、前方に何者かが現れました」



 部下の言葉を受け、マクシスは誰なんだと思い前方に目を凝らすと、二人の人物が見えた。



「悪いが、ここから先は通す気はねぇ。すぐに引き返せ」

「頑張ってー、レン」

「な、なんだ、あいつら......」

 


 いきなり出てきてわけの分からないこと言う二人組に、マクシスは呆然とする。

 一人はローブを被っているせいで、顔は見えないが声からして男。もう一人は声からして女。

 いずれにせよ、おかしなことになったのは変わりはない。



「マナ、お前はどこかに隠れてろよ。お前のスキルは戦闘向きじゃないんだから――――」

「大丈夫!もう隠れてるから!」



 そう言われ、レンはチラッと後ろを見ると、マナは岩陰からひょこっと顔だして手を振っていた。

 


「お前なぁ......」

「私はもう役目を果たしたんだから。次はレンの番だよ!」  



 色々と言いたそうな顔をしていたレンだったが、マナに言われレンは「分かってる」と言って再びマクシスの方を向いた。



「向こうの国には世話になった人達がいるんでな。ここで一つ恩を返そう」



 数百といえる勢力を前に臆さず言い放つレン。

 それに最初は驚いたマクシスだが、段々と冷静になり一人で戦おうとするレンに「はっ!」と鼻で笑った。



「たった一人でなにができんだ!どうやってこっちのことを知ったかは知らねぇが、死んで貰うだけだ」



 マクシスがそう言ったと同時に、部下達は一斉にレンに向かって武器や魔法を構える。

 そんな状況でも、レンは冷静に魔族達を観察していた。



「良くか悪くか、うちの相棒がとんだものを予測しちまったお陰で、この事態に気づけた」


 

 誰に言うわけでもなく、レンは一人語る。



「いなくなった天上院達の代わりに、俺が勇者の代役をしてやる」



 そう言うと、レンは楽しそうに微笑を浮かべた。



「来いよ、雑魚共」



 数百対一。

 異世界【アナムズ】で、生きた亡霊となった勇者、三鷹蓮(みたかれん)が勇者代行として魔族に立ち向かおうとしていた。

おまけ


【交渉】


“主ー?”

「どうした?ロウガ」

“今回僕出番あるかなー”

「どうだろうな。なんか話的にはもう後半来てるけど」

“このまま出ないで終わっちゃうかなー”

「誰かに変わって貰えればいいのにな」

“そっかー、それがいいね”

「え?なにが?」

“ちょっとあのイケメンのとこ行って頼んでみるねー”

「頼むならその剥き出しの牙は仕舞えよ」



――――――――――――――――――


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